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「恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 来年(2023年)に創刊30周年を迎える角川ホラー文庫。
 その全作品から選定された「角川ホラー文庫ベストセレクション」の第二弾。

『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』編)朝宮運河(角川ホラー文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』に続く、ベスト・オブ・角川ホラー文庫。ショッキングな幕切れで知られる竹本健治の「恐怖」、ノスタルジックな毒を味わえる宇佐美まことの「夏休みのケイカク」、現代人の罪と罰を描いた恒川光太郎の沖縄ホラー「ニョラ穴」、アイデンティティの不確かさを問い続けた小林泰三の代表作「人獣細工」など、SFや犯罪小説、ダークファンタジーテイストも網羅した"日本のホラー小説の神髄"。解説・朝宮運河

 自主的にやっている"国内ホラー・アンソロジー(傑作選)読み込み強化月間"の3冊目。
 第一弾『再生』は読了したものの記事にまだUpしていないのだが、既読作品もあるとはいえなかなか愉しめた。その好評を受けてか昨秋に出たのが第二弾の本書。『再生』が心霊系、怪談寄りの作品が中心だったのに対し、こちらはSFやノワール、ダークファンタジー的なラインナップだという。確かに逸品揃いで、個人的には第一弾よりもさらに愉しめた。収録8編の内3編が女性作家の作品であり、そのどれも憎悪や執着や妄執など「過去に囚われる」女性に纏わる怪異や恐怖が描かれているのが興味深く、そしてどれも怖い。
 全8編。以下簡素なあらすじと感想など。

恐怖(竹本健治)
 恐怖という感情が欠落した男と彼に強い関心を覚えた友人。十年を経て再会した時、かつての"実験"の続きが始まる
―主人公が恐怖を感じない理由は結末で判明するが、それを知ってなお"恐怖感"を覚えない男の姿が、怖い。
(小松左京)
 井戸掘りを始めた自宅の庭から際限なく出て来る骨、骨、骨……
―自分たちのいる場所、そして歴史が夥しい数の骨……死の上に成り立っていると気付かされると、何やら背筋に冷たいものが。
夏休みのケイカク(宇佐美まこと)
 中年の図書館職員と、離婚した母親と暮らす少女。それぞれの孤独を抱えた二人の女性が「本への落書き」を介して交流する……と思いきや。
正月女(坂東眞砂子)
 一時退院により年末年始を自宅で迎えることとなった女性。年越し直前に発作を起こした彼女に対し姑は信じ難い行動に出る。翌朝、姑は素知らぬ顔で彼女に"正月女"の話をし…
―己の病状が悲観的なことも加わり、義実家や周囲の人々に対する疎外感、夫への疑念と執着が、絶望となって主人公を蝕んでいく。
ニョラ穴(恒川光太郎)
 ある若者が遺したと思しき手記。その無人島の奥にある洞窟には近付くなと警告する。手記には男が島に来た経緯と、島の洞窟に住む怪物について記されていた
―怪物は無論異様で恐ろしいのだけれど、登場人物も皆倫理観の何かが一様に欠けているようで、そこがユーモラスでもあり薄気味悪くもある。
或るはぐれ者の死(平山夢明)
 JJと名乗るホームレスの男は、ある日車が行き交う道路の中央に潰れてへばりついた塊から目が離せなくなる。その塊の正体に気付いた男は……
―あまりに残酷な一編。恐ろしいのはJJの行動や彼の行動の末路よりもJJ以外の登場するすべての人間たちであり、それはある部分で読者の姿でもあるということ、か。一般的なホラーの怖さとは異質の何かで心を抉られる感じ。
(服部まゆみ)
 2月の寒いある日、画商の店を訪れた老婆が買取を希望したのは見事な立ち姿の日本人形。商材とは異なるものの人形を気に入った画商は言い値の5万円で買い取る。その後、人形はさる伝説的な人形師の手によるものであることが判明するが……
―天才人形師の手がけた雛人形をめぐるある姉妹の長年月にわたる相克、嫉妬、妄執。日本人形ってやはり、何故か怖い。
人獣細工(小林泰三)
 私は医師だった父によって体中の臓器を移植されていた。それも人のものでなく、遺伝子操作された彘(ぶた)の臓器を。父の死後、私は自分が人間であると確信できる証拠を見つける為、父親が遺した研究資料の整理を始める。
―著者初期の代表作といわれるこの一編、実は未読だった。自らのアイデンティティの危うさというモチーフは他作品でもよく扱われているが、このラストの残酷さは予想がつくものではあってもショッキング。



 序盤の2編(「恐怖」/「」)を除けば全て平成以降の作品で、今月読了のアンソロジー2冊で感じた「濃厚な昭和の空気」は当然感じず、親近感、言い換えるならリアリティを持つ懐かしさを覚えるのはかえってこちらの作品かもしれない。
 巻末の編者の言葉では第3弾以降も期待できそうな気配。

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「恐怖推理小説集」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 ミステリ作家、鮎川哲也編纂による"恐怖小説"のアンソロジー。

「恐怖推理小説集」編)鮎川哲也(双葉社文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
恐怖小説には冒頭の一行から最終行に到るまで恐怖の連続というものもあれば、さり気なく恐怖を描いて、数日後にふと思い出したとき思わずゾーッとなるものもある。音楽でいうクレッシェンドのように徐々に恐怖感を盛り上げておいて、クライマックスでブツンと切れるものもある。そこでバラエティーに富む作品を集めることに意を用いた(編者)


"(恐怖)推理小説集"とのタイトルだが、厳密なミステリやサスペンス―合理的な展開と真相が用意されているものだけでなく、幻想系小説や怪談じみたものも含まれる。星新一や半村良の作品は、この前に読了した『ホラーSF傑作選』に収録された方がむしろ据わりがいいかもしれない。主にミステリ系作品を主に手掛けていた作家による"恐怖小説"を集めた―というところだろうか。

 全13編。以下各編のさわりと簡素な感想。

蛇恋(三橋一夫)
 新婚の妻殺害の嫌疑をかけられた夫。しかし肝心の妻の遺体は見つかっておらず、夫は不可解な証言を繰り返している。その夫妻をよく知る人物が記した記録から浮かび上がる真相とは
―夫婦の行き違いによる誤解が悲劇に繋がるというよくあるパターンだが、提示される結末は一気に幻想的なものに。しかしなぜそのような姿に?という謎は放置。
東天紅(日影丈吉)
 駅の待合室で聞こえて来た殺人事件の話。その後目的地へ向かう途中、筵を積んだリヤカーを引く女と成り行きで同道することになるが、女の話に次第に疑念が募って行く
―序盤に陰惨な殺人事件が提示され、そして犯人と思しき人物が登場、その行動も疑念を裏付けるようなもの。真相を突き止めようとする展開に恐怖感が盛り上がって行く。大晦日から新年の朝という時間設定だけに、幕切れの情景が鮮烈。
不死鳥(山田風太郎)
 ある老教授の死にまつわる、隣家に住む少年と教授宅の住み込みの若い女中の告白、そして教授自身の遺書から浮かび上がる異様な真相
―山田風太郎の作品はほとんど読んだことがないが、こういう雰囲気のものが多かったのかなと勝手な感想。当時なら「異常性愛」ものという扱いだったんだろうが、今ならNTRもので括られるんだろうか。
もう一度どうぞ(戸川昌子)
 かつて心中事件を起こし、生き残った"わたし"。海外へ渡って整形手術をして名前も変え、ほとぼりが冷めたと思っていたが、偶然にも当時の事件に疑いを持つ男と知り合ってしまった
―芸能畑にも身を置いていた著者だけに、芸能界に片脚を突っ込んだ―しかも世間知らずでやや身勝手な若い女性という主人公像にはどこかリアリティがある。二匹目のドジョウを狙おうとして訪れる結末は……これは因果応報とも言えるが、恐ろしい。
人形(星新一)
 強盗事件を犯して逃亡する男。その隠れ家を訪れたのは物売りの老婆で、売り物は1体のわら人形だった
―「ノックの音がした。」の一文で始まる連作SS集『ノックの音が』収録の一編。呪いのわら人形を利用して苦境を脱しようとする男のアイデアは……ブラックな皮肉が利いていていかにも星SSの味わいだけれど"推理小説"ではないわなあ。
爪の音(おかだえみこ)
 銀座の美術商のショーウィンドに飾られた、紳士の身体にモグラの顔がついた風変わりな大理石像。それを見た翌日から私の身辺で奇妙なことが続発する
―この話は著者の実体験に基づくものだという。しかも最初はある有名人の作品として(要はゴーストライターとして)発表されたというのも面白い。怪談よりの奇譚ってところか
禁じられた墓標(森村誠一)
 綿密な計画の末、猫を偏愛する高利貸の老婆を殺害して大金を奪った男。それを元手に事業を成功させ若い妻も迎えたが、なぜか子供には恵まれなかった。ある日妻が飼いたいと連れて来た子猫を見て戦慄する
―いうなれば「猫による復讐」なのだが、怪奇譚のような雰囲気でありながら合理的解釈の余地も用意されているのは手練れの著者ならでは。文庫の表紙イラストは本作のイメージと思しいが、"恐怖推理小説"というタイトルに最もしっくり来るのもこの作品ではないかと。
夢中犯(半村良)
 タバコの火を借りに話しかけて来た老人が語るのは、最後に見た夢だという「殺人を犯した」夢の話
―のどかな雰囲気の中での他愛もない夢についての会話が、次第に悪夢に迷い込んでいくような展開。読み終えてページから顔を上げた時、今が現実か夢の中なのか一瞬本気で不安になった。
剃刀(野呂邦暢)
 寂れた町を商用で訪れ、バスを待つ合間に理容店を訪れた男。店員らしい女との会話の中で前年に隣町であった殺人事件のことを尋ねるが
―この9㌻足らずの掌編の中で何か事件が起こるわけではなく、女の正体が何なのかもわからない(その辺含め舞台は幻想系作品寄り)。だからこその静謐な怖さ。
わたし食べる人(阿刀田高)
 食道楽が昂じて30代にも関わらず恰幅が良過ぎるタナカ氏。あるレストランで話しかけてきたのは精神科医。彼の考案した治療法によれば、食欲を我慢することなく無理なく痩せられるのだという……
―夢の中で食欲を満たすという方法はまさに"夢"のようだが、想像力がカギというのがそのキモになっている。しかしこれだけ酸鼻極まる描写なのになぜか美味しそうなのは、あくまでブラックユーモア作品として書かれているからか。
影の殺意(藤村正太)
 突然失踪した兄の行方を独力で追っていた主人公。何かを知っていると疑わしい女性の家にも仕事上での関わりを持つことで入り込むことに成功したが……
―読者の予想を裏切る真相(ただし合理的)ってことでは収録作中最も無理のない作品か。舞台は自宅からそう遠くない場所だが、40数年前はそのような雰囲気だったのかと興味深くも読めた。
死霊の家(草野唯雄)
 性的に抑圧される生活を強いられている"私"は、ある日から何度か鮮明で濃密な艶夢を見るが、最後の夢で酸鼻極まりない場面を目の当たりにする。その後偶然訪れた地で、夢の中と瓜二つの蔦に覆われた洋館を発見するが
―昨年、著者の短編集『甦った脳髄』でこの作品は既読。主人公の強い性的欲求不満が死者の怨念と結び付くという、荒唐無稽な70年代エログロ・ホラー。
(樹下太郎)
「雨の日に散歩に出ればいいことがある」と告げる奇妙な電話。疑いつつもそれに従うと確かに幸運を手にした。しかし雨は彼の人生に影を落としており、しかもその理由は不明なままだった
―彼の人生に雨が影を落とし続けて来た理由は提示されたようで、真相も、電話の相手の真意も朧気なまま。読後も何やら小雨に煙って見通せない情景のようで、何とも言えぬ―それでいて悪くはない読後感。



  ハードカバー版での初版は昭和52(1977)年(文庫版の初版は昭和60(1985)年)。収録作は古いもので昭25(蛇恋/三橋一夫)、最も新しいものは初版時では最近作になる52年(雨/樹下太郎)と、それなりに幅は広いが、主に昭和40年代の作品が多く、やや昔の昭和を感じさせる雰囲気が全般に漂う。

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「ホラーSF傑作選」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 3が日も終わろうとしていますが、明けましておめでとうございます。
 今年はもう少し更新したいと思っております。例によって大半はTwitterですが。

 ってことで今年最初の読了本。
 1970年代末に刊行された怪奇幻想系SFのアンソロジー。

「ホラーSF傑作選」編)豊田有恒(集英社文庫コバルトシリーズ刊)

◆内容紹介(巻末解説より)
ホラー(Horror)とは、恐怖という意味です。ただ恐ろしいだけでなく、謎めいた恐ろしさということです。SFの恐さは、ある場合には、本来のホラーとは違うかもしれません。読み終わってから、ぞっとするということもあります。あるいは、そのイマジネーションや、シチュエーションそのものが、恐いということもあります。この短編集は、単なるホラーでない凝ったものばかりです。


 今月は国内作家の怪奇幻想系、あるいはホラー、恐怖譚の傑作選アンソロジーをまとめ読みしてみようと思い立ち、まずはこの1冊。
 初版が昭和53(1978)年と44年前のもの。執筆陣に目をやると小松左京、眉村卓、筒井康隆、半村良、星新一らに福島正実まで、日本SF草創期のオールスター、あるいは昭和SF作家アベンジャーズとでも言うべき顔ぶれ(それだけに編纂者の豊田有恒氏の作品が収録されていないのはちょっと意外というか)

 作品自体はタイトルで“ホラーSF”と銘打ったほどホラー色は濃くはなく、むしろ当時のSF作家が書いた怪奇色のある幻想譚といった雰囲気。昭和30~40年代の社会風俗の雰囲気が伺えるものが多く、“隠れ里”を舞台にした作品、さらに「個人の怒りや怨み、執念や絶望が実体化して実の世界や他人へ影響をもたらす」モチーフを用いた作品が複数あるのを見ると、この当時はこういったモチーフが流行りだったのかとも考える(今回は名作「くだんのはは」が収録された小松左京も、このモチーフで「召集令状」という怖い話を書いている)。

 全11編。以下各編のさわりと簡単な感想。

くだんのはは(小松左京)
―言わずと知れた日本ホラー短編のマスターピース。丑年が明けた直後に読むというのもアレだが、カタストロフを匂わせるラストからして新年一発目に読むのはちと縁起が悪いか?……なーんてことは今さら気にしないけども。
斬る(かんべむさし)
 顧客や上司、工場との板挟みで鬱屈した日々を送る営業マンの哲男。ある日彼はモデルガンショップの店頭に飾られた軍刀に心を奪われる。軍刀をようやく手にした哲男は夜は自室で軍刀を振り、日中は「斬る」という言葉を呪文として鬱積した思いと対峙していくが……
―この著者の作品というとユーモアやコメディ色の強いSFといった印象が強いが、本編はやや陰鬱なトーンが続き最後に爆発するといった点でやや意外にも感じる。
くおんしゅの踊り(矢野徹)
 とある山村では祭りの踊りの最中、何年かに一度霧の奥に昔の村が現われ、そこで暮らす死者と会うため手紙を書いて墓地で燃やすのだという。主人公は戦時中に南方で命を救ってくれた人物に手紙を書く。
―タイムトラベル+復活(転生?)のファンタジー。というよりオッサンの理想というか妄想と思えなくもない(言い過ぎ)。
おお、マイホーム(眉村卓)
 若夫婦がようやく手にしたマイホームは最寄りの駅からも遠い新築マンションの11階だった。しかも人気薄のため同じフロアには彼らしか入居していなかったが、夫婦にとっては念願のマイホームだった。しかしある日、ある部屋のドアから目つきの悪い若者が出て来てこちらを窺っていることに気付く。
―マンションの不穏な隣人というモチーフはそれこそ、現在の実話怪談や恐怖譚的なものとなりそうだが、予想に反して話は意外な方向へ。スラップスティックなクライマックスの展開は面白おかしくも、マイホームへの切実な思いも込められ悲哀も感じさせる。
メトセラの谷間(田中光二)
 山間での渓流釣りの最中、深い谷にかかる地図にない橋を見つけた主人公。温泉宿の主人は当初は否定するが、やがて「それは幻の谷で何年かに一度現れるが、それを見た者には不幸が訪れるし、そのまま帰らぬ者も少なくない」と語る。
―これも隠れ里モチーフ。真相が明かされて「あ、これSFだった」と思い出す。しかしこの手の隠れ里に迷い込んだ男ってどーして若い娘と懇ろになる展開がお約束なんだw
佇むひと(筒井康隆)
 こちらもこういった国産ホラー傑作選では頻出のマスターピース。ホラーであると同時にディストピア小説の秀逸な一編とも言えるか。
 それはさておき、ツツイ短編でホラーの傑作選に選ばれるのはこれか「母子像」がほとんどで、確かに両作品とも非常に怖いのだが、これらのような怖さに同時にリリカルな静謐さを持った作品の方が高評価なんだろうか。個人的にはひたすら不条理さ全開の「乗越駅の刑罰」「走る取的」「熊の木本線」みたいなのも相当怖いとは思うのだが。
背後の虎(平井和正)
 三度目の流産によって今後の出産が不可能となった女性。悲嘆の余り廃人のようになった妻を案じつつも出張のため家を出た夫は、出がけに獣の息遣いと唸り声を耳にする
―こちらも「絶望や怨みが実体化する」モチーフの一。流産、さらに子供を産むことが絶望的になるということは女性にとって筆舌に尽し難い苦しみであるのだろうけど、これを読む限りでは少々逆恨みな気がしなくもない……。ま、寅年ってことで。
緑の時代(河野典生)
 夜明け前の新宿。スナックを出た“僕ら”は、開店前の銀行の入口に緑色の苔が絨毯のように広がっているのに気付いた。
―恥ずかしながら河野典生という作家を初めて知ったのだが、ハードボイルド系作家であると同時に「自然と文明が溶けあう」作風の幻想系SFの書き手でもあったとのこと。なるほど本編もそのイメージのままで、ラストは絶望的ながらも美しい。
過去への電話(福島正実)
 雑誌の企画で「過去への電話」を思い立ち、文芸評論家として一時は華やかな活躍をした人物へ酒場から電話をかけた編集者。すぐに自宅を訪ねることとなりタクシーに飛び乗った彼だったが……
―「あの人はいま」な人物に過去と現在を語らせる、少々意地悪な企画の取材のはずが、いつしか自身も過去の世界へ囚われて行く……考えようによっては本書中最も“ホラーSF”な趣の一編。編集者、翻訳者として日本SF草創期の中心人物の一人だった福島正実の作品だが、児童書で福島作品を読んだのみの自分は「福島正実ってこういうクセのある文章を書くのか」と新鮮な感覚も。
自恋魔(半村良)
 小さなデザイン事務所を営む柿田は義叔父が経営する芸能プロダクションに移籍した男性アイドル歌手、高沢啓一のポスター撮影を担当する。完成後高沢本人から使用した写真について泣きながらのクレームが入るが、その数日後高沢は事故で意識不明となる。異変はそこから始まった。
―自分の美貌に絶対の自信を持つ男性歌手。過度のナルシズムが異変を引き起こす……これも「強烈な思念が現実社会に影響する」作品。ラストは馬鹿馬鹿しいようでその実、かなり怖い。
背中のやつ(星新一)
 久方ぶりに会った幼馴染は一歳児ほどの大きさの、しかし皺くちゃの老人の顔を持つ人間を背負っていた。幼馴染の話ではそれを背負っていると決して道に迷わないのだという。
―その老人の顔を持つ赤子は一体何者なのか。何とも不可思議だが軽妙な一編で、後味が悪くないのも星SSとしてはやや珍しいか。


 普段からホラーや怪奇幻想系の話ばかり読んで感性がねじけていると、ついつい悲劇や惨劇、破綻を迎えるラストを想像してしまうのだが、そこまで「うわ酷い」という話はないようで。時代ということもあれば、集英社文庫コバルトシリーズという10代後半~20代前半の読者向けのレーベルで刊行されたということもあるのだろう。

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「秘密《異形コレクション51》」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 昨秋、待望の復活を遂げた≪異形コレクション≫。
 復活第3弾のテーマは『秘密』

「秘密《異形コレクション51》」監修)井上雅彦(光文社文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
<秘密>それは幻想怪奇(ホラー)と推理小説(ミステリ)を生み出す源泉。
今回のテーマは、私たちの最も身近な存在です。それは……秘密―。
おそらく、私たちの誰にとっても、ひとつや、ふたつは、密かに持っているものでしょう。
誰もが知っている<秘密>の味。だからこそ、<秘密>をめぐる物語は、魅力的です。あらゆるジャンルを超えた≪異形コレクション≫という秘密の隠れ家で語られる極上の物語。心ゆくまでご堪能下さい。                                (編集序文より)


 この6月にこの第3弾が刊行されてすぐに購入していたにも拘わらず、理由もなく積読のままでいるうちに第4弾「狩りの季節」が今月刊行となっていた(今回はこれを読んでいる途中で購入)。これまでこのシリーズは創刊当時から全冊刊行直後に購入し、次巻が出る前に必ず読了していたのだが。やはり趣味方面の読書ペースが極度に落ちたことも原因か。とはいえ他には読んでいた本もあるのだから、10ヶ月もブログを放置した言い訳にはならないのだけれども。

 閑話休題。

 今回の<秘密>というテーマ。上掲の編集序文にもある通り<秘密>とは怪奇幻想でも推理小説でもそれが一つの肝となる。正確にいえば事件によって“謎”が提示され、それが徐々に明かされていく過程で<秘密>の存在が立ち上がり、さらにそれが明らかになることによって読者の感情を揺さぶる―衝撃、感動、涙、あるいは怒りetc……というのが定型だろう。
 言うまでもなく<秘密>とは、上記の2ジャンルに限らず、多くの物語という枠組の中でその成否を決める一大要素となっている……というのは言い過ぎか。
 ……その一方で、現実の世界においては<秘密>は往々にして「知らない方がよかった事」でもあるようで。

 今回は―個人の秘めた過去やある家系に伝わる<秘密>から、人類の歴史、世界の帰趨、さらにあの国民的アニメに纏わる<秘密>等々、全16編収録。

 以下、各作品の概要と簡略な感想。

壁の中(織守きょうや)
 作家を訪ねて来た若い女は「あなたの秘密を知っている」と告げる。作家の人気作のヒロインを名乗るその姿は、彼がイメージするキャラクター像そのままだった。
―タイトルから想起する通りポーの傑作短編が一つのモチーフ。その上に描かれる<秘密>が醸す恐怖は、作家のみならずクリエイターなら誰しも共感するのでは。

私の座敷童子(坂入慎一)
 広い旧家で独居する父と暮らすため実家へ戻った主人公。実家の蔵の座敷牢には年齢不詳の薄汚れた男―父親は“座敷童子”と呼んだ―が居り、彼女もかつて目にしていた。
―座敷童子の新解釈、か。提示されていたいくつかの謎(ここでは<秘密>か)が、明確に書かれずとも明らかにされるラストは、巧い。

インシデント(黒澤いづみ)
 感染症が世界規模で猛威を揮う時代、リモートワーク中のマイク越しに同僚から発せられる異音に気付いた主人公。同僚は「自分も感染した」と白状するが―。
―世界規模のパンデミック下で進行するウイルスの恐るべき生存戦略……だが、状況が状況だけに「ただのホラーSF」と笑い飛ばすこともできないのが怖い。

死して屍知る者無し(斜線堂有紀)
 誰もが死後「転化(てんげ)」によって動物に生れ変る世界。12歳のくいなは兎に転化することを望んでいた。
―牧歌的ユートピアのような世界に隠された<秘密>。

胃袋のなか(最東対地)
 夫の不倫を苦にして家出した女性のスマートフォン。その留守電に残されたメッセージから浮かび上がってくる<秘密>と、恐ろしい真相。
―留守電のメッセージだけで構成された作品だけに、最後はどうしてもああいう説明口調にならざるを得ない、か。

乳房と墓──綺説《顔のない死体》(飛鳥部勝則)
 芸大多浪中の下村は、アルバイト講師を務める塾の生徒、城戸ヘルガが森の中で首なし死体を捨てるのを目撃する。
―クライマックスまで二転三転する謎解き。捻った上できれいに着地。

明日への血脈(中井紀夫)
 飲み屋を営む“私”は、常連の学生が新規客の女性と割ない仲になったのを知る。
―スナックと思しき酒場で繰り広げられる大人の交流が、いつしか新たな人類史構築の実験の話に。お色気要素入りバカSF(褒め言葉)はどこか懐かしい昭和の雰囲気。

夏の吹雪(井上雅彦)
 失踪した母の思い出、転校生の少女が見せてくれたスノーグローブ、「雪女に助けられた」という少女の父親の話。
―<秘密>というテーマから「雪女」をモチーフに書いたとのことだが、いつも以上にガジェットが散乱している感あり。カットバック風に時系列を入れ替えるのはこの人の作風でもあるけれど、イメージが鮮烈だけに余計取っ散らかり気味な印象で残念。

蜜のあわれ(櫛木理宇)
 24年ぶりに地球を訪れた“わたし”はあるレストランを訪れた。総料理長に会ってあることを確かめるために―
―2人の会話とグルメ描写でほぼ物語が進む。後半のとある描写は……多分に現代的。

霧の橋(嶺里俊介)
 正月休みに家族で義実家を訪ねた壁沼はフリーマーケットで老人から妙な石を買う。雨上がり、自宅がある都心方面は深い霧に覆われていた。
―今の妻には隠している<秘密>。それに纏わる罪悪感か、(あの時違う選択をしていたら)という思いが見せた幻覚なのか。

貍(やまねこ) または怪談という名の作り話(澤村伊智)
 従兄から聞かされた、彼が小学生の頃の同級生の何とも奇妙な話。
―誰が言ったか知らないが「ホラーとは即ちホラ話」ということか。「ホラー作家は、人を喰って生きている」という紹介コメントの言葉も宜なる哉。しかしあの国民的アニメを、まぁ……w

嘘はひとりに三つまで。(山田正紀)
 葬儀でのある“事件”について調査を依頼された探偵。調査の過程で浮かび上がる様々な人々の嘘と<秘密>と真実。
―この物語も会話文のみで語られる。<秘密>って○○だろなと中盤で予想がついてしまったのは自分の感覚が歪んでしまっているからかもしれない。

生簀の女王(雀野日名子)
 虐待する男から逃げたメグミはデパ地下の鮮魚売場で働くことになる。売場の人間は皆それぞれ事情を抱えており、閉店後のある儀式を終えると売場からいなくなっていた。
―勘のいい読者なら最初のページでこの話のモチーフに気付くか(自分は気付けなかった)。個人的には、デパ地下の鮮魚売場よりアメ横センタービルの地下1階を想像してしまった。

風よ 吹くなら(皆川博子)
―物語ではなく、散文詩。ストーリーよりもそのイメージの美しさを感じればいいのだろう。夜になると「駅は二つに折りたたまれる」というフレーズがなぜか印象に残る。

モントークの追憶(小中千昭)
 新型コロナの感染拡大がひとまず落ち着き、久々に会った同業者から聞かされる様々な陰謀論や都市伝説の類。その中で同業者は都下にある奇妙な施設について語り出す……。
―作品内で羅列される、新型コロナに纏わる陰謀論や大手メディアで語られぬ虚実入り混じった情報。著者はそれらをガジェットにしてメタフィクションを書きたかったのだと思う。最後の一行が著者なりの決意表明とも思うが。
……ちなみに紹介文ならびに作中で触れられている某施設は自宅からそう遠くない。

世界はおまえのもの(平山夢明)
 クリニックを営む主人公に5年来カウンセリングにかかっていた患者が自殺した。その死後、患者が差出人になった1冊のノートとメモが彼の元に届く。
―自分達を取り巻く普通の世界がある日突然崩壊することの恐ろしさ。「猿の手」+「Death Note」というモチーフをここまで悍ましく、恐ろしく、悲しく書けるものか。大トリに相応しい圧巻の一編。




 あくまで個人的印象だが、<秘密>というテーマからミステリ寄り、あるいは幻想系やファンタジックな作品が多いかなという予想に反し、モダンホラーの味わいを感じるような作品が多かったようで、その辺りも嬉しかった。

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「蠱惑の本 《異形コレクション50》」 [Book - Horror/SF/Mystery]

《異形コレクション》復活第2弾。テーマはずばり『本』。

「蠱惑の本≪異形コレクション50≫」監修)井上雅彦(光文社文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
 祈念すべき五十冊目を〈本〉を愛する皆様に送ります。
 貴方の本棚に、どうか、もう一冊、闇色の本をお迎えください。
 本は、常に私たちの身近にあって、あらゆる「世界」を閉じ込めた存在でした。本を開きさえすれば、脳裏に飛び込んでくる「未知」の世界。
 そこには人生を変えてしまうような出会いもある筈です。
 記念すべき五十巻目の《異形コレクション》を〈本〉に関わるすべての人々に捧げます。
                                   (編集序文より)


IMAG1995_20210129004647.jpg 昨年11月、9年の眠りから目を覚ました《異形コレクション》。復活第1弾である『ダーク・ロマンス』に続き、12月には第2弾である本書が刊行された。通算第50巻という記念の1冊でもある今回のテーマは『本』。編者序文によればこのテーマは創刊当時から候補となっていたテーマなのだそうで。
 本―書物テーマの怪奇幻想……《異形》に収録されるような作品といっても、いわゆる曰く付きの本やクトゥルー神話のガジェットにあるような魔導書とか、稀覯本を手に入れたら怪物が現われたとか、それこそM.R.ジェィムズの作品にあるようなものは殆ど無く(そりゃそうか)、「人間が本になる」(ブラッドベリ『華氏451度』みたいな)ものが印象に残る。〈本〉は必ずしも「文字が書かれた(印字された)紙が束ねられたもの」とは限らないということか。思い起こしてみれば、クライヴ・バーカーの傑作短篇集(無論これも序文で言及されている)『血の本』シリーズも、個々の作品は独立した短篇ではあるものの、それらは全てある男の身体に刻まれ血で綴られたもの―という設定の枠物語があったわけで。
 また、故人あるいは終活として蔵書を処分するという(住宅問題も含め)設定が用いられた作品も複数あって、これはいかにも現代―それも身近で切実な問題よなぁ、と。

 収録作15篇。以下簡単な感想を。

蔵書の中の(大崎梢)
 亡くなった祖父の蔵書引き取りに立ち会うことになった大学生の主人公。予定時間の前に一人の老婦人が「祖父に貸していた本を返してもらいたい」と訪ねて来る。彼は婦人と書庫になった離れで探し始めるが。
―「本には人の気持ちや感情が宿りやすい」(本文より)。それが時に異形となって顕現するということか。余談だがこういう〈離れ〉を書庫にするというのは本好きの夢だろうけれど、書庫で遭難しそうになるのは“悪夢”だろうなぁ。
砂漠の龍(宇佐美まこと)
 匈奴の騎馬民族の襲撃から辛くも助け出された少年は、涸れ谷で死んでいる馬賊たちを見つける。彼を救った行商人は「砂漠の龍が現われた」と語る―。
―中世のアジアが舞台のファンタジーと思いきや、そこから一気に物語は現在の日本が舞台に変り、そしてさらにダークな展開を帯びていき、クライマックスで序盤のストーリーと結びつく。年寄りが亡くなった家に(訳アリな)若者が移住してくるという展開に何となく既読感を覚えたのだが、昨夏に読んだ「小説現代」9月号の『氷室』も同じ著者だった。
オモイツヅラ(井上雅彦)
 ヴィクトリア朝期のロンドン、主人公はモンタギュー街にある若い女性精神科医の診療所で働くことになった。ただし助手ではなく、書庫を管理する司書として。
―著者の過去作をはじめ舞台となる時代の様々なガジェット、さらには日本の御伽噺まで詰まった、まさに遊び心たっぷりの一篇。書いていて楽しかったんだろうな、と。
静寂の書籍(木犀あこ)
 老齢の常連客の蔵書を引き取ることとなった古書店主。会話の中で客が言及したある本に強い興味を覚えるが、老人は「それだけは譲らないし見せる気もない」と断言する。事情により追い込まれていた店主は……。
―タイトルにもなっている『静寂の書籍』、老人が頑なに隠していたその本がいかなるものだったのか。それが明らかになる件はぞわっとさせられる。視覚と聴覚の違いはあれ、D.マレルの某傑作中編を思い出した。
蝋燭と砂丘(倉阪鬼一郎)
 ある在野の俳人から毎年贈られてくる個人句集。「蝋燭と砂丘」の題がついた今年の句集は終末感や幸薄感に満ちた、これまでと異なる不気味さを帯びていた。
―近年では時代物や歌人/俳人としての活躍が顕著な著者。『異形―』初期に倉阪作品に出会った者としては、この人の作品は「鋭利な残酷さを帯びた怪奇恐怖譚」なのだが。参加作家陣に名前を見つけて期待してた分、個人的には少々物足りなかったかも。
雷のごとく恐ろしきツァーリの製本工房(間瀬純子)
 イヴァン雷帝下のロシア。製本職人としてデンマークから招かれたハンスは、工房を訪れたツァーリ一行に聖書の活版印刷の様子を見せることとなった―。
―闇の出版史の一挿話ってとこか。初読した時はなんでこういう展開なのか読み取れず。
書骸(柴田勝家)
「本の剥製を作ること」を趣味とした男。彼を愛し続けた妻が語る話。
―冒頭の一行で一気に引きずり込まれる読者も相当多いだろうが、自分は(ん、ちょっとニガテな方面かも)と身構えてしまった。奇想、奇譚としか言いようがないのだが、後半の展開、さらに語り手である妻も「信頼のできない語り手」であると考えると……。
本の背骨が最後に残る(斜線堂有紀)
 人が「本」となった世界。誤植のある「本」は『版重ね』と呼ばれる議論を「本」同士が行い、敗れた方は焚書となる。
―設定こそファンタジーではあるが、こじつけや詭弁によって「物語」が当初の姿から変容していくことは現実に起こっている話でもあって。
河原にて(坂木司)
 ベビーカーを押して散歩をしていた私は、河原で焚火をしている男を見かける。男が本を燃やしているのに気付いた私は、ベビーカーに入れていた育児書を燃やしていいかと男に尋ねるが―。
―育児の最適解を求めて、膨大な情報に翻弄され倦み疲れてしまう……子育て中の女性にとっては切実な問題なのだろう。終始軽妙なトーンでどこが異形?と思っていると「おっ」となるが、ラストすらも軽やか。
ブックマン―ありえざる奇書の年代記(真藤順丈)
 奇書蒐集家であった母方の叔父が「ぼく」に託した本とは、母(ぼくにとっては祖母)を中心に一家の奇妙かつ壮大な歴史が綴られた「叔父自身」だった。
―「人を読み、さらに書く」という異能力、これってヘブンズ・ドアー?と思ってしまうのはニワカ過ぎるか。でも人間とはある面、記憶やら言葉やら種々雑多膨大な情報で出来ているものとも言えなくもないわけで。ラストで明かされる事実に素直に驚かされる。
2020(三上延)
「本の島」として注目を集め始めた文之島は、2年前に亡くなった人気女流作家の出身地であり、終の棲家でもあった。この島に新しい司書として訪れた私は、かつてはその作家を師と仰ぎ親交もあったのだが。
―大長編のベストセラー・シリーズの知られざる秘密、ということか。一族の、そして選ばれた者の宿命とは、言い換えれば呪いと言えなくもない。タイトルが意味するのが年号だけでないという仕掛けが面白い。
ふじみのちょんぼ(平山夢明)
 ルール無用の殺し合いのような格闘ショーで日銭を稼ぐちょんぼは、どんな重傷すら数日で快復してしまう不死身の男。彼はある〈本〉の世界に入ることで傷を癒やしていたのだった。昔施設で妹のように可愛がっていたサヲが、ある日ちょんぼを訪ねて来る。
―言うなれば平山流“あしたのジョー”か。「貧乏でどうしようもないけどみんな妙に元気」な人間喜劇を書きたくなった―のが近年の著者らしいが、かつての乾いた狂気に代わりウエットなおかしさと物悲しさが覆う分、ラストの救済の残酷さも際立つ。最後のシーンもあの作品へのオマージュかと。
外法経(朝松健)
 侍所頭人の多賀高忠は、洛中で続けて起こる怪事に頭を悩ませていた。思案の末一休禅師に相談するため庵を訪ねると、一休は不在で自分宛の手紙が用意され、そこには「目の前にいる侍女の森(しん)に子細を話し、怪事のあった場所に行ってみよ」と書かれてあった。
―老齢の一休禅師と盲目の侍女森のコンビ。NLQ Vol.19まで連載された《一休どくろ譚》でお馴染みだったが、異形コレクションにもようやく復帰で喜ばしい―と言いたいところだが、今作では禅師は手紙のなかでのみの出演。というより今作は本書と同時期に刊行の長編「血と炎の京 私本・応仁の乱」と《一休どくろ譚》との世界を繋ぐ前日譚なのだとか。最後に判明する今作の〈魔〉の正体、自力ではわからず調べてみてようやく理解した次第。
恐 またはこわい話の巻末解説(澤村伊智)
「恐」というタイトルのホラー傑作選の巻末解説。編者によって収録21作品の解題等が語られるが、その隙間から徐々に不穏なものが漂いはじめ―。
―架空のアンソロジーの巻末解説という体裁。各作品のタイトルも著者名もすべて創作だが、それと似たような、あるいはネタ元になっているような実際の作品を考えてみるのも一興かも。前巻『ダーク・ロマンス』収録の「禍 または2010年代の恐怖映画」といい、この著者は紙面から立ち上るような禍々しさを描くのが本当に巧い。
 監修者の言葉にもあるように、澤村氏にはぜひ一度ホラー・アンソロジーを編んでみてほしい。
魁星(北原尚彦)
 ある日、私(北原尚彦)は横田順彌氏とのいつもながらの雑談の折、耳慣れぬ神社について尋ねられる。数年後、あることをきっかけに横田氏はその神社が「魁星神社」といい、古本に関するご利益があることを語るのだが―。
―個人的に横田順彌にほとんど思い入れはないのだが(といっても異形コレクション初期の押川春浪シリーズは独特の雰囲気で楽しんだ記憶はある)、故人との交流の思い出を虚実入り交えて語った本作は切なくもありまた面白い。著者が今一度“異形ファン”に向けて発表した弔辞なのかなとも感じたり。


 今にして思うと、前巻は復活を告げる華々しさや悦び(禍々しさも多分にあり)に彩られていた一方で、そのテーマの意味合いの広範さ故に、テーマ・アンソロジーとしての統一感みたいなものは若干薄まっているような気がしないでもない。その意味で今巻は〈本〉というテーマに沿った、かつての《異形コレクション》の雰囲気が帰ってきたようにも感じられた。

 次巻がいつ頃なのか、テーマは何になるのかはまだ不明だが、次も愉しみなことは間違いない。

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「恐怖のハロウィーン」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 SF界の巨匠アシモフらによる、"ハロウィーン"テーマの恐怖小説アンソロジー。

「恐怖のハロウィーン」編)I.アシモフ他(徳間文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
ハロウィーンは三つの分野で文学に影響を与えている。ミステリでは、ハロウィーンの雰囲気はすでに与えられているサスペンスを高める役割を持っている。ファンタジーでは、祭典とは不可分の魔女、小鬼、悪魔に深く根をおろしている。ホラーでは、その日にまとわりつく悪の臭気を利用している(編者序文より)。巨匠アシモフが十月三十一日、万霊節前夜(ハロウィーン)の戦慄をテーマに選び抜いた珠玉アンソロジー十三編。


 昨秋の神田古本まつりで購入していた1冊。1年越しにハロウィーンに合わせて読んでみた(ブログ記事にするのに時間がかかってしまった)。

 表紙には編者としてアシモフの名前だけだが、実際はアンソロジストとして名高いM.H.グリーンバーグやキャロル=リン.R.ウォーらとの共編らしい。このメンツでの恐怖小説アンソロジーというと、新潮文庫から出ていた「クリスマス13の戦慄 」「バレンタイン14の恐怖 」を以前読んでいたことがあった。なんでこれも新潮文庫から出なかったのかとも思ったが、文庫版の刊行は34年前の1986年。当時はハロウィーンという慣習(イベント)について日本では今ほど馴染みがなかったから、見送りになったのかも。

 で、こちらは徳間文庫から刊行されたわけだが「奇妙な世界」さん(Twitter:@kimyonasekai)によるとこの兄弟本?として「戦慄のハロウィーン」なるものも出ていたとのこと。
 読み進めていくと、タイトルからイメージするような怪奇幻想やホラーばかりでなく、ミステリもいくつか含まれていることに気付く。これは上述の「クリスマス13の戦慄」など、編者が共通するアンソロジーにも言えることで、そういう編集方針だったのだろうなと。

 収録作は全13篇(この数字にも拘ったんだろうなきっと)。
 以下、簡単な感想など。

序文 邪悪の力(I.アシモフ)
 アシモフによる序文。未だ日本人にはほぼ馴染みのないハロウィーンの起源と歴史に関する内容は、読み物としてとても面白い
ハロウィーン(I.アシモフ)
 盗まれたプルトニウム(!)を探すミステリ仕立てのショートショートというか、小咄。
忌まわしい異種交配(W.バンキア)
 ジャンボ野菜作りに取り憑かれた男の凶行が呼ぶ悪夢。邦題で7割ネタバレ気味w
ハロウィーンの殺人(A.バウチャー)
 シカゴから逃げて来た男が殺害された。銃痕から犯人は5フィート前後の小柄な佝僂(せむし)と思われたが。ミステリの小品。
十月のゲーム(R.ブラッドベリ)
 このテーマのアンソロジーでは頻出の逸品。ラスト1行で肌が粟立つのもさりながら、その前に至る主人公の心理がなんとも厭。
ハロウィーン・ガール(R.グラント)
 夜の世界を少年と少女。2人はハロウィーンでの仮装を心待ちにしていたが。微笑ましくも切ないラスト
吸血鬼の日(エドワード.D.ホック)
 保安官のフランクは、町外れで見つかった浮浪者の死体に血が一滴もなかったことを葬儀屋から知らされる。保安官選挙を控え、フランクはそれを黙殺する。怖いのは吸血鬼か、それとも人間の権力に対する欲望か。
小鬼の夜(T.パウエル)
 8歳のボビーは生れて初めて万引きをした。ハロウィーンの夜のある計画のために。小鬼=アンファン・テリブルもの。
死んだ猫の事件(E.クイーン)
 名探偵のエラリイと秘書のニッキィはハロウィーンの夜、猫の仮装パーティーにへの招待状を受け取る。ゲーム最中の暗闇の中、参加客の一人が殺害された。ユーモラスな感じのミステリ仕立て。
パンプキン・ヘッド(A.サラントニオ)
 転校生の内気な少女が語り始めた不気味な話。不穏さを覚えた教師は結末の前に話を打ち切らせるが。あのカボチャのお化けのイメージをストレートに物語にしたような、ハロウィーンっぽさでは収録作一。そう言えばいじめられっ子がカボチャの仮面をかぶり復讐する、というマンガを近年目にしたような……。
輪廻(L.シャイナー)
 例年ハロウィーンの夜に行なう怪談朗読会。今年は欠席したメンバーが送ってきた物語は『輪廻』と題されていた。物語世界に取り込まれていく現実。
万霊説前夜(I・ウォートン)
 郊外の邸宅に住む未亡人が自宅で過ごしたハロウィーンの異様な一夜。亡霊も怪物も狂人も登場せず、惨劇どころか血の一滴すら出ていないのに、じっとりと怖い。
昨日の魔女(G.ウィルスン)
 子供達の間で魔女と噂され恐れられていた老女ミス・マーブル。13歳のハロウィーンの夜、ぼくは勇気を振り絞ってマーブル家のベルを押す。老女は本当に魔女だったのか否か。
今年の生贄(ロバート.F.ヤング)
 不運続きで求職中の男が職業安定所の受付嬢からメモを受け取る。メモには自分が魔女であること、彼に危難が迫っていることを告げるものだった。性悪な魔女と言えど※には勝てない、という設定がユニーク。


 コロナ禍で今年は数多くのイベントや催し物が中止となった。ハロウィーンにしても―昨年のような渋谷の乱痴気騒ぎは当然論外だけれど―また気軽に"季節の風物詩として"多くの人が楽しめるような状況になって欲しいと切に思う。
 ……ハロウィーンの起源や元々の意味は置いといて。

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「ダーク・ロマンス《異形コレクション49》」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 9年余の眠りから目覚めた伝説の書き下ろしアンソロジー・シリーズ、待望の復刊第1弾。

「ダーク・ロマンス ≪異形コレクション49≫」監修)井上雅彦(光文社文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
九年ぶりの復活!新たな伝説の始まりです。
闇を愛する皆様、
闇のなかで燦めく「想像の力」を信じる皆様、
怪奇と恐怖、幻想と驚異、人外の唯美……。言葉の力で現実を超えようとする小説の作者と読者の皆々様、
そして、なによりも……異形の短篇小説を愛してくださる皆様。
お待たせいたしました。
四十九冊目の《異形コレクション》をお届けします。 (編集序文より)


「異形コレクション」が今秋に復活することを知ったのは、監修者である井上雅彦氏の8月頃のツィッターにて。'97年の創刊からずっと読み続け愉しんでいたシリーズだけに、2011年の48巻『物語のルミナリエ』を以て長い眠り……休刊状態に入ったのは(3.11という未曽有の事態があったが故であるが)残念に思っていた。その辺りは編集序文で語られているので以下略。
 それが噂やあやふやな情報でなく、他ならぬ監修者自身の口(ツィートだけど)から明確に"復活"が宣言されたのだから、嬉しいやら期待が否応なしに膨らむやら。

 復刊第1弾(通巻で第49巻)のテーマは『ダーク・ロマンス』。23年前の創刊第1巻のテーマが『ラヴ・フリーク(異形の恋愛)』を思い出し、それとの関連を思い浮かべてしまったのだが、編集序文によると「モードの世界におけるトレンドの《ダーク・ロマンス》」がモチーフであり、かつロマンスという語句自体、元来は中世に"ロマンス語"で書かれた「空想・冒険・伝奇的物語」であったらしい。そういったことを含め、もっと広義の―まさしく「異形コレクション」そのものと言えるようなテーマ、なのだとか。
 参加作家もシリーズ草創期からの常連陣から、休刊中にデビューを飾った若手まで幅広い。「《異形》を読んで育った」というような若い作家が参加しているというのも、シリーズ自体が長命であること、そして眠りの期間が短くも長かったことを示しているのだろう。

 本を開く。まず伯爵―井上氏の前口上が何とも懐かしく、そして嬉しい。
 本編は15篇収録。以下各作品について手短に。

・夕鶴の郷(櫛木理宇)
 深夜バイクで事故に遭った男が目覚めたのは、病院のベッドではなく山村の古びた民家、側にいたのは見知らぬ老爺だった。かいがいしく世話を焼く、老爺の孫と名乗る娘は、男が捨てた恋人に似通っていた。
―タイトルからもわかるように戯曲『夕鶴』をモチーフにしているが、終盤で繰り広げられる地獄図絵はかくも悍ましい。小松左京「保護鳥」や篠田節子「神鳥-イビス-」を思い出した。
・ルボワットの匣(黒木あるじ)
 バーで横の席に現れた老齢の男は、「私」が自死を選ぶか、若しくは人を殺めるか迷っていることを看破する。彼は人殺しの告白を聞いて欲しい、と語り出す。
―男が取り出した箱の呪い……その正体に中盤までに勘付く読者も少なからずいるかもしれない。ラストまで読むと、老人の最初の台詞が既にヒントになっていたことに気付く。
・黒い面紗(ヴェール)の(篠田真由美)
 芸術家の卵として仲間たちと、"巣"と呼ぶロンドン郊外の邸宅に寄宿していた「私」は、母親の容態が悪いと聞かされ、急遽実家へ連れ戻される。一週間後"巣"に戻ると、そこは異様な静けさに包まれていた。
―面紗(ヴェール)の下にあった女の顔は一体何だったのか。ラスト後に起こった(と思しき)惨事を考えるに……。
・禍 または2010年代の恐怖映画(澤村伊智)
 関係者の身や撮影現場で次々と起こるトラブルのため、ホラー映画『禍』の撮影は遅れに遅れていた。「―この映画は呪われている」そんな噂が以前から絶えない、そんな映画だったが―。
―ある種の粘度と質量を持ったような禍々しさが行間からじくじくと滲み出てくるような感覚は、この作家の真骨頂だと思う。
・馬鹿な奴から死んでいく(牧野 修)
 魔術医の「俺」は街中で傷ついた少女を助けたが、少女は悪名高い魔女の所有物だった。少女を返すことを拒んだまではよかった、が。
―牧野修って以前はこんな感じじゃなかったよなと思いつつも、魔術医と子犬のコンビは読んでいて楽しい。世界があんなんなっちゃ続篇は期待できなさそうだが。
・兇帝戦始(伴名 練)
 敵対する氏族に追われていた族長の息子の窮地を救ったのは、彼の氏族に身を寄せていたゲンギケイだった。海の向こうの異国から流れて来たという美しいその男は、時に不思議な力を揮う、謎の多い男だった。
―日本史上でも特に有名なあの伝説を下敷きに……と見せかけて、こっちを持って来たか!という仕掛けに思わず、にやり。この辺りから若手……《異形》休刊中に登場した作家の作品が再び続く。
・ぼくの大事な黒いねこ(図子 慧)
 チェコの医大生である僕はとある財団の駐在員でもあった。上司である姉から急遽ドイツへ赴くよう命じられた僕は、ドライバー兼通訳の無愛想なドイツ人と"ぬこ"のムッシュを伴なってドイツへ向かうが。
―人為的に作られた猫(ぬこ)の描写は愛らしく、猫好きにはたまらんのだろうが、終盤で見せる得体のしれない怪物(モンスター)としての顔で、この作品がSFホラーという事に気付く。
・ストライガ(坊木椎哉)
 二人の女性の独白から浮かび上がる、凄絶な純愛の顛末。
―正直に言って、BLとか百合はどうしても苦手というか(正確にはこの作品は百合じゃないんだろうが)生理的に受け付けない(あと、欠※フ※※というのもどうにも理解できない)……のではあるが、《ダーク・ロマンス》という語句のイメージに収録作品中最もハマっている一篇かもしれない、文字通り"異形の純愛"か。
・花のかんばせ(荒居 蘭)
 目覚めた男に語りかける声の主は、彼と同じく、髑髏の花になったある男のものだった。
―鈴蘭怖い。いや怖いのは実にも不可解な男と女か(なんつって)。
・愛にまつわる三つの掌篇(真藤順丈)
 母親譲りの放浪……何処かに定住することの出来ぬ血を意識する娘(『ⅰ.血の潮』)、幼いころから信じ続けたサンタクロースの姿を極地に求めた学者(『ⅱ.サンタクロース・イズ・リアル』)、大道芸人と炭団売りの娘の別離と意外な再会(『ⅲ.恋する影法師』)、3話のオムニバス。
―雰囲気の全く異なる3話。ⅱがユーモアに溢れている分大震災を絡めたⅰ、原爆を絡めたⅲの何とも重い読後感がより残る。
・いつか聴こえなくなる唄(平山夢明)
 ある惑星。人間は家畜としてある生物ノックスを使役していた。農場で多くのノックスを管理する父親を持つ少年はある日、ノックスの雌の子供を偶然助けるが。
―このモチーフは監修者の解説にもある通り、多分に現代もなお人類に巣食う宿痾なんだろう。後半の畳み掛ける展開に筆者らしくない違和感を覚えて(以下略
・化石屋少女と夜の影(上田早夕里)
 異形の博物学や化石が教養として根付いた世界。海辺の町で化石屋を営む少女紗奈は、浜辺で梨々子と名乗る見慣れぬ中年女性から声をかけられる。
―ふと、今年のノーベル化学賞を受賞した二人の女性科学者が思い浮かんだ。二人の女性ということ以外全く関連はないのだけれども。時を超える友情か歴史を捻じ曲げる我儘か。
・無名指の名前(加門七海)
 少女はメモに書かれた『製作所』を探す。双子の妹の≪指≫に合うドレスを仕立てるために。
―双子の少女達の罪と罰、なのか。
・魅惑の民(菊地秀行)
 地下室で繰り広げられる異様な見世物。観衆の中にFと呼ばれる男がいた。
―史上に悪名高いあの帝国を模した(人名も全てイニシャル)一篇に思えるが、その本質は……史実に於いて約80年前に犯された悍ましく愚かな凶行が、この現代でもまた繰り返され兼ねないことに対しての、著者の危機感の表れなのか。
・再会(井上雅彦)
 ハロウィーンの夜、車のハンドルを握る男。約束を果たすために。
―モード言語としての『ダーク・ロマンス』からインスパイアされたという、監修者の作品が掉尾を飾る。煌びやかなイメージとガジェットの羅列は正直なところ上滑りしている感も失礼ながら無きにしも非ず、だが《異形コレクション》三度目の復活を祝うイルミネーションと考えるなら、これほど相応しい一篇もないかもしれない。


 Twitterで「9年の飢えを充たすべくゆっくり堪能したい」なんて呟いてしまったが、期待値を数倍超えるような満足感だった。特に冒頭からの5、6篇はこういうのが読みたかった!と自分のツボにびしりとハマってくれるような作品ばかりで、読者以上に執筆された作家さんの方々が今回の復活を喜び、筆を揮ったんではなかろうか、なんてことも思えて来る。

 空白の9年の飢えは充たされた。しかし困ったことがある。
 続刊が早く読みたいという、新たで懐かしい飢餓感を覚えてしまったこと。

 幸いなことに来月に復刊第2巻(書物がテーマとか)が早くも予告されている。
 復活の宴はまだ続くのだ。

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「M.R.ジェィムズ怪談全集〈2〉」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 近代英国怪奇小説の三巨匠の一人、ジェイムズの怪談全集(分冊の第2巻)

「M.R.ジェィムズ怪談全集〈2〉」編訳)紀田順一郎(創元推理文庫)

◆内容紹介(裏表紙から)
M.R.ジェイムズの怪談に描かれる恐怖はいずれも鮮烈で、幽霊や妖怪はその手で触れてきそうなほどになまなましい。第2巻には、古書市で競り落とした日記が招く恐怖を描く傑作「ポインター氏の日記帳」、現実の事件を暗示する人形劇の悪夢「失踪綺譚」など後期の作品に、本邦初訳の未刊作品を加え、21篇を収録。どうぞ枕頭に備え、眠れぬ夜には恐怖を心ゆくまでお愉しみあれ。


 7月に読了した第1巻と併せた創元版の2冊が、著者存命中(1931)に出版された1冊版全集を新たに訳したもので、今回の第2巻は後期の短編集『痩せこけた幽霊』『猟奇への戒め』の2冊に、拾遺編、そして原本に未収録のもの、後に遺稿が発見されたもの等6編らが収録されている。


痩せこけた幽霊
ホイットミンスター寺院の僧房
 僧房に転居してきたオールディス博士とその姪。それから間もなく、博士は寝室で異様なことが起こるのに気付く。それは100年以上前にその僧房で起きた悲劇に起因していた。2部構成的な短篇。前半に登場する少年が何とも薄気味悪い
ポインター氏の日記帳
 地誌研究のため古書市で入手した古い日誌。その中に留めてあった布の端切れを元にカーテンを作ったことで起こる怪異。日誌そのものでなく、それに挿まれた布地が怪異を招くのが面白い。『怪奇小説傑作集1』(創元推理文庫)にも収録されているが、ラストは平井呈一の訳文よりこちらの方がわかりやすい
寺院史夜話
 中世の教会内に置かれた墓碑にまつわる因縁話
失踪綺譚
 伯父が失踪したことを伝える女性の数通の手紙。女性は残酷な人形劇の奇妙な夢を見たことを記していたが……。人形劇と(物語中で)実際に起きた事件との関連が今一つわかり難い
二人の医師
 二人の医師の相次ぐ奇妙な死にまつわる話。解説にある通り、語られるべきものが(意図的にか)かなり抜けているようで、これも今一つわかり難い

猟奇への戒め
呪われた人形の家
 デイレット氏が骨董商から購入したゴシック趣味のドールハウス。彼はその夜、忌まわしい過去の再現をミニチュアの人形たちが演じるのを目撃する。著者自身が「銅版画」(全集1収録)との類似を述べているが、映像ではなく人形たちが過去を演じるというのが面白い
おかしな祈祷書
 何度閉じて覆いを掛けても同じ詩篇の箇所で開かれてしまうという礼拝堂の祈祷書。ひょんなことからそれを目にしたディヴィッドスン氏は、祈祷書にまつわることを調べて礼拝堂を再訪するが、祈祷書は全てすり替えられていた。因縁がまつわる書物というジェイムズ作品の定番モチーフに、それが誰かによってすり替えられていたというミステリ的要素が加わっているのが興味深い……のだが、謎解きやすり替えた犯人との対決みたいなものがなく、何ともあっさり終わってしまったのが少々物足りない
隣の境界線
「私」は友人の地所内のある丘で生身の人間のものとは思えぬ恐ろしい叫び声を耳にする。その丘はかつて友人の父親の指示で森が切り払われており、その森は付近の住民も避ける言い伝えがあった。曰く付きの森というモチーフに実際の訴訟事件を素材として絡めているが……怪異の原因がえ?これですか?という感じ
丘からの眺め
 変わり者の好古家でもあった時計屋が作ったという双眼鏡。それを覗くと実際には見えない、何とも忌まわしい景色が見えるのだった。古の呪物ではなく、変人が作った悍ましい器物。いやホント悍ましい。
猟奇への戒め
 友人とのイングランドの東海岸への旅先で遭遇した神経質そうな若い男性。彼は伝説にある宝冠を発見してしまったが、それを何とか元の場所に返したいのだと語る。執筆は1925年だが、その3年前にツタンカーメン王の墓が発見され、その発掘に携わった人間が次々に亡くなる……いわゆる「王家の呪い」が流布(実際は殆どが誇張とでたらめだが)された頃なので、それがヒントになってたのかもと勝手な邪推
一夕の団欒
 おばあさんが孫たちに語って聞かせる、近所のある小径で黒苺を摘んではいけない理由。
【ネタバレ】悪魔崇拝をしていた者たちが陰惨な死を遂げたとなれば、忌まれた土地になるのは当然か

拾遺編
ある男がお墓のそばに住んでいました
 シェークスピア作品の一節を元にジェイムズが書き上げた墓泥棒が報いを受ける話。古典的な怪談の語りのオチの付け方は古今変わらぬようで。
 旅先の居心地のいい宿には、しかし一部屋開かずの部屋があった。好奇心に駆られたトムソン氏は、手持ちの鍵でその部屋の中を入ることを試みるが……。好奇心は猫をも殺す。いや、いくら「開かずの部屋」でもそんなもん置いてちゃいかんでしょ。ラストは「笛吹かば現れん」と同じパターン。
真夜中の校庭
 真夜中の散歩中だった「私」と梟の奇妙な語らい。著者の母校であり校長として勤務したイートン校の風景が描かれたファンタジー風掌編
むせび泣く泉
「泉に近付くな」という老人の忠告に逆らった札付きの不良学生とその仲間に起こった惨劇。ジェイムズによる吸血鬼ものの変奏とも言えるか。冒頭でこの不良生徒と容姿のよく似た優等生が登場するのだが、そこから読むとポー「ウィリアム・ウィルソン」的な話になるかと予測したのだがそうはならず。その点や楽屋落ちが多いのも、元々キャンプで学生向けに朗読するため書かれたもの(解説より)だからか。
私が書こうと思っている話
 タイトル通り著者による創作ノートのようなもので、文中のアイデアの2つが作品化(後段の「フェスタントンの魔女」「暗合の糸」)されているという。最後が少々メタフィクション風になっているのは著者の遊びゴコロだろう。

未刊作品
小窓から覗く
 少年時代を過ごした牧師館の庭。猟園とを隔てる植込みの木戸越しに佇む不気味な人物の夢に何度もうなされていたが―。遺作であり、未定稿だったものが活字になったものとのこと
死人を招く―大晦日の怪談
 大地主が急死した。遺体は納骨堂に安置せず、棺桶も使わずに墓地の北側にすぐに埋葬するように―というのが故人の奇妙な遺言だったが。原題 The Experiment は降霊術を意味するものだそうで、察しのいい読者はそれで予想がつくのかも
無生物の殺意
 バートン氏は朝から些細な失敗続きで機嫌が悪かった。彼と長年仲違いをしていた人物の死亡記事が新聞に出ていても気分は晴れず、友人に誘われて散歩に出てもついてないことばかりだった。タイトルの"無生物"は正確には"人間以外"ということだろう。序盤に譬えとして書かれた昔話は日本の「猿蟹合戦」を思い出すが、これは明確な復讐譚であるのに対し、あちらのは不条理極まりない話であるのも妙に面白い

 ここからの三作は大学図書館に埋もれていた草稿をジェイムズ研究家が発掘、遺族の承諾を得て公開した作品とのこと。
フェスタントンの魔女
 18世紀初期のケンブリッジ大学。密かに黒魔術に傾倒していた2人の研究生が、前日に処刑され埋葬された魔女の遺体を手に入れようとし―。先述の「私が書こうと思っている話」中のアイデアの一つ。当時の大学の史実も取り入れているとのこと
暗合の糸
「奇妙な偶然」がテーマ。ラストで記された落丁の意味するものは……?
キングス・カレッジ礼拝堂の一夜
 大学礼拝堂のステンドグラスに描かれた(聖書中の)人物たちが真夜中に生き生きと動き出す―というファンタジー。聖書の知識があるとより楽しめるのだろう

〈1〉に収録された作品と比較すると、後年の作品であること、さらに未定稿だったもの等が混じっているためかやや散漫だったり、あるいはわかり難かったり辻褄が合わないような印象の作品もある。一方で「私が書こうと思っている話」は怪談の書き手としての著者の顔が垣間見えて面白いし、「真夜中の校庭」「キングス・カレッジ礼拝堂の一夜」は、従来の怪談のイメージとは異なったジェイムズ作品として、これまた興味深い。




 ジェイムズの全集は光文社古典新訳文庫で出たばっかりですけど、せっかくだしこちらも2冊揃って復刊させませんか、東京創元社さん。


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「小説現代」2020年9月号 [Book - Horror/SF/Mystery]

 真夏の怪談特集「超怖い物件」。
「小説現代」2020年9月号(講談社刊)

◆内容紹介
[特集]真夏の夜の悪夢 超怖い物件――そこに住んではイケない。
「こんな話は、頭で考えても作れない」執筆者の一人はこう語る―。土地に張り付いた怨念は消えない。実話怪談の怖さを味わえる最恐の十編。
大島てる 「倒福」/福澤徹三 「旧居の記憶」/糸柳寿昭 「あつまれ 怪談の日記」/宇佐美まこと 「氷室」/花房観音 「たかむらの家」/神永学 「妹の部屋」/澤村伊智 「笛を吹く家」/黒木あるじ 「牢家」/郷内心瞳 「トガハラミ」/平山夢明 「ろろるいの家」
・その他(略)

 ジャンル専門誌である二誌(『NightlLamd Quarterly』『幻想と怪奇』)を除くと、この手の小説誌を購入することはー今回のような怪談・ホラー特集以外はーほとんどない。が、今回はTwitterのタイムラインで流れて来たのを見て「おっ、これは!」……ということで、発売日の8/21に早速購入してきた。

 事故物件に住んだ芸人の体験談を基にしたホラー映画が公開され、同テーマのホラーアンソロジーが話題になったりと、ある意味では今夏の怪談・ホラーのトレンドにもなっていた「物件」ホラー。住む場所というものはどんな人間にとっても、どんな形であれ何らかの関りがあり、記憶があるものだから、そこに起こる怪異や恐怖、不思議な体験もまた身近に感じられるんだろう。もちろん、近年何かと話題に上る事故物件公示サイトの存在も大きいのだろうが(その管理人が今回寄稿している)。

 今号はこのテーマで10篇掲載。併せてシンガーソング・ライターの大塚愛による小説家デビュー作、しかもホラー短篇が掲載されているということで、こちらも。

倒福(大島てる) 
 2017年4月に起こった「大島てる」管理人殺害予告の脅迫事件。半年後に犯人は逮捕、罰金刑を受けている。その犯人の父親から管理人宛に届いた手紙の文面-という体裁。この事件や経緯は実話だが、この手紙に書かれていることは全て本当に犯人の父親が書いたのか、それとも実話に創作が混じっているのか……。

旧居の記憶(福澤徹三) 
 著者が幼い頃に両親、祖母と共に暮らした家と、家族の記憶。そこに(次に掲載されている)糸柳寿昭ら「怪談社」と共同執筆する『忌み地』の取材の模様が交互に挿入される。明るいばかりでない、暗く湿り気と黴臭さの混じる、それでいて仄暗い懐かしさを覚える記憶の中の「昭和」。

あつまれ 怪談の日記(糸柳寿昭) 
 6月に刊行された『忌み地 弐 怪談社奇聞録』(講談社文庫)の取材メモ。「本誌の掲載にあたっていくらか手を加えたが、大筋は原文と変わりない。」と本文にあるが……最後はある意味で予想を裏切らない。

氷室(宇佐美まこと )
 縁もゆかりもない瀬戸内海の寂れた港町に移住した主人公。この町出身の女性が町おこしとして空き家と移住希望者をつなぐプロジェクトを立ち上げ、その伝手で移ってきたのだった。元は船具屋だったという、彼が買った古民家の土間には床下には氷室があり……。地方の自治体では過疎が進み空き家が増えている、というのも現代らしい問題だった。

たかむらの家(花房観音)
 兄の再婚相手は私より若い「年下の義姉」だった。私の実家でもある、夫と二人で暮らすその家を、彼女は「こわいんです」と言う……。タイトルの"たかむら"が序盤過ぎで明らかになるが、それを知っている読者なら展開や結末も察しが付くかもしれない。この著者の短篇を久しぶりに読んだが、こういう話を書く人だったな、と。

妹の部屋(神永学)
 三ヶ月前に自殺した妹。死んだ場所が部屋ではなかったため事故物件にはならなかったが、解約し空にしたはずの部屋が妙なことになっている―と不動産会社の担当が連絡をしてきた。とりあえず家族が怖い。おかしいのは○○じゃなく……というパターンと思わせて意外なオチが。でもかなりの荒業。

笛を吹く家(澤村伊智) 
 親子三人での散歩の途中に見つけた家は「幽霊屋敷」との息子の言葉通りの家だった。夫婦はそれぞれ「笛吹」と表札のかかるその家が気にかかり始め、その家の事情を調べ始めるが。序盤から暗示される親子の歪さの輪郭がはっきりする時、タイトルや表札の意味が明らかになる。奇しくも今号の別の収録作の語り手の心境とシンクロしているような。

牢家(黒木あるじ) 
 東北のある山村。数十年を隔てて同地域で起こった三つの未解決事件。地域プロデューサーなる男を案内して共に現地に向かったフリーライターは、〈牢家〉という言葉を彼から聞く。怪談というよりは王道の和風怪物ホラー。

トガハラミ(郷内心瞳)
 魔物に取り憑かれ、恋人の肉を喰らって蔵に幽閉された姉。夜毎に果物を持ってこっそり姉を訪れる妹。妹にとっては姉は憧れであり唯一の相談相手だった。吸血鬼譚の変奏ものかと思いきや……。

ろろるいの家(平山夢明) 
 かつて実話怪談の取材をし、雑誌の掲載直前になって取材相手の女性と音信不通となったためボツになったある話。彼女から約10年ぶりに突然入った電話。お蔵入りになっていた話を掲載して欲しいという。それは彼女が学生時代、家庭教師のバイト先で体験した異様な話だった。平山氏の実話怪談を読むのは久しぶり。相変わらずの乾いた狂気とえげつなさ。下衆の勘繰りかもしれんが『残穢』から影響されてない?

開けちゃいけないんだよ(大塚 愛) 
 10歳のさゆりは夏になると祖母が独居する洋館に泊まりに行く。祖母も、その家も大好きだったが、その家には地下室があり、そこに置かれたアルミシートの大きな包みを除いて。中身を祖母に尋ねても教えてはくれず「開けちゃいけないんだよ」というだけだった。
 シンガーソングライター、大塚愛の小説家デビュー作(絵本は既に2冊上梓しているらしい)。この作品の前にインタビューも掲載されていたが、記憶にある彼女の曲とは(そもそも1、2曲の印象しかない)全く異なるイメージに少々驚かされた。作品自体は……うーん、その前の10篇と比較してしまうと、こちらはプロット、特に文章がWeb小説、あるいはかつてのケータイ小説みたいだなぁと。

 雑誌の特集というより、何やら書き下ろしアンソロジーを1冊読んだような満足感。この感じはかつてメディアファクトリー(後に角川文庫)で刊行されていた『怪談実話系』シリーズの感覚に似ている。もしあのシリーズが続いていて、今回のような「超怖い物件」がテーマだったとしたなら、こういう内容になったんじゃないだろうか、とも思ったり。何より、福澤徹三氏と平山夢明氏、両氏の書き下ろし怪談が久々に同時に読めるのがウレシイ。


 他の特集、ドラマの原作連載等はとりあえず保留。気が向いた時に読んでみようか。


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「怪獣生物学入門」 [Book - Public]

 テレビや映画の世界に登場する怪獣、モンスターを、形態進化生物学者が生物学的に大真面目に考察した1冊。

 ※4月読了、Twitterに投稿したものを再構成しています。

「怪獣生物学入門」倉谷滋著(インターナショナル新書刊)

◆内容紹介(表紙見返しから)
ゴジラ、ガメラ、マタンゴ、ドゴラ、『寄生獣』のパラサイトなどなど、怪獣たちは日本のSFを牽引し、最近では海外での評価も高まっている。その一方で、怪獣たちは荒唐無稽な作り物のように思われてはいないか。怪獣とはどのような生物なのか?その形態や劇中の設定、登場人物たちの台詞などを手がかりに、生物学的な視点で徹底的に考察していく。そこから見えてきたのは、科学とSFを繋ぐ新たな発見だった。


 怪獣を生物学的視点から考察する―というと、20年以上前にブームにもなった『空想科学読本』を想起しそうだが、こちらはガチの形態進化生物学者が怪獣映画への偏愛っぷりも込めて真面目に論じた1冊。

 恐竜と怪獣の違いは何か、ゴジラに通常兵器が無効な理由、ゴジラの生息場所と"地球空洞説"、シン・ゴジラの乱杭歯の理由、キングギドラの形態学といった話から、映画『マタンゴ』に登場するキノコ化した人間であるマタンゴ、『寄生獣』のミギー、東宝映画の宇宙怪獣ドゴラ(これ、ドイル『大空の恐怖』じゃないの!と思ったら言及されてた)といったものまで幅広く俎上に上げられている。

 怪獣映画で時折論じられる「スケール問題(あれだけ巨大化した生物は自重に耐えられず崩壊するという論)」については「進化の厳密なルール下にある生物が、環境や生体としてのキャパを無視して巨大化方向へ進化することはあり得ない」と断じ、怪獣映画にスケール問題を持ち出すこと自体の矛盾を指摘している点は面白い……が、山本弘のSF小説 『MM9』(創元SF文庫)シリーズで―作品世界において怪獣が出現する根拠としてー言及された"多重人間原理"についても触れてみてくれたらより面白かった、と思うのは欲張り過ぎか。

 終章はウルトラ怪獣から4つほど採り上げているが、この辺はちょっと駆け足気味かつ蛇足気味だったような気がしないでもない。

 何れにせよこういう、怪獣やモンスターといったホラ話を、形態進化生物学という学問に基づいて大真面目に考察するというのは、これも一つの知の遊戯という感じがしていて面白い。これは単に現実的には存在し得ない、荒唐無稽っぷりをあからさまに批判することを目的としたのではなく、著者本人がそういった存在が好きだったからこそ、怪獣への愛着がしっかりと現れているためだろう。



 ちなみに映画「シン・ゴジラ」、まだ観ていない(観るのか?

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