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「ドイツ怪談集」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 1980年代後半に河出文庫から刊行されていたものの復刊版。18世紀末のドイツ・ロマン派から近現代まで幅広く収録されている。


「ドイツ怪談集」編)種村季弘(河出文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)

知らない男が写りこんだ家族写真、窓辺に女が立つ廃屋の秘密、死んだ人間が歩き回る村、死の気配に覆われた宿屋……。ホフマン「廃屋」、マイリンク「こおろぎ遊び」、ヤーン「庭男」など、黒死病の記憶のいまだ失せぬドイツで紡がれた、短編の名手たちによる恐るべき悪夢の数々。種村季弘の選が冴えわたる、傑作怪談アンソロジー!

 ドイツの怪奇幻想小説というと、ただでさえ読書傾向が酷く偏っている自分にはどうも具体的なイメージが湧いてこない。最も基本といえる『怪奇小説傑作集5<ドイツ・ロシア編> (創元推理文庫)』は相当前に読んでいるけれど、これまた定番中の定番、エーベルス「蜘蛛」くらいしか印象に残っていないという……どうやらドイツ文学は自分の嗜好にはイマイチ合っていないのかも知れぬ(ビールとソーセージは大好物だけど)。

 以下、収録作品について短い感想。
ロカルノの女乞食(H.V.クライスト):短く簡潔であるが故に定番となったのか
廃屋(E.T.A.ホフマン):定番の幽霊屋敷ものと思いきや……不気味な老管理人に狂った老女にジプシーとなかなか詰め込まれてる
金髪のエックベルト(L.ティーク):収録作中最古(18C末)で中盤までは御伽噺的ながら、ラストの展開は多分に現代的ですらある
オルラッハの娘(J.ケルナー):19C当時ながら精神病理に明るい著者が書いた"霊憑り"の話。実際現代においてもキリスト教―就中カトリックの"悪魔祓い"は精神病理と密接に関わっているようで。
幽霊船の話(W.ハウフ):遭難者が命からがら乗り込んだのは呪われた海賊たちの船だった―アラビアン・ナイト的エキゾチックな一篇
奇妙な幽霊物語(J.P..ヘーベル):幽霊が住まうと噂される城に潜んでいたのは。ユニークだけど怪談ではない、ね
騎士バッソンピエールの奇妙な冒険(H.V.ホーフマンスタール):騎士と小間物屋の若女房との一夜のアバンチュールとその顛末。
こおろぎ遊び(G.マイリンク):チベットの悪魔司祭がドイツの研究員に見せた魔術。虫の大群が演じる狂態はそのまま第一次世界大戦のメタファーなのだろう
カディスのカーニヴァル(H.H.エーヴェルス):カーニバルの喧騒の中に現れた1本の木の幹。因果も真相も語られずに残る不条理感は「奇妙な味」と言える。収録作では最も気に入った一篇
死の舞踏(K.H.シュトローブル):恋人を喪った医学生が謝肉祭の祝宴で出会った仮装の女性。ラストシーンの印象が強烈だが、今後リストの「死の舞踏」を聴くとこの描写が甦ってきそうな
ハーシェルと幽霊(A.シェッファー):う、うーん……「何だったの?」としか
庭男(H.H.ヤーン):ヤーンの短編集『十三の不気味な物語』は昔読んでいるが、当時も馴染めなかったし、今回も同じく。フォークロアの衣を借りた不条理もの、なのか。
三位一体亭(O.パニッツァ):行き交う旅人に教えられた宿に住まう異様な家族。豚小屋から聞こえる不気味な笑い声、一夜が明け、近所の職人が教えてくれたその家の「呼び名」……終始異様な雰囲気だが、同様の筋立てでも英国ならこうはならないだろう、というのがドイツ的なのか
怪談(M.L.カシュニッツ):オーストリア人夫妻が旅先のロンドンで出会った兄妹。夫は母国で見かけた記憶があるというが……。タイトル通り、収録作では最も"怪談"らしい怪談。
ものいう髑髏(H.マイヤー):時折「お告げ」を口にするという偉人のしゃれこうべの謎を巡るややブラックなコメディ。60年代末の作品だけあって、現代的なシニカルさが効いている
写真(F.ホーラー):時間を超えて家族写真に姿を現す謎の男性。単純に考えればその正体は○○であろうが、そうでもないようで……。モダンホラーというより、多分に(本邦の)"耳袋"風に感じられた
 イギリスやアメリカの古典怪奇小説の味わいとも、それらの作品に漂う闇や暗さとは異なる鈍重な雰囲気が収録作を通じて覆う。それが大陸的な陰鬱さというものなんだろうか。


 ……なーんてわかった風な結論で締め括ってみたりしたりして。

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