「居心地の悪い部屋」 [Book - Horror/SF/Mystery]
「昔から、うっすら不安な気持ちになる小説が好きだった」 訳者による、読後に居心地の悪さを味わう12篇を収録したアンソロジー。
◎「居心地の悪い部屋」 編訳)岸本佐知子(河出文庫刊)
◆内容紹介(裏表紙から)
まぶたを縫い合わせた時点で手順を忘れた二人を描くB・エヴンソン「ヘベはジャリを殺す」。二の腕の紋章のようなものの記憶をめぐるA・カヴァン「あざ」。その他、J・C・オーツ、K・カルファスなど短篇の名手たちによる12の物語。妄想、悪夢、恐怖、幻想、不安など、「もう二度と元の世界には帰れないような気がする」(本書「編訳者あとがき」)短篇アンソロジー。
後味悪い系、厭な話系を予想していたんだが、いわゆる奇想小説がほとんど。
収録作では最もホラーよりな「ささやき」とか、読んでいて厭な汗が出てくるサスペンス系の「潜水夫」などもあるが、大半はなんと理解したらいいか、みたいな。収録作品の中に、唯一既読作のあるジョイス・キャロル・オーツのものがあったところから、全体の感じは予想できたことか。
全12篇と一行感想。
- ヘベはジャリを殺す (B・エヴンソン)
まぶたを縫い終えて始まり、まぶたを縫う描写で終わる二人の男の話。 - チャメトラ (L・A・ウレア)
傷口から零れ落ちる夢、ラテンアメリカ風極彩色の悪夢。 - あざ (A・カヴァン)
異国で目にした異様な光景で甦る、学友の二の腕のあざの記憶。 - どう眠った? (P・グレノン)
建物のように眠る二人の会話。何の隠喩(メタファー)? - 父、まばたきもせず (B・エヴンソン)
病気の娘が、ぬかるみの中に倒れて死んでいるのを見つけた父親は……。 - 分身 (R・デュコーネイ)
グロテスクでエロティックな掌編。プラナリアかっ? - オリエンテーション (D・オロズコ)
高度に管理化された組織の戯画化、なんていうのは野暮の極みか。 - 潜水夫 (L・ロビンソン)
主人公と野卑な潜水夫のやり取りが不安を誘う、収録作中最もサスペンスフルな一篇。 - やあ!やってるかい! (J・C・オーツ)
8ページにわたる全編が一文で書かれている。あぁ、オーツってこういう感じだわ。 - ささやき (R・ヴクサヴィッチ)
独り寝の部屋に他人の会話の声が混じる。収録作中最もホラー風味なのがこれだが、最後の一行で……。 - ケーキ (S・レヴィーン)
これも現代文学、ってやつなんだろうか。わけわからん、の一言に尽きる。 - 喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ (K・カルファス)
(架空の)数々のMLB珍記録にまつわるエッセー……の体裁を取った幻想短編。
何れにせよ、自分にとってはあまり好みでなかったというか、なんとも「居心地の悪い」……まさにタイトル通りの読後感になってしまった。
ハードカバー時代に見つけて文庫化を心待ちにしていたくらい、期待度が大きかっただけに、少々残念、ではある(Webでのレビューではかなり好評なようなものが多いのが、また(-_-;))。
こういうのが好きな人にはたまらない一冊だろうし、編訳者である岸本女史の選定眼にブレがないということも確かだろう―と、フォローにもならない取って付けたような一言を添えておく。
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