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最近読んだ実話怪談本×4冊 [Book - Horror/SF/Mystery]

 気付けばこのところ実話怪談本を濫読気味だったので、印象が薄れる前に4冊分まとめて。
 その手のものは苦手な方はスルーして下さい。ホントにすみません[あせあせ(飛び散る汗)]

「怪談恐山」高田公太著(竹書房文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
あの世にもっとも近い場所、恐山。日本最大の霊場に纏わる戦慄譚を、恐山を知り抜いた青森県出身の著者が渾身の取材で書き下ろす実話怪談集。娘の誕生日に貰った風車、その日から家族の様子が…「いざ、最悪のほうへ」、赤い馬を見ると死ぬ、祟られた一族の顛末…「天馬よ昇れ」、家中が水浸しになる謎の濡れ部屋…「真相究明」ほか、恐山怪談以外にも味わい深い、極限の35話!

 タイトル、それに社員旅行で恐山の禁忌を犯した客が招いた結末「貸し切りバス」が冒頭に来ることで、収録の話がみな恐山絡みか、少なくとも青森県にまつわる話を集めたものかと思いきや、実際はそういうわけでもない。当初はそのような構成にするつもりだったと「あとがき」にはあるが、何篇おきかに恐山絡みの話が挿まれるので、むしろ効果的なのかもしれない。
 印象に残ったのは……

  • 葬式帰り、レストランで酔い潰れ、目を覚ました男がいた意想外な場所「どこと?」
  • 実家の中で時々落ちているもの「誰のものとも知れず」
  • レストラン客の落とし物を拾った翌日から、店長に起こった奇妙な変化「分からん」
  • ある新入社員が配属された風変わりな営業所と、不可解な仕事「新人」
  • ある会社社長の娘の誕生日に送られてきていた”あるもの”……「いざ、最悪のほうへ」など。

  特に「いざ、最悪のほうへ」の何とも言えない怖さは、こういう恐山絡みの怪談を期待していた―といったらバチが当たるだろうか。 

 

「厭魂」つくね乱蔵著(竹書房文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
生きるも地獄、死ぬるも地獄……。
人間の心の闇、業の深さが招く、とんでもなく厭な話、怖い話。見ると祟られる山神様の祭り…「閲覧注意」、死んだ母が迎えに来る…「一晩だけの勇気」、水死体の下にあった砂を持ち帰った男は…「不純な動機」、孤独な新米母にできた初めての親友…「公園友達」ほか、厭系怪談の妙手が聞き集めた、生者と死者が呪い合う凄絶なる実話、全31話!

 読んでみたい気持ちはありながら、書店で見つけても何となく購入が躊躇われていたのだけれども……。タイトル、そして既読の「FKB 怪談五色2 忌式」などで強烈な印象が残ったこの著者の作品イメージそのままに厭な読後感。心霊や不可解な現象よりも、それに関わった生身の人間の、ささやかながら剥き出しの悪意を最後にこちらに放り投げるように提示してくるというか。例えば「我が家」を読むと、知人の善意というものを無条件に信じられなくなるかも。それらの悪意の殆どは、保身や我が身可愛さといった正直な感情から来るものであったり、あるいは長年の憤懣や鬱積の意趣返しの現れだったりするのだが、中には理不尽極まりないもののあるわけで。
 また、よくある実話怪談のパターンで終わるかと思いきや、強烈に厭なオチが待っている話も少なくないので油断ができない

  • 死後もなお飼い主の娘を守っていた忠犬の話……のはずが「そばにいるよ」
  • 蒐集癖のあった祖父のコレクションの中にあったもの「遺品整理」
  • 病死した母親が連れて行こうとする娘二人を守ろうとした夫婦と、その後日談「一晩だけの勇気」
  • 幽霊屋敷として有名な家がその町内に存在し続ける理由「自己責任」
    などはそれに当たる。

 中でも、ラストの「悲願達成」は、正直かすかな吐き気を覚えるほどに厭な話。こればかりは全くの創作であって欲しいと思うのだが……少なくともここに登場するような家族は実際に、しかも世の中にはいくつもあるのかもしれない。

 

「山の霊異記 幻惑の尾根」安曇潤平著(角川文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
冬の閉ざされた山小屋の一室で毎年起きる怪異とその顛末に戦慄する「五号室」、キノコ狩りに夢中になるうちに道に迷った男が寂れたゲレンデ跡で遭遇した恐怖を描く「リフト」、仲睦まじく登山道を歩く母娘に呼びかける父親の声の正体が切ない「呼ぶ声」等、20話を収録。山をこよなく愛し、数々の山に登り続けている著者が訊き集めた話を、臨場感たっぷりに綴る。登山者を異界へと導く、山の霊気に満ちた山岳怪談集。 解説・星野潔

 安曇潤平の山岳実話怪談集。「赤いヤッケの男」「黒い遭難碑」に続く、≪山の霊異記≫シリーズの第3弾。
 面白いことは面白いし、山ならではの怪談として楽しめるのだが、巻を重ねる毎に創作怪談色が増していってるのは気にならないでもないし、各話前半の山行の描写がちと多過ぎて冗長な感もあり。とはいえ、純粋に「怖い話」の続く中に、「不思議だけれどいい話(泣かせる話)」や「ファンタジー色の強い幻想譚」が織り交ぜられて、いい塩梅になっている。
 前者では、理由も何も不明なままだが怖い「五号室」「異臭」「豹変の山」、ダメ押しがズルい「古の道」など。後者なら、山に消えた者の遺された家族への思いを描いた「呼ぶ声」「息子」、亡き先達への畏敬が起こした不思議な邂逅「終焉の山」などか。
 正直、実話怪談として読むならややフィクション色が強いようにも思えるが(幽霊がどれも実体感あり過ぎだろ!とか)、山という異界なら、あるいはそういうこともあるのかもしれない……とも思えてくる。

 実はこれ、単行本で出ている「ヒュッテは夜嗤う 山の霊異記」(幽BOOKS)の文庫化なのだが、なぜ前2冊とは異なりタイトルを変え、しかも角川ホラー文庫でなく、”角川文庫"で出たんだろう?
 その辺りの切り分けが今以てよくわからん。

 

「怖の日常」福澤徹三著(角川ホラー文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
ひとり暮らしの部屋で、深夜パソコンに向かっていると背後から聞こえる奇妙な音…その正体に震撼する「カタカタ」。朝起きるたび、数が増え深くなっていく引っ掻き傷に、じわじわと追いつめられていく「傷」。実在の事故物件をめぐる、不穏なシンクロニシティ。併せて読むと怖さが倍増の「残穢の震源から」「三つの事故物件」等、全62話を収録。日常に潜む忌まわしさと恐怖を端正な筆致で炙り出す、正統派の怪談実話集。

 言うなればここ数年、各出版社から濫造気味な実話怪談集……ではあるのだが、著者既刊の「黒い百物語」や、昨今の竹書房文庫系の怨念とか呪いとか禁忌とか、そういった解り易い(というと語弊があるか)怖さの怪談というよりは、心霊譚とは言い切れないまでも、不可解というか不可思議な体験談の聞き書き集といったところで、小野不由美「鬼談百景」にやや近いテイストかもしれない。一篇辺りがどれも短いということもあるのだが。
 巻末収録の「残穢の震源から」は小野不由美「残穢」のクライマックスに関わってくる内容でもある(なんせその作品に実名で登場するわけだからw)。また「三つの事故物件」は、著者本人の話でもあるのだが……本編よりもこの2篇の方がぞわっとさせられる。 

 さすがに4冊続けて読んだわけではないのだけれど、あまり間を空けずに読むと怖さの感じ方が鈍くなってくるというか、不感症気味になってきそうな気も。
 怪談ジャンキー、なんていうほどじゃないとは思うが、精神的にも少々よろしくないのかも……。

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