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「茶碗の中の宇宙 ―樂家一子相伝の芸術」展 [Art & Movie]

 昨日は東京国立博物館の「茶の湯」展に行き、その記事をUpしたのだけれども、実はその前日(一昨日)に、この展覧会とセット的に?竹橋の東京国立近代美術館で開催されている樂家の展覧会にも足を運んでいた。

「茶碗の中の宇宙 ―樂家一子相伝の芸術」

 京都での開催は終了したものの、東京では5/21までの開催なので、事前にチケットを購入して時間が空いた際に行くつもりでいた。
 そして一昨日は昼から都内へ出る所用があったのだが、予定の直前になって、先方の突発的な事情によりキャンセルになってしまい、ぽこっと2時間半ほど時間が空いてしまった。そこで思い出したのがこの展覧会。チケットもスマホで表示させるタイプのものだったので、いそいそと東西線に乗って竹橋へ。

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 最近足を運ぶ展覧会は、概ね上野か六本木だったから、近代美術館に来るのはいつ以来だったか……。帰宅後に手持ちの図録やパンフを調べてみたら、8年前('09夏)のゴーギャン展を観に来て以来だった。

 都内に大小含め美術館は数多くあるが、個人的には建物の雰囲気ではここが最も好き。具体的にどこが?と訊かれたら困ってしまうのだがw 一昨年のアレとか昨年のアレとか、六本木よりこっちでやってくれたらよかったのに……なーんて思ってしまうが、ある程度人気と集客が見込めるなら、立地的にもあっちの方が色々と都合がいいんだろうなぁ。 

 自分の浅い知識では、樂焼イコール(初代)長次郎というイメージしかほとんどなく、何を以て”樂焼”とするのかすら知らなかった。

樂焼【Wikipedia】

 東京での開催に先立ち、同展は京都で開催(京都国立近代美術館;'16.12/17~'17.2.12)されていたが、NHK教育の「日曜美術館」で樂焼を採り上げた番組がこの1月に放映されていた。今月初めに、東京での開催に合わせてそれが再放送されていたので、それを視て基礎概念は多少は得られたのだが……。

 入るとまず、長次郎作の二彩獅子がお出迎え。そして初代作の黒、赤の樂茶碗が並ぶのだが―出品リストを見ると、「無一物」や「一文字」、「万代屋黒」といった銘品は今月前半までの展示になっている。なんでー?と、思い出したのが東博の「茶の湯」展。あちらでも初代長次郎の茶碗は主役級のはずだから、あっちに移ってるんだろうな、と納得(実際、この翌日に東博で観ることができた)

 樂家の系図、そして歴代当主の作品が時系列順に展示されていく。現代に続く15代の歴史の中で、千利休に始まり、本阿弥光悦や尾形光琳、乾山兄弟(五代宗入とは従兄弟の関係になる)などの琳派、時の為政者、あるいは時代の変遷の影響を受けながら、各々がどのような個性と作風で”樂焼”を伝承していったのかを観ることができる。そうやって観ていくと、必ずしも初代長次郎茶碗のイメージだけで樂焼を捉えてしまうのが、実はほんの一部でしかないことに気付かされた。
 確かに、初代の作風を頑なに守るだけが伝統ではないわけで、革新性がなければ樂家の”樂焼”はこうも長く続かなかったのだろうな、と。

 後半、というか作品点数でいえば半分以上は、当代(15代)吉左衛門の作品が展示されている。15代の作品は先代(14代)同様に近代芸術の影響が色濃く、アバンギャルドであり原始的荒々しさも持つ、初代の持つ空気とは全く異なるものだが、それもまた”樂焼”なんだろう。
 好きか嫌いかで訊かれたら……ノーコメントw

 図録は購入せず、ポストカードのみ購入して展示室を出た。

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 展示室を出ると撮影スポットがあった。茶室の背景にレプリカの茶碗が置いてあり、これを持ったところを撮影してもらえるらしい。

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 初代長次郎作「万代屋黒」を3Dスキャンし、粘土の主成分であるケイ素(Si)と比重の近いアルミニウム(Al)で削り出して作成したものらしい。が、重さが実物より200g近く重いのだとか。
 せっかくそこまで手の込んだ複製を作るなら、重さもほぼ同じにしてよ~、と思うのはワガママが過ぎるだろうか(^^;)。写しも実際にあるのだから、同じ素材、あるいはセラミックとかで複製を作ることも可能だったんだろうけど、客が手に取るんじゃ万一のこと(手からスルッ、とか)も考えて、割れないようにするしかなかったのかも。
 何れにせよ、200gも違ったら手に取った感触も全くの別物だろうと思ったので、記念撮影はパスw

 時間にも余裕があり、当日券で所蔵作品展(MOMATコレクション)も観られたので、そちらも覗いていく。MOMATってなんじゃいなと思ったが、The National Museum of Modern Art, Tokyoのことなのね。

 本館4階から2階まで3フロアで、明治末~現代アートまでをざーっと観る。それぞれの部屋に何らかのテーマを持って展示されているので、これはこれで面白い。
 4階最上階の南に面した「眺めのよい部屋」は休憩スペース。通りを挟んで皇居、平川濠が一望できる。1週間早ければ、まだ名残の桜が愉しめたのかも。

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 所蔵作品展は基本的に撮影OK(一部作品除く)だったと最後に気付いたwので、1枚だけ記念に。


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「特別展 茶の湯」を観に行く+α [Art & Movie]

 なんの予告もなしに休んでサボってたので、毎度のようにしれっと更新再開しますw
 覗いていただいていた方々、申し訳ありません。

 さて。
 今月から上野、東京国立博物館(平成館)で開催されている「特別展 茶の湯」を観てきた。
 実は先月に、同じく東博で開催されていた「春日大社 千年の至宝」展を会期末間際に観に行っていたが、個人的には期待した割に「……(´・ω・)」だったのだけれど、帰りがけに今回のパンフを見つけて一気にテンションが上がりっぱなし[右斜め上]wで、以来心待ちにしていた。
 いつ行っても混むだろうなとは思っていたが、大名物の国宝「曜変天目(稲葉天目」が期間限定(~5/7まで)で展示されるというのであれば、GWに突入する前の早いうちに行くしかない。
 で、今日は休みを取り、ついでに父が身罷って以来出不精になりがちになっていた母親も連れ出して、午後から上野公園へ。

 神田で中央線から乗り換えようとしたら、人身事故の影響で山手線、京浜東北線とも運転見合わせ(。-`ω-)やむなくメトロ銀座線で上野まで。
 JRならホーム中ほどの階段を上がって公園口改札方面へすぐ出られるのに、慣れない地下鉄駅から行くのでしばし戸惑う+母親の脚力に合わせていたら、時間をロスしてしまい、入館したのは15時半をだいぶ回っていた。

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 全部を具に観ているには時間が足りなそうなので、入口においてある出品目録と、音声ガイド(今回は落語家の春風亭昇太師匠)のプログラムを見比べながら、絞って観ていくことにする。

 茶の湯ということで、最初は室町期、いわゆる"東山御物"からだが……初っ端の牧谿「観音猿鶴図」から見入ってしまう。そして国宝「青磁下蕪花入」、重文「青磁鳳凰耳花入」が並んで展示されたところで脚が止まる。鳳凰耳花入はこの時に一度見ているのだが、この二つを並べて観るとかなり色合いが異なっていることを初めて知る。なにしろ下蕪花入の”青”の美しさと言ったら!青磁といいながらややくすんだ緑がかったようなものが多い中、これがいわゆる”雨過天晴”の色なんじゃないかと。
 ずっと観ていたい思いを振り切って(って大仰なw)次の部屋へ。

 そして、出ました。
 国宝「油滴天目」そして「曜変天目(稲葉天目)」。
 油滴天目は5年前にサントリー美術館で一度観ているが、曜変天目は念願の初ご対面。写真や映像では何度も観てきたが、窯の炎と釉薬の化学反応という偶然が創り出した、虹色に輝く斑文の怖いまでの美しさは……観ていて溜息しか出てこない。「宇宙空間のような」という誰人の評も、さもありなん。
 と同時に、この二つの大名物の造形がまた見事なことを改めて思い知る。バランスを含め一切の破綻がないというか。これが完璧ってことなんじゃなかろうかと思ったり。

 この時点で既にハイテンションを通り越して、半ば熱に浮かされたようになっていたw

 その後は「青磁輪花茶碗 馬蝗絆」等を見入りつつ、次の第二章『侘茶の誕生』→第三章『侘茶の大成ー千利休とその時代』というテーマへ続く。
 二章でも三肩衝の一つ「初花」など、ここでも名前は知っていても初めて実物を拝むものが並ぶが、やはり”茶の湯”といえば千利休。この稀代の傑物(怪物?)の遺した功績は壮大なものであって、それを物語るように、展示される作品の点数も幅も一気に広がりを見せる。茶碗だけに限っても、初代長次郎の黒樂茶碗「ムキ栗」「利休」に「万代屋黒(もずやぐろ)」、赤樂茶碗「無一物」といった、利休の”侘茶”の精神を反映させた樂茶碗、利休亡き後茶道筆頭を務めた古田織部好みの黒織部に伊賀耳付水指「破袋」伊賀花入「生爪」、さらには国宝の志野茶碗「卯花墻」などなど……。「へうげもの」を愛読者の一人として、器とこれらに関わる人物が共に思い出されるので、余計に嬉しくなってしまう。

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 そういえば、古田織部の茶室「燕庵」が会場内に再現されていた。ここは撮影OKだったので(残念ながら、もちろん中には入れず)。

 小堀遠州や松平不昧公好みの茶器、野々村仁清の茶壷などもあって、これらももう少しじっくり観たかったものの、ここでゆっくりしているとショップで買い物する時間もなくなってしまうので、この辺りはやや流し気味に眺めて、閉館5分前にミュージアムショップへ駆け込み、図録等を購入。

 電車に乗る前に、上野駅ecute2Fの「麻布茶房」で一息。
 自分もやはり少々歩き疲れていたのか、滅多に食べないどストレートな甘味をw

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「クリームスイートポテト+黒みつきなこ」+HOTのウーロン茶。

 上に載ったソフトクリームもけっこう濃厚&冷たくて旨い。きなこも黒みつもさほど甘さがくどくなく、下のスイートポテトが温かいので、いっしょに食べるとちょうどいい……んだが、下からの熱でソフトクリームがどんどん溶けていくw
 味、ボリューム、雰囲気共に満足だったんだけど、あとでレシートを見返したら、ドリンクセットのセット料金が一人分余計に入ってた。たった¥200だけども(-_-;)ウーム。

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 今回購入したのは、図録にクリアファイル(A4、A5タイプ各1点)、それにポストカード4枚。なぜ稲葉天目のポストカードが置いてないのだぁ(。-`ω-) 


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 図録の厚さは約3cmとかなりのボリューム。これまで買った展覧会の図録の中で最厚。図版もさることながら、解説やエッセーなど読み応えも相当ありそうな。

 出品目録を見返してみると、今日はまだ展示期間でないものもかなりある。
 今日はやや急ぎ気味での鑑賞となったので、来月後半くらいに再訪して、今度はもう少しゆっくり愉しもうかなと。
 今夏にかけて、その他の上野の美術館でも観てみたいものもあることだし。 


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等伯「松林図屏風」再観 [Art & Movie]

 仕事を午前で切り上げ、上野の東京国立博物館へ。

 国宝「松林図屏風」(長谷川等伯)が、この時期だけ特別公開していると昨年知り、この機会を楽しみに待っていたので。

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「博物館に初もうで」なるイベントが、東博では新年恒例なのだとか。但し、特別展ではない上冬季の営業時間なので、金曜日といえども17時まで。 上野駅を降りたのが15時半近くなので正味1時間半しか見ることが出来なかったが、お目当てはただ一つなのでそれでも間に合うか、と。

 隣の平成館では昨年10月から特別展「始皇帝と大兵馬俑」が開催されているけれど、今回は時間がないのでパス。

 正面の本館に入り、そのまま2階へ。まずは申年に因んだ新春特集展示「猿の楽園」を観る。リーフレットにフィーチャーされている狩野山雪「猿猴図」をはじめ、種々の猿を描いた絵画、工芸等が並ぶ。
 猿を描いた日本画といえば、やはり等伯の「枯木猿猴図」を思い出すのだが、さすがにこちらにも等伯をもってくるわけにはいかないか。

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 とはいえ、狩野山雪の描いた「猿猴図」もなかなかに愛らしい。

『日本美術の流れ』と銘打った常設展示を眺めつつ、国宝室へ。『長谷川等伯展』で観て以来だから、ほぼ6年ぶりに観る「松林図屏風」。

 特別公開の目玉だけあって、やはりこの部屋は他所よりも人が多い。それでもこの六曲一双の屏風に描かれた情景の前で、誰も一様に口を閉じてしばらく見入っているのは、この画が持つ「濃密なまでの静けさ」からなる、凄味のためだろう。 

 自分もまた、半ば悄然として10分ほど見入っていたかもしれない。6年前に比べ、これを描いた等伯の心境をより近く感じられるかもしれない―とも思ったのだが……。むしろ前回よりも、濃い霧の立ち込めるひやりとした空気、松の枝を揺さぶる風の音、松林の遠く向こう、浜に打ち寄せる冬の日本海の荒々しい波の音……そういったものが感じられなかったのは、これも自分の心の在り方故だったのか。否、観る側の感情や心境を絵に忖度させること、それを期待するようなことは……むしろ傲慢だったかもしれない。

 写真撮影は禁じられていなかったので、スマホや携帯を構えて撮影している人も多くいたが、自分はなぜか―撮ってはいけないように思えたので、撮らずに次の部屋へ。

 あとはざっと駆け足で。

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 小堀遠州作の茶杓「埋火(うずみび)」。

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 葛飾北斎「富嶽三十六景」から『神奈川沖浪裏』。
富士山といえば!の『凱風快晴』、それに『山下白雨』との三点が新春特別公開。

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 一休宗純書「松峯」。

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 上から順に、長次郎の黒楽茶碗、銘「尼寺」
 織部角鉢
 鼠志野鶺鴒(せきれい)文鉢

 などなど。

「松林図屏風」も「猿猴図」も、展示は来週月曜(17日)まで。
 もし来年1月も公開されるなら……再び観に行ってみよう。その時はまた違った感じられ方ができるのかもしれない。 

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「うらめしや~、冥途のみやげ 展」(東京藝大美術館) [Art & Movie]

 厳しい暑さが続く7月末の東京。
 高温多湿になればなるほど元気になる、と嘯くほど暑い時季が好きだったのが、この2,3年はやけに暑さがカラダに堪えるようになった。決して年齢のせいだけじゃないと思う、のだが……。

 さて。
 三遊亭円朝(初代)は、幕末~明治に活躍した噺家で、話芸の巧さでは今以て別格とされるほどの名人。円朝はまた、笑いよりも人情噺、そして怪談噺を得意としており、今なお古典怪談の傑作として有名な「牡丹灯籠」  「真景累ヶ淵」などは、円朝が中国の説話や江戸の事件などから想を取り、新作落語の演目としてまとめたもの。

 円朝はまた幽霊画のコレクターでもあり、そのコレクションや遺品が円朝の菩提寺である東京、谷中の全生庵に収められている。そして命日である8月11日を中心に、毎年8月の1か月間はその幽霊画のコレクションが公開されて拝観することが出来る。
 自分も10年以上前に一度観に行ったことがあるが、当時はブログも日記も書いていなかった上、写真も撮っていないのでいつ行ったのかは失念……。

 今年辺り久方ぶりに行ってみようか、と思っていた先月、こんな展覧会が7月下旬から催されることを知った。 

 元々は2011年開催予定だったのが、3月の東日本大震災の影響を鑑みて延期になっていたものだとか。「日本美術史における”うらみ”の表現を辿る」、とはなかなかに凄味のあるものかも?ということで前売券を購入。
 今日、都内に出る所用があったため、その帰りに上野、東京藝術大学大学美術館まで足を伸ばして観に行ってきた。 

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 16時前でやや雲は多かったものの、やはり暑い。
 上野公園の日陰で寝入っている人たちがやけに多かったような……。

 東京都美術館の前を抜けて、東京藝大の前へ。門の横に大きくポスターが。

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 美術館は藝大の正門と道路を挟んで反対側にある。写真右手が入口。上野公園は国立博物館や科学博物館などで何度も来ているけれど、ここはお初。 

 スマホ画面でチケットを提示し、地下2階(!?)の展示室へ。ちょうど16時頃だったが、開館時間が17時までということを知って、やや駆け足気味の鑑賞となってしまった。
 最初に円朝の人となり、それに口座や演芸会の当時のビラなどが展示され、続いて円朝コレクションの幽霊画が広い展示室にぐるり、と。
 当然部屋の照明はやや薄暗く、時折ひゅ~、どろどろどろと何やら効果音らしきものが聴こえてくる(後半の方で講談師、一龍齋貞水による「四谷怪談」の映像が上映されていた)ので、それなりに雰囲気はあるのだが、かつて全生庵のやや狭く古めいた展示室で見た時のような、何とも言い難い感覚はなかったような。あれは寺院の中だったからなのか。

 部屋を移ると、今度は錦絵や近代日本画における”うらみ”の表現の変遷、それを”美”の表現へと昇華させていく流れとなる。応挙や月岡芳年など一部の絵師を除けば、そこに描かれた幽霊はだいぶデフォルメされているようにも見えるが、それ故リアリティがないからこその凄絶さ―怨念、憤怒、恋情や執着といったものが、画の前の空間にで朧ろ気な状態で固まっている―ような気すらしてくる。
 いやはや。

 閉館まで時間があったので、ミュージアムショップで色々と見ていると、ちら、と視界の脇を白い着物が横切るのが見えた。

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 公式サイトのツィートに「ある時間になると幽霊店員が出没」とあったので、お、この幽霊さんか、と。写真をお願いしたら気さくに(でも顔は作った表情を崩さずにw)ポーズをとってくれました。でもなーんか……あの、日本を代表する超有名ホラークィーン風なのですよねぇ。

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 帰り道で気付いた、東京都美術館正門の近くにあった現代アートの作品。
 ちゃんとしたテーマをもったアートらしいけれど、ああいう展覧会を観た後だけに、一瞬「ここは賽の河原か!?石は目に見えない子供たちが積んでるのか?」などと妙な想像が頭をよぎったりして。

 アメ横を眺めながら通り抜け、御徒町駅へ。
 東京駅で降り、八重洲ブックセンターなどに立ち寄って帰宅。

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 今回はなぜか図録を買うことに気が引けて、いつも通りのクリアファイル、一筆箋(但し今回の展覧会のものでなく)、それに一口饅頭などを買ってみた。
 クリアファイルも買ったはいいが、絵柄的に仕事の場では使い辛かったかも。重なってる下から取ったつもりなのに、表面も何となく汚れているしなぁ……。

 展覧会は9/13(日)まで(月曜休館)。8月には講演会や円朝忌の法要、能楽講演などがあるそうなので、興味のある方は公式サイトの「イベント」ページを参照されたし。

 なお、ポスターや公式サイトで大きくフィーチャーしている上村松園『焔』は、9/1から13日までの限定公開とのこと。 

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「マグリット展」(国立新美術館) [Art & Movie]

 前回の更新からほぼ2カ月。ご無沙汰しておりました。

 サボり癖が一度ついてしまうと、以前ならすぐ書いたであろうネタでも「ま、いっか」とスルーしてしまうようになり、気付けば更新どころか自分のブログすら覗かなくなって放置状態が続く有様。テニスネタは変わり映えなく、読書のペースもガタ落ちになっているからではありますが、一番にはタイトルの「閑中忙有」とはいえない今日この頃になっているという……。

 とりあえず、まだこのブログを辞めるつもりはありませんが(-_-;)


 さて。
 今日は国立新美術館で3/25から開催されている「マグリット展」へ。 昨秋にこの展覧会のことを知ってから心待ちにしており、前売券(図録引換券付)も早々に購入していたのだけれど、何やかやと都合がつかず「開催期間の終盤になって混む前に……」と、ようやく足を運ぶことができた。

 自分のHNにこの画家のファーストネームを借用(もう一人の著名な芸術家、そして往年の名テニス選手の名でもあるが)しているほど、昔からマグリットの絵画を好んでいる。日本で開かれたマグリット展には過去3度観に行っているが、前回('02年)からすでに13年が経っているわけで、その間にも各種のテーマ別?な展覧会(これとかこれとか)で、マグリットの作品を直に鑑賞することはできていたのだけれども、”大回顧展”、しかもこれまでで最大の規模ということで、期待はいやが上にも膨らむもので。

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 前回(「シュルレアリスム展」)で国立新美術館に来た際には、都営大江戸線を使って六本木駅から歩いたが、今回は東京メトロの乃木坂駅を使う。駅出口から美術館入口に直結しているので、天候の悪い日は便利だろうなと。個人的に千代田線への乗り換えがちと面倒、ってのはありますが[あせあせ(飛び散る汗)]

 平日の15時過ぎにもかかわらず、当日券売り場にはけっこう人が並んでいた。と、これは6/1まで開催している「ル-ヴル美術館展」人気もあるのかもしれない、が(こちらは1階の展示室)。 

 入場し、1歩入ったところで思い返して音声ガイド(¥550)を借りることにする。以前はヘッドホン越しにごちゃごちゃ聞かされるより黙って見ていたいと思って借りることもなかったんだが、昨秋の国宝展で初めて借りてみたところ、案外にわかりやすかったので。ま、最たる理由は、画家が好んだというE・サティの曲が、語りのBGMに使われていたため。

 実のところ使われていたのはほんの一部だけれど、マグリットの絵画とサティの曲は親和性がある、と昔から勝手に、何となくそう感じていたんだが、画家自身が好んだというなら、宣なるかな。 

 画家やその他芸術家の回顧展となると、時系列順に作品が展示されて、その画家の画風や色調、思想や心境の変遷を追うというのが通常だろう(暮れに観に行ったデ・キリコ展もそうだった)。
 今回もそのパターンであって、自分もマグリットの変遷については大まかには知っているつもりだった。キリコの「愛の歌」に衝撃を受け、シュルレアリスムに傾倒しパリに出るものの、その後(シュルレアリスムの親玉ともいうべき)ブルトンと意見の相違から袂を別ったこと等々……が、第二次大戦中~戦後の「陽光に満ちたシュルレアリスム」と、その後の「雌牛の時代」については、その深い経緯をこれまで知らず、「炎の帰還」や「快楽」、「不思議の国のアリス」等に見られる―それまでの画風とは似つかない―印象派的なタッチが、時系列的にやや「?」だったので、今回は長年のささやかな疑問がやっと解けた。

 展示の終盤に飾られていたのが、マグリットといえばこの絵ともいえる「大家族」
 中学の美術の教科書に載っていたこの絵を見て以来、最も好きな画家がマグリットになっている。本物を初めて見たのは1988年、国立近代美術館でのマグリット展だった。
 27年前のあの時と同じ絵を、同じように一人で見ている……のに、心の中に浮かんでくるのは感動より、四半世紀前には想像してもいなかった今の自身に、ふぅ、と漏れる嘆息。

 こんな今の自分を 重ねてみれば
 変わりすぎたすべてに涙流れる

  ~「ためらわない、迷わない」

 小田和正の曲の1フレーズがふと思い出されてきた。

 ……それでも、この画のように―自分の眼に映る曇り空にも、それを切り取るような晴れ間が見えてくると思いたいけれど。 

 特設ショップで、前売券に付いていた引換券で図録を受け取り(前売券+図録予約券でかなりお得だった)、自分用に少し買い物をして会場を出る。かれこれ2時間半ほどだった。
 渋谷の丸善ジュンク堂で本を購入する。ウィンザーあたりを覗いていこうかとも思ったが、脚が疲れ気味なので、そのまま帰宅。

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 展覧会へ行くとクリアファイルを自分用に購入する。今回も大小(A4とA5)を買ったが、この2点(「光の帝国」と「ピレネーの城」)は今回は展示されていないというw(「光の帝国Ⅱ」が展示)。好きな作品のポストカードはあらかた持っているので、確か持っていないはずの、この2枚(「会話術」と「野の鍵」)。

 図録は¥2,800(会期期間中) するだけあって、ハードカバーのかなり上質な様式。

 

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 マグリット展に行くのは、今回が4回目。

 最初は前述の通り、'88年の国立近代美術館で(写真一番左の図録)。
 次が'95年、三越美術館(三越の新宿南館8Fにあったが'99年閉館、現在はビックロになっている建物)にて(真ん中の図録、下は当時のリーフレット)。 
 そして前回、’02年に渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでの開催(図録、リーフレットは一番右)。

 4回もあれば展示(図録に載っている)作品のほとんどは共通しているものだけれど、改めて読み比べてみると、同一作品の解説でも色々と違いがあったりすることもあって、なかなか興味深い。

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 図録の厚さの比較(左から右へ時代順に)。

 心の何処かで期待していたような感動―というか、感情を揺さぶられるようなことは特になかったのだけれど、それでも、観に行ってよかったなぁ、とは思えるものだった。

 薄青い空に白い雲がぽつぽつと浮かんでいるのを見たら「あ、マグリットの空だな」と、これからも思うのだろう。 

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