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「怪談歳時記 12か月の悪夢」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 睦月、如月、弥生……12ヶ月のそれぞれの月をモチーフに書かれたホラー短編集。

「怪談歳時記 12か月の悪夢」福澤徹三著(角川ホラー文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
初詣の夜に妻を見失った男。帰ってきた妻は、以前とはなにかがちがっていた。老人の語りが戦慄を呼ぶ「鬼がくる家」。女子大生の〈あたし〉は真夏の山中で、われにかえった。見知らぬ車に見おぼえのない服。失われた記憶を求めて恐るべき真相にたどり着く「迷える羊」。平凡なOLが引っ越したマンションには、得体のしれない誰かが住んでいた。女の情念と狂気を描く「九月の視線」。四季を舞台に織りなす12篇の恐怖。

 集英社の携帯サイト「the どくしょ plus」に「恐怖短編シリーズ」として2009年6月~10年5月に亘り連載された作品をまとめ、加筆修正して書籍化となったものとのこと。

「怪談―」と書籍では銘打っているものの、実際に幽霊やその手の超自然的なものが登場するのは3編ほどで、後は怪談風な雰囲気を見せておいてサイコホラー、あるいは異常心理的なオチを見せるものか、不条理系ないしサスペンス作品となる。

 Web上の批評では、『怪を訊く日々』『怪(あやし)の標本』での実話怪談、あるいはそれを踏まえての創作怪談を期待した向きには概ね不評のようだが、サスペンス系、不条理系の作品―例えば「精霊舟」で、東京で大学デビューを果たした女子大生が抱く故郷や友人への鬱屈した優越感と忌避感、「九月の視線」で29歳の女主人公が抱える焦燥、そして「五月の陥穽」「梅雨の記憶」「紅葉の出口」などで描かれる中年以後の閉塞感や徒労感……そういったものは著者の「嗤う男」「怪談熱」でおなじみのものであり、そこもまたこの作家ならではの味わい。
 各作品とも発表媒体のためか短めなこともあって、やや薄味といえなくもないが。

 クリスマスイヴにラブホテルで働く清掃係たちの一夜の顛末を描いた「幽霊たちの聖夜」で本書は幕を閉じるが、リストラ→起業→倒産→離婚と来てアルバイトで糊口を拭う主人公の中年男の鬱屈とかすかな矜持は、まさにこの作家の持ち味であり、何ともいえぬ余韻を残す。

 でもこれ、連載は5月が最終回、ってことは最も後味悪くかつ印象的な「五月の陥穽」が最終回だったのか。うーん、かなり厭な余韻が残るぞw

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Sou

そうでしたか、「五月の陥穽」がラストでしたか。

それでは、と後味の良さそうな作品を探してみたものの、やっぱりあんまり無いですね(笑)
この文庫の並び順で、結局一番良かったような気がします。
by Sou (2012-02-25 21:49) 

るね

>Souさん
「五月の陥穽」がラストだったのかどうか確認はしていないんですが、連載期間を見ると最後が5月なので、これなのかなぁ、と。

>この文庫の並び順で、結局一番良かったような気がします。
私もそう思います。ちょうどいい順に作品が並んだといいますか。
by るね (2012-02-26 00:00) 

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