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「『超』怖い話ベストセレクション2 腐肉」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 勁文社~竹書房と版元を変えながら19年、26巻と今なお続く実話怪談の一大シリーズ『「超」怖い話』。その編著者として筆を揮った平山夢明が担当した話から、選り抜きを集めたベストセレクションの第2弾。

「『超』怖い話ベストセレクション2 腐肉」平山夢明著(竹書房文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙より)
実話怪談の最高峰『「超」怖い話』平山夢明ベストセレクションの第2弾です。
第1集に引き続き2003年から2008年までの同シリーズから今もなお腐敗し悪臭を放ち肉汁がたれている“ガチ怖”を怪談ジャンキーのあなたにお届けします。夢や愛など人の世の未来への希望が崩れた現代社会で、恐怖だけがこの世に残されたたったひとつだけのリアル!だから嫌でもあなたも体験するに違いない恐ろしい出来事がここですでに語られている。あなたの眼球の裏の視神経と体験者の脳髄の血まみれ記憶で編まれた59話と新作書下ろし3話も収録しました。もう瞼を閉じることはできない! 解説、福澤徹三。


 以前から言っていることだが、ホラー小説は濫読気味に読み漁る割に、実話怪談本にはさほど食指が動かない。とみに昨今はこちらのジャンルの方が元気がいいからか、出版される本が多くてフォローしきれない上、玉石混淆―つまり当たりハズレの差が激しいということもある(後者はホラー小説でも同様なんだが)。
 そんな中、書店で見つけたら安心して?レジに持っていけるのが、平山夢明氏による実話怪談ものなのである。

 竹書房の「超」怖い話シリーズは既刊数が多いこともあって読んではいないが、平山氏執筆分のセレクションとなれば買い(シリーズで読んでいない分、既読感もないし)。昨年2月に第1弾として「『超』怖い話 ベストセレクション 屍臭」が出たが、今回はその続刊。

 この人の実話怪談がなぜ“怖い”のか。作品に登場する幽霊―というか怪異を起こす存在の描写があまりに生々しく、グロテスクなこともあるだろう。だが、同じく平山氏執筆による非心霊系の実話恐怖譚を集めた「東京伝説」シリーズや、一連の短長編の小説でも描かれる「人間存在の狂気」というものが、ここでも露骨に……否幽霊という肉体を持たない存在だけに余計ストレートに描き出されているからではないか。
 だってねぇ、恋人と以前同棲していた部屋に侵入して自殺した上、赤の他人である現在の住人を怖がらせたあげくに<でていけ>とか、電柱で首吊り自殺した後も、目の前にあったマンション2階の部屋の住人を脅かす浪人生とか……不条理というか迷惑極まりないというか。その辺りはむしろ「東京伝説」のテイストに近いのかもしれない。
 もちろん、よせばいいのにわざわざ心霊スポットへ出かけて行って、想像以上の恐怖に遭遇するような典型的パターンもあるが。

 それとは別に、ネットオークションやリサイクルショップで購入したものによからぬものが“憑いてくる”というパターンの話がある。その場合、当初は何となく妙なことが続き、体験者の身体に少しずつ異常が起き、最後に憑いていたものがその姿を現す……という展開になるが、そのいわく付き(憑き?)の品を、体験者はそ知らぬ顔で再び売り払ってしまったというオチで終わる話がいくつかある。そんな話を読まされると、憑いていた存在よりも生きている人間の方がよほど怖いと感じてしまう。
 オークションやリサイクル屋でヘタに買い物ができなくなりますがな。

 ひたすら怖い話や陰惨な話ばかりでなく、奇妙ながらも心温まるというか、ほろりとさせるような話も含まれる。第1弾、2弾ともラスト前にやや長めのとにかく怖い話を置き、優しさを感じるような話でラストを締めるという構成が心憎い。

 ちなみに、「故障」という話のラストで、乱丁というか他作品の文章が混ざってしまっていた。竹書房のサイトにそのお詫びと訂正が出ている。

 蒸し暑い夜を怪談で涼むには少々時期が早いが、冷房効果はなかなかにありそうな1冊。

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