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「怖いこわい京都」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 京都は西陣出身でロンドン在住のエッセイストによる、京都の"闇の"ガイドブック。

◎「怖いこわい京都」入江敦彦著(新潮文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙より)
微笑みに隠された得体のしれぬ怖さ―それこそが、京都の魅力であり真骨頂だ。千年の情念が積もり積もった都で飄々と暮す人々だけが知る恐怖を、京都話の名手が案内する。都の魔と人の業が結晶した《異形》、大路小路にひそむ《伝説》、京都人も畏れる《寺院》。ほか《神社》《奇妙》《人間》《風景》《幽霊》《妖怪》の九章からなる京都奇譚。
『怖いこわい京都、教えます』改題。

 単行本刊行時の88編から11編を加筆し、百物語の体裁に則った全99編を収録。
「憑依≪異形コレクション45≫」の感想を書いた中で、この著者の作品を印象に残った作品としてあげたが、そこで触れていた新刊とは本書のこと。

 京都には伯母や友人が住んでいたことはあるが、中学校の修学旅行を含めても訪ねた回数は片手の指に収まる程度。
 自分に限らず、首都圏の人間なら―ある程度京都に縁がある人を除けば―大概はその程度だろうし、イメージとしては春秋にTVで流れたJR東海の旅行キャンペーンCMの美しい映像……てなところじゃないだろうか。

 華やかで古式床しい古都の顔の裏で、血塗られた、陰惨な歴史を持つ寺社仏閣、歴史的な建造物は―それを知ると―やはり怖い。この都市に潜む何とも言い難い怖さの因を、著者はまえがきで「澱(おり)」と称しているが、確かにそんなものなのかもしれない。
 冒頭には京都全図と市街図が掲載され、本文で紹介している「怖い場所」スポットの場所が(全てではないが)載っている。それを見ると、ふむ、確かに魔都という呼び名がしっくりくるところなのかも。

 だが、この古都に住む人々もまた、"よそさん"(非京都人)からすれば十分に不可解かつ不条理、何とも得体の知れない存在に思えてくる。

 イケズは得体の知れぬバケモノでも二重人格のなせるワザでもない。基本的には日常生活における警告通達(イエローカード)だ。問題はイケズを発動するにあたってのジャッジが公平であるとは限らないこと。これがよそさんを、ときに奈落の底に突き落とす。
 だが、なにより悍(おぞ)ましいのは京都人が刺激的な娯楽としてイケズを半ば愉しんでいるところかもしれない。それは日常にメリハリをつける恐怖刺激なのだ。
(『人間 七 イケズ』より)

 ……うへぇ(>_<)
 無論、これを以て京都の人を一様に認識してしまうのも、これまた危険極まりないことではあろうけれど。

 いくつかの話の最後には、著者が目撃したものや体験したこと、ふと感じたことなどが何気なく挿入されているが、新耳袋風のざらりとした味わいが、これまた怖くもあり、また愉しくもある。
 著者による異形コレクション収録の「テ・鉄輪」シリーズには、本書で紹介されたエピソードがいくつか用いられている。今後もネタとして使われるだろうから、その辺も併読してみると面白いかもしれない。

 京都は、やはり……怖い。

 何れにせよ、自分は一生京都に住むことはなさそうである。
 が、来月後半に仕事絡みで京都に行くことになりそうなので、時間が許せば本書を片手に、紹介されていた有名どころの2、3箇所に足を運んでみようか、なんてことを考えてみたり。

……京都の"澱"に憑かれない程度に。

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