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「鬼」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 最近書店で旧作が平積みされるなど、ブームになっている?今邑彩の最新短編集の文庫化。

◎「鬼」今邑彩著(集英社文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
引きこもっていた息子が、突然元気になった。息子を苛めていた子が、転校するというのだが……「カラス、なぜ鳴く」。かくれんぼが大好きだったみっちゃん。夏休みのある日、鬼になったみっちゃんは、いつまで待っても姿をあらわさなかった。そして、古井戸から……「鬼」。他、言葉にできない不安、ふとした胸騒ぎ、じわじわと迫りくる恐怖など、日常に潜む奇妙な世界を繊細に描く10編。ベスト短編集。 

 収録作品は10編。

「カラス、なぜ鳴く」
「たつまさんがころした」
「シクラメンの家」
「鬼」
「黒髪」
「悪夢」
「メイ先生の薔薇」
「セイレーン」
「蒸発」
「湖畔の家」

 上記の内容紹介に出ている2作品の他、人生の岐路に立つ度に"空耳"を聞いてきた主人公が、それによって婚約者への疑念を抱く「たつまさんがころした」、編集者から担当作家の後妻となった女性が、自身や夫のものではない長い黒髪を家の中で目にするようになっていく「黒髪」、39本の黄色い薔薇の花束を抱えてバーにやってきた男が語る、担任クラスの児童全員に愛され過ぎた女教師の話「メイ先生の薔薇」、旅行中、ケンカから彼女に置き去りにされた男が遭遇した奇妙な団体と、彼らの旅の目的とは「セイレーン」など。

 文庫化にあたっては、単行本にWEB誌で発表した2作品(巻末の2つ)が追加されている。あとがきによると、著者ご本人は自作の短編集の中で、これが一番のお気に入りだそうで。

 表題作や「黒髪」「湖畔の家」などの純ホラー―超自然的要素を含むものもあるが、大半は疑念や嫉妬、他人には言えぬ秘密……誰もが持ち得るそんな心の闇やちょっとした残酷さを描写したミステリ仕立ての作品となる。そう思っていると最後にホラー的オチを持ってくるものもあるが。そしてどの作品も爽やかさとは程遠い、胸の奥に何か靄のようなものが痞えているような、妙な読後感が残る。

 冒頭の「カラス、なぜ鳴く」と後半の4作品は主に(主人公の)男性視点、それ以外の5作は女性視点で描かれているが、男性視点で描かれた作品の方が怖いと思えるのは―登場人物と同じく自分も男性であり―女性の持つ不可解さ、残酷さをある面で"怖い"と感じるからだろうか。

 個人的には、著者自身はブラックコメディとして書いたという「蒸発」が印象に残る。収録作の中では異質なコメディタッチの物語なのだが、結末は一気にブラックを通り越して非常に後味が悪いというか……笑えない。

 この著者の短編集では「よもつひらさか」(集英社文庫刊) を数年前に読んでいるが、内容をほとんど失念してしまっていた(ホラー系ばかり濫読してた頃でもあったので)。これを機に再読してみようかと思った次第。

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