SSブログ

「物語のルミナリエ≪異形コレクション48≫」 [Book - Horror/SF/Mystery]

≪異形コレクション≫49巻目は、第39巻「ひとにぎりの異形」以来4年ぶりのショート・ショート集。

―というよりは。

◎「物語のルミナリエ≪異形コレクション48≫」監修)井上雅彦(光文社文庫刊)

◆内容紹介
苦難の時期に作家ができることは?「物語」を贈ることである。
小さな物語の光を集めて、人々に元気を与える。そんなコンセプトを立てて原稿を集めた。
かけがえのない者たちの、かけがえのない物語たちは、これからも、語り継がれることになるだろう。そして、遺された私たちも、また「物語」なのだ。かけがえのない「物語」に励まされ、燦めき、ともに、未来に向けて、語り継がれていく「物語」。
物語よ、永遠なれ……。
(感謝の辞。あとがきにかえて より)

 今回は昨年3月11日の東日本大震災への追悼、チャリティー色が濃く、「異形コレクション」というアンソロジー・シリーズ中の1冊としてはかなり異色。収録されている作品はコレクションの既刊のものとも、また同じショート・ショート集である「ひとにぎりの異形」とも趣を大きく異にしている。

 何より慰霊、鎮魂、追悼というイメージが強く、また構成的に似たカラーの作品が続くので、第3章「終生と再生」、第9章「おくるひとびと」、第10章「みまもるものたち」あたりは正直なところ、読み進めるのが辛くなるというかいたたまれなくなることも。単純に読んで愉しむという代物ではないような。

 いや、実際いい話というか泣ける話は多いし、作品自体のクオリティはさして低いわけではない(収録数が多い分、玉石混交であることは否めないが)。だがホラー・幻想・ミステリ・SFといった作品が主体であった「異形コレクション」で果たしてやるべきことだったのか……と思わなくもない。元より、自分が「泣けるホラー」とかいった手合いのお涙頂戴、読者の感涙をあざとく誘おうとするような作品には、端から拒絶反応を示してしまう嗜好だからかもしれないが。

 数千年に一度という未曾有の大災害だっただけに、直接の被災の有無のみならず、物心両面で衝撃を受けた作家諸氏は多いのだろう。だからこそ“誰かのために”ではなく、“己自身のために”書き上げた作品も少なくないのでは―と感じた次第。

 とはいえ。
≪異形コレクション≫なのだから、ストレートなホラー、怪奇幻想系で怖がらせてくれる作品が1つや2つあるだろう……と淡い期待を持っていた自分は、

  • 「ひとりで大丈夫?」 蒼井上鷹
  • 「灯篭釣り」 加門七海

の、追悼、鎮魂色が強い作品と見せておいて、ちゃんとした恐怖譚となっている2作が強く印象に残った。

 しかし、この本のコンセプトを知っていながらそんなことを期待した自分はひょっとして、震災など他人事としか捉えていない人でなしのクズ野郎なのかも知れぬ。

 

 創刊から足掛け14年(途中、版元が変わったことによる中断期を含む)に亘って続いたこのシリーズ。どうやらここで一区切りをつけるような気配。終了の宣言こそないが、これまで以上に刊行のスパンを拡げる―ということらしい。

 何とか続けてもらいたいもので。
 

banner_03.gifにほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ ブログランキングに参加しています。
   ↑よろしければ ↑1クリック お願いいたします。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

12分の1ベルギーチョコまん ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。