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「怪談実話 顳顬草紙 串刺し」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 タイトルはこれで「こめかみぞうし」と読むんだそうで。 

「怪談実話 顳顬草紙 串刺し」平山夢明著(MF文庫ダ・ヴィンチ刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
それは、霊をも超える恐怖。
実家の古い机、その引き出しの裏に書かれた予言。妊娠していないのに膨らんだ腹から出てきたもの。自傷した傷口から聞こえてくる声―。霊とも狂気ともつかない、だが強烈な恐怖が日常の風景から突如あふれ出る。『「超」怖い話』で心霊の、『東京伝説』で狂気のもたらす恐怖を記録してきた平山夢明が挑んだ、怪談実話の新境地。

 著者の代名詞でもある心霊恐怖譚(「『超』怖い話」や「怖い本」)、非心霊系の「東京伝説」とはやや異なるテイスト。おなじみのグロテスクな心霊話でもなく、他人が恐ろしくなるような実在の人間の狂気を書いたものでもない。何とも奇妙なというか少し不思議な話が大半を占める。全59編。例えば未来の自分や亡くなった身内が危難を教えてきたり、あるいは精神的に凹んでいる最中に自分自身……それも一つの未来の姿としての自分―に遭遇するといったものとか。
 前者には“いい話”系寄りだが、中には「怖い本」系のストレートな心霊恐怖譚もある。

 以下、印象に残った話を何点か。

  • 「霧嫌い」
    1m先も見えないような濃霧の中、ボートのオールを握っていたものとは。「怖い本」シリーズでも時折登場する妖怪譚のような1編。
  • 「傷口」
    17歳の少女がリストカットを繰り返す奇妙な理由……人間の心の闇とはやはり深く、そしてあまりにグロテスク。
  • 「ガスパン」
    歯科医が麻酔に使う笑気ガス。身体的な中毒性はないものの、ガスのもたらす多幸感にハマってしまったある歯科医。耽溺し、繰り返すバッドトリップの果てに編み出した“遊び”と、その結末。
  • 「二十八年目の回帰」
    大人しく優しい性格の青年が、白昼の往来で突然暴行をはたらいた相手はドラッグ売人の初老男だった。だが両者は互いに全く面識がなく、青年自身もなぜそんなことをしたのか全くわからないという……これも一つの「因果応報」話なのか。
  • 「怖いから……」
    マンションの同じフロアで起きた自殺騒ぎ。エレベーターで偶然乗り合わせた若く美しい女性は、その隣の部屋に住むと語り「気味が悪い」と怯えている。その後「怖いから一晩泊めて欲しい」とその女性が訪ねて来た……。生々しい反面、何か落語のようなオチにも思える。
  • 「四日間」
    先天的な知的障害の上に盲目、しかも昏睡状態に陥っていた老人が意識を取り戻し、所望した画用紙を次々に黒クレヨンで塗りつぶして行く……。公共広告機構(AC)のCMで似たようなのがあったなぁ。
  • 「忌梯子」「詛」
    狂気―とまで行かないまでも、人間のドス黒い感情というものは、時として呪術という形而上のものと結び付くことで、相手や第3者に凄まじいまでの影響を及ぼすようで。
  • 「予言猿」
    この著者の作品で猿が登場すると、大概は陰惨な話になるが、これもやはり。
  • 「憑が出る」
    似たような話を読んだ記憶が……と考えたら、「厠の怪 ‐便所怪談競作集‐」で著者が書いた『きちがい便所』とストーリーの枠組みがかなり同じと気付いた(結末は全く異なるが)。
  • 「厭な本」
    長く探していた本を思いがけず見つけたのは、意外にも古本屋の「3冊100円」のワゴンセール。だが読み始めてすぐに“安かった理由”を知る……。絶版ホラーの古本を渉猟していた頃だったら、もっと厭な気分になれたかも、な1編。
  • 「て」「隣の家」
    比較的ストレート系の心霊譚。結末で酷い目に合うのは語り手本人でなく○○というのが共通するか。「て」で友人が目にしたもの、「隣の家」で施錠された隣家になぜ自分が入りこんでいるのか、何故入り込めたのか……語られない部分が話の“厭な”感じを増幅させているような。
  • 「孕み」「正気玉」「猫の木」「せせらぎ」
    この4編は選り抜きで名状し難いというか、文字通り奇妙な、不可思議な話としかいいようがない。

“いい話”の系統はタイトルのみあげておく。

  • 「ノックの子」「麻酔二題(前半)」「思い出」「口真似」「つぐみ」「イタ電」「指ぬき

 帯や裏書にある「霊をも超える恐怖」というほどには、恐怖度は高くない気がする。“いい話”の割合が高いためか、平山氏の他著を読んだ時ほどには自分の背後や部屋の窓の外が怖くなることはないようなw

 

 結局この本で最も怖いのは、精神的ブラクラとして一時流行った“蓮コラ”を思い出させるような、表紙のデザインかもしれない。

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