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「母親を喰った人形」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 モダン・ホラー草創期の作家、ラムジー・キャンベルの処女長編。

「母親を喰った人形」R・キャンベル著(ハヤカワ文庫NV-モダンホラー・セレクション)

◆内容紹介(裏表紙から)
深夜、兄を助手席に乗せてリヴァプールの街をドライヴしていたクレアは、突然目の前に飛び出してきた男に驚いてハンドルを切りそこねた! 車は信号燈に接触し、異様な音と共にドアにはさまれた兄の片腕は切断されてしまう。が、事故現場に片腕は発見できなかった……やがて、流行作家のホールが彼女に連絡してくる。事故の原因となり、兄の片腕を持ち去った男に心当たりがあるというのだ。彼と協力して男の正体を追うクレアが突きとめたものは? 本格ホラーの傑作。

 先月に吉祥寺駅前にて、開店してまだ日が浅そうな古書店を発見。
 街の客層にあわせたのか、ややサブカル、アングラ寄りの本中心で、一般の古本屋のようにあれもこれもと棚にぎっちり、という感じではない。翻訳ホラーの文庫なんてないか……と店を出ようとしたら、澁澤龍彦の著書に混じってこれが1冊だけ並んでいるのが目に入る。
 程度は今一つながらパラフィン紙で覆ってあるし、200円なら、まぁいいかと購入。

The Doll who ate His Mother読了してみると……
どうもよくわからないというか、感想の言い難い作品。

不安を煽るようなくだり、嫌悪感をもよおすような描写はあるが、怖いか?と訊かれても、背筋に冷たいものが走るなんていうほどのものでもない。これはもっと刺激の強いホラー小説に慣れてしまったせいも大いにあるだろうけれど。

 

 ストレートな恐怖描写、怪物や怪異自体を描くより、登場人物の心理描写―それも恐怖に慄くような極限的状況のものではなく、普段の状態でのもの―に字数が費やされているような。黒魔術や悪魔の子、異常心理といったおなじみのガジェットは登場するものの、タイトルから連想する展開や他のモダンホラーにあるような典型的パターン、派手な場面といったものを予想していると、ことごとく裏切られる始末。

 英米の古典怪奇小説とは明確に異なる味わいであり、後続のモダンホラー/ポスト・モダンホラー作品ともやや違う趣を持つが、1974年発表ということは40年近く前の作品であって、時代はちょうどモダン・ホラー勃興期。恐怖を通じて社会や人間を描き出そうとするのがモダン・ホラーであるならば、本作はまさにそれにあたるのだろう。

 色々考え過ぎるわ、兄や義姉、周囲の人物にごちゃごちゃ複雑な感情を持つ割に、出会って間もない若い男に惹かれてしまうクレアをはじめ、どいつもこいつも理解し難いというか感情移入ができない登場人物ばかりなのだが、それだけ人間は皆単純ではないわけで、事程左様に"人間が描けている"ということでもあるんだろうか……とも考えたり。

 ちなみにこの作品、他ではどういう評価を受けているのだろうか―と、参考に「ホラー小説大全[増補版]」「ホラー・ガイドブック」(共に角川ホラー文庫)、「戦慄のモダンホラー読本」(KKベストセラーズ、絶版)といったジャンル解説本を見てみると……なぜかことごとくスルーされているのだった。Web上でもこの作品のレビューはほとんど見当たらない。
 古い作品であり、絶版になってから長いということはあるだろうが……知名度のある作品の割りに人気がないとか?

 先日読んだ「ナイトランド」創刊号にもキャンベルの短編が掲載されていたが、自分の蔵書中にある新潮文庫のモダン・ホラー・アンソロジー4冊にも、全てキャンベル作品が収録されていたことに改めて気付く。しかもどの作品も内容をほとんど覚えていない(「マッド・サイエンティスト」(創元SF文庫)収録の『自分を探して』だけは、その素っ頓狂さが印象に残って覚えていたが)。

 この作家の作品と自分とは、どうやら相性がよくないのかもしれない。

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