「オール讀物」2012年8月号 [Book - Horror/SF/Mystery]
今年はなぜかホラー/怪奇幻想絡みの文芸誌を続けて買っているような。
別段積読本が切れたわけではなし(手付かずの長編がいくつかあるw)、待っていればそのうちアンソロジーとして文庫化されたりするのだろうから、あえて買う理由も特にないのだけれども。
◎「オール讀物」2012年8月号(文藝春秋社刊)
総力特集はずばり「怖い」。
- 短編セレクション「恐怖の報酬」
死者の季節 恩田陸
三島屋百物語 まぐる笛 宮部みゆき
ほたるぶくろ 北村薫
壜の中 皆川博子
通報者 藤田宣永
心霊現象は飯のタネ 誉田哲也
ヘッセン人の墓 田中芳樹
陽気な蝿は二度、蛆を踏む 平山夢明
黄昏アルバム 朱川湊人
蛇の道行(陰陽師) 夢枕獏 - エッセーなど
みちのく幽霊画探訪(グラビア企画) 高橋克彦×松井冬子
-女が男を殺す理由…-怪談「牡丹灯篭」 奥山景布子
二十冊のこわい本 角田光代
「ムー」という不思議大陸 北尾トロ
怖すぎる「お化け屋敷」の作り方 五味弘文
などなど。
短編セレクション『恐怖の報酬』と銘打って短編が9編、それに加え宮部みゆきの「三島屋百物語」シリーズの新作が収録(夢枕獏のも「陰陽師」シリーズの新作か)。そこに特集に関連したエッセーが5本収録されているのだから、アンソロジーの新刊を買ったと考えるならば、1,000円は決して高くない内容じゃあないかと。
ある意味で怪談実話系な恩田陸の「死者の季節」、厭世的な老人の秘密を探ると見せかけて、終盤でひっくり返る田中芳樹「ヘッセン人の墓」、この連作シリーズで正調怪物+スプラッタ?ホラーを持ってきた宮部みゆき「まぐる笛」が面白い。誉田哲也「心霊現象は飯のタネ」もシリーズもののようで、調べたらオール讀物で何度か既作があるらしい。超能力+探偵がテーマの軽妙な作品で、まだ書籍化はされていないようだがチェックしてみたい。
北村薫「ほたるぶくろ」と朱川湊人「黄昏アルバム」は怖いというより不思議な話で、ややジェントル・ゴーストストーリー的な味わいか。平山夢明の作品は、いかにもこの人のフィクション作品らしい殺し屋の話。現代的な"怖さ"でいうならば藤田宣永「通報者」だろうか。正義感とか善意がそのまま通らぬ現代って……。
角田光代のエッセー「二十冊のこわい本」もなかなか興味深い。ラインナップは省略(BIBIさんのブログ「迷跡日録」7/27の記事を参照されたし)。王道ホラー作品で入っているのはポーの「黒猫」に、S・キングの「シャイニング」「ミザリー」、小泉八雲の「怪談」くらいか。志賀直哉「剃刀」も傑作選などでよく入ってくるか。
で、ノンフィクションが8作品ほど含まれているのだが、筆者の指摘どおりノンフィクションの怖さというものは、フィクションを読んだ時の快楽、悦楽としての怖さではなく、怖さが得てして読後感に"重さ"や"やりきれなさ"を伴うものだけに、それを愉しむのには程遠いところにあるのだと思う。
そのうちノンジャンルで、自分なりの「こわい20冊」をあげてみようかな。ポー「黒猫」でホラーデビューwしたところとか、キングの最恐作品が(但し長編では)「シャイニング」なところなどは角田女史と同じだけれど。
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こんにちは、拙ブログご訪問ありがとうございます。
小説新潮も怖い特集でしたね。新聞広告しか見ていませんが、そちらにも北村薫さんの名前があって、おやおやと思いました。あと、小池真理子さんも参加されていたので、オール讀物の藤田宣永さんと、雑誌を異にして、夫婦競作(恐作!)だな、なんて考えたりして。
ところで、怖いノンフィクション、鬼畜系が多かったりして、小説でもそっちは苦手なんですよね。
by 迷跡 (2012-08-02 06:39)
>迷跡さん
コメント&TB受け入れありがとうございました。
小説新潮も怪談特集なのですよね。
ただ、数日前に購入した新潮文庫の新刊が、去年の小説新潮の特集をそのまま文庫化したものとわかったので
「こりゃ来年も文庫で出るかな?」と。
鬼畜系はフィクションなら以前は喜んで?読んでいたのですが、年齢のせいか最近はエグいのがあまり受け付けなくなっていますw
鬼畜なノンフィクションは以前から自分も苦手です・・・
by るね (2012-08-03 00:24)