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「黒沼:香月日輪のこわい話」 [Book - Horror/SF/Mystery]

「妖怪アパートの幽雅な日常」シリーズでも人気の著者による短編集。文庫オリジナル。

「黒沼:香月日輪のこわい話」香月日輪著(新潮文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
幽霊でもない、妖怪でもない、「なんだかわからないもの」が、実は身の回りに潜んでいるかもしれない。ほら、あなたのすぐそばにも……。無邪気に見える子供の心にさえ巣くう「闇」をまっすぐ見据えた身も凍る怪談と、日常と非日常の間に漂う世にも不思議な物語。『このさき危険区域 学園ミステリアス・ストーリーズ』を改題、新たに11編を加えて再編集した文庫初の怪奇短編集。

 小学生向けのいわゆる「学校の怪談」本に、短編、Web上で発表していたSS等を加えたものとのこと。

  • このさき、危険区域―学校のこわい話
    ランドセルの中
    たたずむ少女
    扉の向こうがわ
    呪い
    鬼ごっこ
    忘れもの
    聖母
  • 黒沼
  • 譚の部屋
    ねこ屋
    鬼車
    再見
    海を見ていた
    はげ山の魔女
    人魚の壷
    海を望む窓辺に
    春疾風
    断崖
  • 春 茶屋の窓辺にて候

「このさき、危険区域」は、解説で筆者が書いている通り、子供(小3,4年)対象の割には容赦がないw 一頃流行った"学校の怪談"的な書籍は殆ど読んだことがないのだが、それらもやはりこんな風に―安直なハッピーエンド、怪異を解決させてめでたしめでたし……な結末を許さないんだろうか。

子どもといえど、大人と同じ。その身の内に、闇もあれば、残酷もある。ただ、その闇も残酷も、純粋というだけ。それだけに、実は大人よりはるかに質が悪く、恐ろしいのだ。

とは解説での筆者の言葉だが、概ね同意。純粋というより"単純"なのだろうけれど。
 そういった点でこの作品の子供たちは、三津田信三の作品で登場する"臆病なくせにやけに冷静で、分析力や判断力に優れる"そんな奴ぁいねーだろ的な子供よりも、はるかに現実的だともいえるかもw
“扉の向こうがわ”のラストで突如登場するアレとか、“呪い”で主人公達が見た、我が子を亡くした母親の顔などは、子供心にはかなりショッキングかもしれない。

「黒沼」は民話風ファンタジー。

「譚の部屋」はSS集。Web上で発表していたものだけに、縦書きになっても何かWeb小説、携帯小説な雰囲気が抜けていない。ま、こういう軽い感じがこの作家の持ち味なんだろうか。
“ねこ屋”は谷根千のどこかの路地裏でふっと見かけそうな気もする。

「春 茶屋の窓辺にて候」は元々、著者が所属していた演劇サークルの、ドラマCD用の脚本だったとか。それにしても、うーん……。高校の演劇部で使われたっていうならわかるけど……というレベルな気が。ジプシー・キングスの「Inspiration」をBGMに使うには程遠い。

 冒頭にあげた「妖怪アパートの幽雅な日常」シリーズがけっこう人気とのことだが、そちらも本書に近いような雰囲気ならば手に取らなくてもいいか、な。

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コメント 4

rtfk

う~む 確かに子供のほうが
純粋無垢で単純だから怖いのかも知れませんね(汗)

by rtfk (2012-10-17 06:46) 

るね

子供は純粋で単純だからこそ、残酷さもむき出しになる―というのが、
いわゆる「子供」テーマのホラーでよく用いられる文脈ではありますね。

ま、幼い頃から人の世の無情さばかりを教え込むのも
これまたいかがなものか、とも思いますがw
by るね (2012-10-19 20:27) 

Sou

直前のエントリーである『戦都の陰陽師』とともに、購入を迷っていた一冊でしたが……えー、大変参考になりました(苦笑)

『戦都……』の方も、相変わらず登場人物を絞れない様子ですね。
着想は抜群な作家さんですが、個人的には新刊で購入することを迷い始めました。
by Sou (2012-10-20 22:45) 

るね

「騒乱ノ奈良編」、SouさんのエントリーがなかなかUpされないなぁ……
と思っていたら、そういう事情だったんですねw

ネット上の書評を見ても「これは続編ありきだろう」という声が少なくないので、
それを(期待した上で)踏まえるならば、今作も十分愉しめる出来だとは思います。

「黒沼」は……あくまで自分の好みではなかった、ということで一つw
最近、新潮文庫の怪談/ホラー系を買うと大概(自分には)ハズレのようです。
by るね (2012-10-21 01:27) 

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