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「戦都の陰陽師 騒乱ノ奈良編」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 戦国時代、美少女の陰陽師とそれを守る忍者たちを描いた伝奇アクション「戦都の陰陽師」の続編にあたる。

「戦都の陰陽師 騒乱ノ奈良編武内涼著(角川ホラー文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
時は戦国。大陰陽師・安倍晴明の末裔たる土御門家を“魔天の四天狗”を名のる魔物が襲撃、魔を滅ぼす霊剣・速秋津比売(はやあきつひめ)の剣を奪い去る。それは裏蘆屋(うらあしや)の流れをくむ妖術師・果心居士の指図だった。果心居士は奸雄・松永久秀を操り、恐るべき陰謀を企てていた。霊剣を取り戻すため、土御門家随一の使い手・光子姫は、凄腕の伊賀忍び・疾風らに守られながら、久秀のいる多聞山城をめざすが―。新説・陰陽師物語、待望の第2巻。

 なかなかの快作だった前作から、半年を経ての続編。

 前作で、大きな犠牲を払いながら出雲より持ち帰り、京の都を襲う魔を撃ち祓った霊剣・速秋津比売の剣。今回はそれが魔性のものに奪われ、その奪還のため光子姫と精鋭の伊賀忍者達が一路奈良へ向う……という展開。

 伝奇フィクションに史実を大胆に織り交ぜ、そこへ当時の市井の人々の生き生きとした様や圧倒的に濃密な自然の描写を加えるのが著者のデビュー作からの作風だが、今回もそれは変わっていない。
 今回は松永弾正久秀に(ゲームの影響もあって最近人気の)島左近柳生石舟斎と新次郎厳勝親子等々、史上に名高い人物が前作にも増して大挙登場する。
 特に、奸雄と悪名の高い松永久秀を意のままに操る敵の首魁として登場するのが、伝奇小説界の悪役トップスターにして日本のアレイスター・クロウリーともいうべき果心居士(この人物を実在のものとするか否かはさておき)ときては、いやが上にも期待はふくらむもので。
―個人的に日本史のダークヒーローNo.1はこの人だと思うんですが、そんなことはどーでもいい。

 ちなみに今作では果心居士を半人半妖の存在として描いており、ある秘密によって彼が半ば不老不死であり、人間や魔性のものを意の如く操れる、という設定になっているのだが……その姿は何となくルパン三世の映画第1作に登場したマモー、というよりはドラゴンボールのフリーザみたいに思えてくる。
 ただの仙人みたいな爺じゃ迫力出ないからかw 

 しかしながら前作と比較して、疾風ら光子姫を守る伊賀忍者達の存在感や描写がやや薄口な一方で、様々な人物、魔性の存在の描写に行数が割かれているためか、展開は読み進めているうちに冗漫にも思えてくる。クライマックス、一行が霊剣の隠された多聞山城にいよいよ乗り込むのは残り50ページを過ぎてから。奪還劇もさほどの盛り上がりを見せずに終わってしまう。
 光子姫一行の霊剣奪還劇や、彼女らと人妖入り混じる松永軍との激闘に加え、久秀とのその正室葦姫、島左近、柳生親子らの描写を織り交ぜ、それらを500ページあまりで全てまとめるのはさすがに無理と判断したか。前作で山中鹿之助らを登場させながら今一つ活かしきれていなかった反省もあるのかもしれない。

 霊剣奪還という当初の目的は一応果たすラストではあるものの、本当の決着を見せるのは続編(第3弾?)がある―という前提での今作のようにも思える。
「真の結末は次の第3弾ありき」な第2弾―映画三部作のPart2的な―って、何か騙されたような気分が残るというか、どうも好きじゃないんだが、今作に関してはこれはこれで愉しめたのでよしとするか、といったところ。本当の決着が見られるであろう続編が楽しみではあるし。

 もしもこれで終わりにされたら、それこそ噴飯ものだがw

 次回作では光子の使役する式神も、RPGのキャラクターよろしくさらに増えていそう?

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