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「ザ・ウーマン」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 曰く付きで語られるデビュー作「オフシーズン」 、その続編「襲撃者の夜」 のさらなる続編にして、昨秋('12.10)公開の同タイトル映画の小説版。 

「ザ・ウーマン」 J・ケッチャム & L・マッキー著(扶桑社ミステリー)

◆内容紹介(裏表紙から)
 弁護士のクリスは、森でハンティングの途中、小川に浸かる上半身裸の女を見つけた。女は大怪我を負い、ひどく汚れていた。その野性丸出しの姿に魅せられたクリスは、罠を仕掛けて、女を捕らえる。クリスは自宅の納屋の地下室に女を監禁するが、それは家族をも巻き込む惨劇の始まりだった―。鮮烈なデビュー作『オフシーズン』、その続編『襲撃者の夜』のキャラクターを引き継ぎ、鬼才ケッチャムが気鋭のホラー映画作家ラッキー・マッキーとともに作り上げた衝撃作。後日譚となる短編「カウ」を併録。〈解説・友成純一〉

 映画監督のラッキー・マッキーとの共著という体裁、さらに映画のノベライズ的な作りでもあるためか、従来のケッチャム作品に比較して、スプラッター描写がやけに派手というか即物的になった感あり。
 その一方で、他のケッチャム作品のような執拗なまでの人物の心理描写があっさり目になっていて、小説というよりは映画のシナリオを読んでいるような。まぁ、2時間程度の映画をこのプロットでやろうとしたら、こうならざるを得ないんだろうが、やや物足りなさを覚えてしまうのはケッチャム節に慣れてしまったからなのか。

 とはいえこの―特に人間側の―鬼畜っぷりは紛れもなくケッチャム作品。
 弁護士としてひとかどの成功を収め、名士として周囲からは羨まれるほどの人物であるクリス、その実態の何たる下種であることか。彼の皮膚の下1枚に隠された悪辣さ、倫理観の欠落した人でなしぶりは「黒い夏」 のレイや「襲撃者の夜」のスティーヴン他、ケッチャムの過去作品に登場する悪党を凌駕する感すらある。 
 それに対して、読み手の感情移入するべき人物―「襲撃者の夜」であれば元警官のピーターズなど―が今作では登場しない。クリスの下種っぷりをそのまま引き継いだ息子のブライアンを除き、妻も娘のペグも、そしてペグの異変を案じる数学教師のジュヌヴィエーヴも、クリスの圧倒的な黒さの前にただ蹂躙されるだけなのだ。

 結局、クリスの「悪」に対抗し得るのは、人間社会の軛から解き放たれている存在としての"ウーマン"だけであって、この3作目にして「悪辣な人間vsアンチ・ヒーロー(ヒロイン)」という対決構図が出来上がることとなるのだが……。
 第1、2作では獣人めいた人肉嗜食者、圧倒的な力を揮い人間を襲う怪物として描かれていた"ウーマン"だが。今作でのこの立ち位置の変化は、例えはズレているかもしれないが、映画「ターミネーター」で悪役として登場したT-800が、Part2では主役を守る側になってしまったのと似ているような。

 強大な悪役として登場した存在が、人気故にシリーズの中でそんな風に立ち位置を変えてくるのはともすると陳腐になりかねないようにも思うので、個人的にはあまり好みではない。
 とはいえ、"ウーマン"本人の意識は、あくまでも人間は狩る対象であり、時に狙われることもある存在として、当初から何も変わってはいないのだから、子供じみた"正義の味方"になるようなことはないだろうけれど。

  巻末には後日譚を描いた短編「カウ」が併録され、こちらもなかなかおぞましい。
 この分では第4作も書かれそうな予感。

 映画版で"ウーマン"を演じた女優、P・マッキントッシュの画像はこちら
 M・ジョボヴィッチやC・ゼタ=ジョーンズ系のなかなか素敵な女優さんなのだが、メイク技術というか女優魂というか、画像で見てもその変身ぶりはスゴいな、と。

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