「『超』怖い話ベストセレクション3 懺骸」 [Book - Horror/SF/Mystery]
「『超』怖い話」シリーズの中から、平山夢明が執筆した選り抜きを収録したベストセレクション第3弾。
◎「『超』怖い話ベストセレクション3 懺骸」平山夢明著(竹書房文庫)
◆内容紹介(裏表紙から)
新作描き下ろし5話を含む、平山夢明ベストセレクションシリーズ『「超」怖い話』第3集です。2003年のAから2008年のKまで、今読み返すともっと怖い70話を選びました。行きずりの男の部屋で起こった怪異「ワンルーム」、マンションのエレベーターでの恐怖体験「駆け込み」、マッサージ店に来るタレントには秘密が……「マッサージ」、神社で拾った物に纏わる不思議な話「神社の傘」、隣りが空き部屋だったので引っ越した女性を襲う恐怖「通告義務なし」などありとあらゆる恐怖が万華鏡のように次々に供される。 感動に満ちた泣ける思いで胸がいっぱいになっていても、この実話怪談を読めば、想像力がある限り際限なく身体中に、脳内に恐怖は入り込み、未来も過去も時間は消滅し、今、現在の怯え、震える感情に苛まれ、今を生きることができるに違いない……!
↑の内容紹介の「マッサージ」は女子高生が修学旅行先で遭遇した恐怖に纏わる話で、"来店するタレントには秘密が"は、ヘアスタイリストが語った「髪」だと思われる。
最近では実話怪談については執筆よりもアンソロジー(「FKB」シリーズ等)の編纂や監修がメインとなりつつあるような著者。それらで次の世代の執筆陣の作品を読むと、やはり何かしら―平山氏からの影響なり薫陶(?)を受けたのだなぁと感じることがある。事程左様に平山夢明という書き手が日本の"実話怪談"というジャンルに与えた影響は尋常ならざるものがあるようで。そのあたりは、「『超』怖い話」の現在の書き手の一人であり、FKB他でも活躍する松村進吉氏によるあとがき「五代目からの恨み言」に詳しい。
そんな著者が過去に発表した怪談70話に、書き下ろしの新作5話を収録したベストセレクションの第3弾。
ちなみに第2弾はこちら→
各話に登場する幽霊―というか怪異を起こす存在の生々しさ、グロテスクさというものは以前と変わらない。また、そういった存在以上に生きている人間の狂気や歪みが恐ろしく思える話も少なくない。後者については巻頭の書き下ろし作品「地獄になります」や「塩漬霊」などがその好例だろう。
その一方で、これは実話怪談というより、だいぶ創作が入っているよなぁ……と感じられてしまうものも以前に比べて目につくような気がする。あるいはメインのネタのアイデアを他所からヒントを得ていないか?というものも……。全般的に"単純な怖さ"という点ではやや控えめになってしまったようにも感じられ、裏表紙にある内容紹介(↑)の文言が何とも大げさに思えてしまう。この辺りはこのジャンルの作品を濫読してきたが故に、妙に慣れてしまい、純粋に怪談の怖さを愉しめなくなってしまった、という己の側の問題かもしれないが。
印象に残ったのは上記の書き下ろし2編の他、時間テーマのSFのような「八重洲にて」、典型的な曰くつき物件の2話「プリペイド・マンション」「コンバートマンション」、事情を語る女性の一言にゾッとさせられる「夜泣き」、常に女性から一方的にフラれてしまう某AV男優の、その理由「口笛」、呪いテーマの「十年累」、戦時下の陰湿ないじめとその報い「疎開先で……」など。
読了した後で気付いた。
実話怪談なんだから、もう少し暑くなってから読むべきだったな、と。
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