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「納豆に砂糖を入れますか?」 [Book - Public]

 ネットという双方向の媒体を駆使し、日本全国の<食の方言>を調査した「天ぷらにソースをかけますか?」の続編―というよりも、後編というべきか。

◎「納豆に砂糖を入れますか? -ニッポン食文化の境界線-」野瀬泰申著(新潮文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
あなたは納豆に砂糖を入れますか?「メンチカツ」と呼びますか「ミンチカツ」と呼びますか?「突き出し」ですか「お通し」ですか?正月に食べるのは鮭それともブリ?―ネットで集めた膨大な情報分析は、驚きと発見の連続。日本の食の境界線を実際に歩いた「糸魚川―静岡構造線」リポート付き。「NIKKEI NET」に掲載された『天ぷらにソースをかけますか?』に続く、待望の続編!

 '09年に読了し、ブログでも採り上げた「天ぷらにソースを入れますか?」。元々は日本経済新聞のホームページ「NIKKEI NET」で読者との双方向企画として連載された「食べ物 新日本奇行」をまとめたもの(企画は残念ながら'10年3月で終了している)で、本書も「天ぷらに~」に続いてこの連載からのもの。
 とはいえ著者の中では最初から2分冊、前後編での書籍化のつもりだったそうで、つまり本書は「天ぷら~」でのボツを集めたものではないとのことw

 まずタイトルの「納豆に砂糖」が、個人的にはえぇ~~~である(解説を書いた久住昌之氏と全く同じw)。
 私事になるが、父親は山形県北部の出身で、納豆には通常は醤油を入れる。だが時折塩を入れることがあって、父曰く「この方が納豆自体の味がわかる」らしいのだが、納豆には醤油が絶対であり、市販品についてくる納豆のタレすら使わない自分にとって塩納豆は食欲が丸きりわいてこない。
 考えようによっては醤油も塩も"しょっぱい味"では共通しており、その点では「納豆に塩」もわからないでもない。だが砂糖となると味も想像もつかないし、試してみる気にもならない……しかし、ある地域の人たちの”納豆に砂糖を入れる”という食慣習について、本文で示された合理的な理由には「なるほど」と納得させられる。

 さらに「すき焼きに入れるこんにゃくは『しらたき』か『糸こん』か」で、両者の区別(実のところ、それも現在では曖昧になりつつあるようで)を初めて知り、「せんべいは米粉か小麦粉か」「煎餅つったら米菓でしょうに」という思い込みが、実は食の方言であったことに気付かされ、「メンチカツorミンチカツ?」では一転、両者の分布の根拠が提示されぬことにモヤモヤし、「飴について」では”飴ちゃん”という言葉が単なる幼児向けの言葉でないことを知る……等々の10章のテーマで、今回も日本全国の食の多様性というものを―身近な料理や食材をテーマにすることで、窺い知ることができる。
 前編である?「天ぷらに~」と比べ「二者が東西ではっきりと分かれる」というネタよりも、ある地帯が突出して変わっているというネタが増えたような。これも著者が意図して振り分けたものなのだろうか。

 終章の第11章では「糸魚川―静岡構造線を行く」と題し、新潟県長岡市から隣の富山市までの日本海沿い、さらにフォッサマグナに沿って南下しながら長野県内、山梨県を経て静岡県富士宮市まで18日間で移動しながら、カツ丼はソースかつ丼か煮カツ丼(卵とじ)か、薬味のネギは青か白か、馬肉食や虫食の分布などなど、食の境界線の東西南北を確認していく。前編では東海道を辿りながら東西の食文化の境界を確認していたが、今回はそれにも優る労作であり、興味深く面白いレポートになっている。

 地域特有の食文化や食の慣習というものは、その土地の気候風土、歴史と深く根付いていて、交通の便や食品保存技術が進歩しても残り続けるのだなぁ、と……とはいえ、家族形態、(特に)地方農村部の生活圏の変化、それに流通や小売業態の大手集約等々などで、そういったものも今後徐々に変わったり、消えていってしまう運命なのかもしれないが。

 せめて、日本の食文化が持つ多様性という豊かさは、失われて欲しくないと思う。 

 元ネタの連載である「食べ物 新日本奇行」は上記の通り終了しているが、著者である野瀬泰申氏がそれに代わって手掛けている連載企画が「列島あちこち B級グルメ」
「B級グルメ」なんてやや手垢のついたテーマじゃないかしらん、とは思うが、そこは著者のこと、単なる地域振興策の片棒を担ぐものでなく、旧企画同様に、日本の食の多様性という豊かさを再発見するようなものになっている……ようではある。
 

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SORI

るねさん こんばんは
納豆に砂糖は えぇ~ です。でも塩分は控えめになるし試して早く結論を出してみたいと思っています。果たしてどうでしょうか。
甘納豆のように、おやつ感覚になるでしょうか。
by SORI (2013-10-13 01:11) 

獏

食習慣は方言と同じくらい異なるのではと思います^^)
我が連れ合いは砂糖を入れます(驚)
私が居るときは入れずに出してくれますが^^)
私はネギ、醤油、卵黄、辛子が必須のセットです☆


by 獏 (2013-10-13 07:45) 

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

確かに、西と東では、食文化も違いますね。
自分は、」西から東に転勤してきたので、
最初は、東の食文化に戸惑いましたね。
今は平気ですが、西の食文化が今でも好きです。

by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2013-10-13 10:03) 

ぼんぼちぼちぼち

幼少の頃、天ぷらは、塩コショウで食してやした。
群馬の山奥出身の母親が 塩コショウがハイカラだと盲信していたからでやす。
天つゆは「そんなもんマズーい!捨てちまえー!」と指示され捨ててやした。
大人になって初めて天つゆの味を知り 美味しいと思いやした。

ソースは試したことないでやすが 違和感なく合うと思いやす。
白魚や穴子のような淡い味の素材のものは 塩が一番合うと思いやす (◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2013-10-13 10:52) 

るね

>皆さん
コメント、どうもありがとうございました。
やはり「食習慣」というものは皆さんそれぞれ、様々なものがあるんですね。
"食の方言"とは言い得て妙、なものだなぁと、いただいたコメントを拝見して改めて感じました。

個別の返信はこの後で。
by るね (2013-10-13 22:13) 

るね

>SORIさん
本文によれば、納豆に砂糖を入れると、醤油を入れた時と比べ糸の引き方が格段に違うそうです(塩でもかなり増えますが、砂糖はその上を行くのだとか)。
北東北は低温のため、昔は納豆の発酵が不十分になりやすく、それを補う理由もあったのだとか。
慣れない自分からするとえぇぇ~~ですが、食べてみたら案外ハマる場合もあるかもしれませんねw

>獏さん
食習慣は方言に同じ、まさにその通りだと思います。知らない人間からすると奇異に思えても、そこにはちゃんと歴史的な理由があるのですよね。
奥様はもしかすると、秋田ないし山形あたりのご出身でしょうか?
>ネギ、醤油、卵黄、辛子が必須のセットです☆
最近は卵こそ加えませんが、ネギ、醤油、辛子入りの納豆なら最高の御馳走の一つですね♪
by るね (2013-10-13 22:22) 

るね

>横 濱男さん
なるほど、西日本のご出身だったのですか。
確かに醤油、出汁の素材一つを取っても、東西ではかなり違いがありますよね。慣れ親しんだ味が好きなのは自然なことかと。
以前記事をUPした「天ぷらにソースをかけますか?」は、東西食文化の差異について書かれた記事が多いので、かなり楽しめると思いますよ。機会があれば一度見てみて下さい。

>ぼんぼちさん
天ぷらを塩で食べさせる店はよくありますが、塩コショウですか!……でも、塩のみよりも味が加わって、なかなか旨いかもしれません。揚げたてならあのパリパリの食感も楽しめますし。

醤油信仰的な面がある自分は、魚には半ば無分別に醤油を併せてしまいますが、よく考えると淡白な味の魚では、醤油で素材本来の味を損ねていたのかもしれません。猛省。

by るね (2013-10-13 22:32) 

いっぷく

うーむ
さすがに納豆に砂糖は入りませんね
それと、メンチカツですね
by いっぷく (2013-10-14 05:35) 

るね

>いっぷくさん
コメントありがとうございました。

砂糖NGで"メンチ"派、私も同じですね。
ただ、ミンチといったら挽き肉そのものの意ですし、対象物についてより正確なのはミンチの方なのかもしれません……。


by るね (2013-10-15 02:19) 

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