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「江戸・東京 歴史ミステリーを歩く」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 江戸=東京の歴史的、文化的背景に彩られた(広義の)ミステリー・スポットを採り上げ、東京の“妖しい”側の顔を紹介するガイドブック。

「江戸・東京 歴史ミステリーを歩く」編)三津田信三(PHP文庫)

◆内容紹介(裏表紙から)
「飛来する将門の首」「四谷怪談」「置いてけ堀」「番町皿屋敷」……江戸・東京を舞台にした怪奇談は非常に多い。そこは古より魑魅魍魎が渦巻く魔界都市なのだ。本書では、そんな都内の怪異スポットを人気ホラー作家や妖怪研究家、気鋭のノンフィクション作家、法学博士などが独自の視点で案内。紙上ミステリー散歩を楽しむのもよし、実際に足を運ぶのもよし、東京の不思議な一面が見えてくる。
『ワールドミステリーツアー13 (4)東京篇』を再編集。

 上記にもあるように、本書は作家・三津田信三が編集者時代に企画し、同朋舎より'98年に刊行された『ワールド・ミステリー・ツアー13〈4〉東京編』を、文庫化にあたって再編、改訂したもの。

 項目と執筆者は下記の通り。

  • はじめに (三津田信三)
  • 第1章 東京の将門伝説を巡る (加門七海)
  • 第2章 四谷怪談の真相に迫る (村上健司)
  • 第3章 岡本綺堂の怪談に震える (島村菜津)
  • 第4章 東京・妖怪お化けツアーを歩く (多田克己)
  • 第5章 江戸の捕物と拷問の世界を知る (伊能秀明)
  • 第6章 妖怪博士の妖怪庭園に遊ぶ (千葉幹夫)
  • 第7章 乱歩の東京幻想空間を彷徨う (三津田信三)
  • 第8章 お化け建築家の物の怪を探す (青木祐介)
  • 第9章 古本屋探偵、神田神保町に現わる (紀田順一郎)
  • 第10章 謎の大江戸線、首都の地下網を行く (秋庭俊)


「将門の首塚」や四谷怪談、番町皿屋敷や本所の七不思議といったおなじみのネタから、拷問器具のコレクションで有名な明治大学刑事博物館、“妖怪博士”井上円了の哲学堂公園、明治の建築家・伊東忠太による、化け物に彩られた建築物を訪ね歩き、最後は東京の地下にまつわる都市伝説を地下鉄大江戸線と絡めて紹介する―という趣向。

 ざっくり言って前半(5章)までが幕末まで、後半(6章)は明治以降の話題といったところ。読む前は定番ネタの1~2章や、江戸の怪談スポット総ざらえといった4章のような内容ばかりかと勝手に予想していた側にとっては、乱歩が描いた帝都東京の風景や、井上円了の哲学堂公園、伊東忠太設計の建築作品などは、「江戸」とは異なる東京の妖しい側面を改めて見せてもらったような気分。
 哲学堂公園は名前こそ聞いていたもののそこまで摩訶不思議な空間とは知らなかったし、伊東忠太などは初めて知った名前。実は本書でも取り上げられている忠太の作品が、自宅からの徒歩圏内にも一つあったりする。
 10章の大江戸線にまつわる都市伝説?的ネタはただのトンデモ話なのかあるいはタブー……まさにアンダーグラウンドな話題なのか。現在進行形なものだけに何とはなしに不気味で、本書中でもやや異彩を放っているような。 

 京都出身の著者が京都の持つ“闇”を綴った「怖いこわい京都」と読み比べると、東京をいくら妖都といったところで、その闇の深さ、禍々しさやおどろおどろしさはあちらよりも薄いというか、まだ明るさを感じられるような気がする。それは自分が関東人で子供の頃から東京が身近だったからか、それとも都市としての歴史の長さに伴う(おり)の量の差によるものなのか。

 9章を読んでいたら久々に神保町に行きたくなった。最近はめっきり古書渉猟もしなくなったし、もとよりあの古書店街で買った古本などほんの数冊に過ぎないのだけれども。
 まずは時間のある時に、中野の哲学堂公園まで足を運んでみようかと思う……ただし、天気のいい日に。

 本書の企画の元となっている「ワールド・ミステリー・ツアー13」、東京以外にも世界の各都市を扱っており、本書が好評なら他も文庫化されそうな模様。
 シリーズ化と続刊を期待したい。

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