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「怪談実話系/愛 書き下ろし怪談文芸競作集」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 怪談文芸競作集の人気シリーズ、節目の第10弾。

「怪談実話系/愛 書き下ろし怪談文芸競作集」編)「幽」編集部(MF文庫ダ・ヴィンチ)

◆内容紹介(裏表紙より)

愛あるところに怪談あり

シリーズ十作目のテーマは「愛」。
辻村深月「七つのカップ」/香月日輪「隣のベッド」/加門七海「とある三味線弾きのこと」/福澤徹三「怪だとか」/高野秀行「悪霊に魅入られて」/黒史郎「生霊志望」/松村進吉「ある姉妹」/小島水青「犬小屋のこと」/田辺青蛙「鉄道模型のある喫茶店」/岩井志麻子「皆様に愛されている、でもやっぱり怖い、あの女」。
虚実のあわいを愉しむ“実話系”怪談集。

 新年早々に読了したのは、「よりによって」というか「やっぱり」な、この1冊だったw
 ま、今年も(趣味で)手に取る本は、こういった系統ばかりとなりそうだが―。 

 前作の「怪談実話系/魔」を読了したのが4月下旬(刊行は2月)だから、おおよそ8か月ぶりの新作(こちらも、刊行自体は昨年11月)。

 収録は全10編。辻村深月、香月日輪の両氏が初参戦。
 以下、簡単な感想など。

  • 七つのカップ(辻村深月)
    交通事故で我が子を失った女性と、小学生の少女との交流。
    この手のジェントル・ゴースト・ストーリー風なものは理由もなく避けてしまうのだが、ベタにお涙頂戴にながれることもなく、昨今のお約束的にバッドエンドにながれることもなしに、手堅くまとめたというか。
  • 隣のベッド(香月日輪)
    この作家はこちらがイマイチだったので期待せずに読んでみたが、正調な病院怪談といった趣き。展開も結末も、それにラストの一言もよくあるパターンではある、が。
  • とある三味線弾きのこと(加門七海)
    素人ながら蠱惑的なまでの技量と音色を持つ三味線弾きの男性の秘密。
  • 怪だとか(福澤徹三)
    「生霊」「アルタ前」「弾丸登山」の3話で構成。どれも王道。
  • 悪霊に魅入られて(高野秀行)
    タイ民族に根付く物の怪"ピー"に絡め民俗信仰事情。日本の常識に照らしてみれば荒唐無稽にも思えるが、迷信や精神作用によるものと一笑に伏せない、リアルな怖さがある。
  • 生霊志望(黒史郎)
    作家の実体験(という体で)を綴った、ネットストーカー譚。
    「あなたが毎晩ネットで話している人たちは、見知っている人ですか?」
    この一言は、わかっているつもりでも改めて考えると、背中に冷たいものが走る。
  • ある姉妹(松村進吉)
    妹の壮絶な心霊体験を紹介したい―という女性を取材した作家。姉妹の話を聞くうちに覚えていく違和感……。
  • 犬小屋のこと(小島水青)
    美人なのに変な男ばかり付き合う先輩が語った、「ほんとうに好きだった男」の話……何だろうこのもやもや感。
  • 鉄道模型のある喫茶店(田辺青蛙)
    作家が深夜の格好の仕事場に見つけたのは、老女が1人で営む鉄道カフェ。この作家独特のユーモラスな口調で語られていくものの、この人の日常って、実は相当恐ろしいんじゃなかろうか。
  • 皆様に愛されている、でもやっぱり怖い、あの女(岩井志麻子)
    いつまで引っ張るんだろうこのネタ……と思っていたら、今回は周囲のヘンな人間や妙な話を「あの女」に絡めて書く、という方向にシフトしてきたようで。

「愛」というテーマからして、もっとドロドロした恋愛絡みの話もあるかと思いきや、意外に口当たりはライト。
 よくよく考えてみれば、怪談に描き出される人間の営みというものは、須らく人間同士の関わりにあるものが殆どなのだから、取り立てて「愛」と言わずとも、自ずとそれも含まれているものなのかもしれない、なんて。 

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