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「そっと、抱きよせて 競作集〈怪談実話系〉」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 メディアファクトリー(MF文庫)から刊行されていた人気シリーズが、角川文庫にレーベルを移動しての第2弾。

「そっと、抱きよせて 競作集〈怪談実話系〉」 編)『幽』編集部(角川文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙より)

正月の二日に女が死ぬと、七人道連れにする―田舎町で囁かれる不吉な言い伝え、古いマンションに漂う見えない子供の気配、霧深き山で出会った白装束の男たち、どこからともなく聞こえる「ほおみい」という謎めいた囁き……現実と虚構のあわいに広がる不穏な世界、かすかな不協和音を、日本唯一の怪談専門誌「幽」に集う10人の人気作家が紡ぎだす。読む者を鮮烈な恐怖の世界へと誘う、豪華書き下ろし競作集。解説・東雅夫 

 今年に入ってから、MF文庫で購入している本のいくつかが、角川文庫で新装されて書店に並んでいるのを見かけていた。刊行されてから何年も経って絶版になったわけじゃなし、なんでまた……と思っていたら、メディアファクトリーは3年前に、リクルート傘下から角川のグループ子会社になっており、今年になって完全に吸収合併されていたということを、今頃になって知った。
 それに伴ってMF文庫ダ・ヴィンチの既刊(特に「幽」絡み)のいくつかが角川文庫から新装刊されたのだ、と。

 MF文庫ダ・ヴィンチの装丁(特に背表紙)が結構気に入っていたので、このレーベルが消滅してしまったのは個人的に残念……。

 それはさておき。
 角川文庫に異動しての〈怪談実話系〉第1弾「ずっと、そばにいる―競作集〈怪談実話系〉」は、実は同シリーズの1冊目に黒史郎氏の書き下ろしを加えた内容。書店で最初に見た時「ん、新刊?なんで角川文庫?」と思い、目次を見て「あれ、これ持ってるじゃん。なんで角川から新装刊?」と、?マークが脳内に並ぶまま買わずにいたのだけれども(理由を知ったのはだいぶ後のこと)。
 この第2弾は完全に書き下ろしの新作のみなので、シリーズ通算としては今年1月に読了した「怪談実話系/愛」に続く、第11弾ということになるか。 

 前置きがズルズルしてしまったので、収録作品について一行感想。
 全10篇。

  • 私の街の占い師(辻村深月)
    ”すでに起こっていたことについて、後から出てくる話には信憑性が怪しいものが多い”
    確かにその通りなんだが、占いってのは得てしてそういうものなのかも。
  • 七人道連れ(香月日輪)
    「正月の二日に女が死ぬと、七人道連れにする」そんな某地区の言い伝えから始まる、聞き書きネタの連作。死者が 引っ張るとか、やっぱりあるんだろうか。それも結果からそう思えるだけなのか。
  • 猫と七代目(藤野恵美)
    自分の生い立ちを書いた(風の)短編だが……これこそ虚々実々のあわいを味わう作品、か。
  • 獣の夜(朱野帰子)
    男性にとっては、女性が”母親”になるということは、ある意味別の生物に変身してしまうくらいの変り様に感じられるのかも(未だ身を以て経験してはいないけれど)。
  • 山に抱かれて―ミミカの遠野物語(伊藤三巳果)
    最近、改めて「遠野物語」を読んだばかりなので、なるほど、そうだろうなぁ、と。
  • 江の島心中(小島水青)
    傘を貸したことが縁で、芸者と顔見知りになった若い魚屋。彼は請われるまま江の島行きに付き合うことになるが……。物語もこの芸者同様、何とも捉えどころがない、というか。
  • 霧中の幻影(安曇潤平)
    山では「らぬ蛇に崇りナシ」ってことなのか。
  • 愛しい呪い(松村進吉)
    猫がどうも苦手な自分にとっては、家に猫が10匹いることを想像した時点で地獄に等しい
  • 猿工場の怪(朱雀門出)
    「知り合いが心霊スポットへ行った話」がいつの間にか……関西弁の会話文で綴られるのは、この作家お馴染みの世界というか。
  • 囁 き(詠坂雄二)
    友人が語った「”ほおみい”と囁きが聞こえると、何かしら起こる」という話。語り手はその意味を考えようとするが、3年後に会った際には、その友人はその話をすっかり忘れていた。
    ”ほおみい”がhold meなのかfor meなのか、あるいは別の言葉なのかはわからない。本アンソロジーのタイトルからすれば、やっぱりhold meなのか?

 単なる実話恐怖譚とも、また怪奇小説とも違う、何やら怪談色の色味が強いエッセーのような感じ。……うーん、何だろう。時折足を運んでいたレストランが移転して新装開店したら、人は同じなのに雰囲気も味も変わったように思える、みたいな。 

 岩井志麻子女史の「あの女」シリーズは、ついに終わったようで今回は収録なし。散々「いつまで続けるのよ~」と言いながら、いざ載らなくなるとわずかな物足りなさも? 
 ……いや、案外次刊でしれっと新作が載っているのかも……。

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獏

お祝いコメントありがとうございました^^)

by 獏 (2014-09-20 11:15) 

Sou

そうか、そういえば岩井先生の「連載」が終わっていますね。
Meiを意識した女性向けのシリーズになるのか、そのあたり方向性を模索中と言うところなのでしょうか。
by Sou (2014-09-23 20:17) 

るね

>Souさん
岩井女史の「連載」、これが終りなのかは次巻を見て、というところでしょうか。
版元が角川に移って、表紙含め女性向けにシフトしてきたような気がしないでもないですね。仰る通り、模索中なのだと思いたいですが……。
by るね (2014-10-17 22:18) 

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