「ナイトランド・クォータリー 新創刊準備号」 [Book - Horror/SF/Mystery]
気付けば本のネタも昨年9月以来Upしていなかった。月2回ほどの更新ペースな上、手軽に書けるネタしか書いていなかったからなのだけれども。
その間も―以前に比べてペースも落ちてはいるものの―読了した本はぽつぽつとあるので、少しずつでもここに記事にしていきたいとは思う。
さて。
"幻視者のためのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌"「ナイトランド」が、第7号を以て昨年5月に無期休刊を宣言していたことは、7月に書いた記事で触れていた。
休刊の理由を察するに、このニッチ的なジャンルの雑誌を刊行していくことの難しさを思い知らされたわけで(暮れには早川書房の「SFマガジン」「ミステリマガジン」の2大誌が交互に隔月刊となったし)。
無期休刊≒廃刊だろうな……と思っていたのだが、復活も案外に早かったようで、発行がアトリエサードに移り、誌名も「ナイトランド・クォータリー」と変わって、今年5月に新創刊となるのだとか。
で、今回は昨年11月末に出た「新創刊準備号」。
◎「ナイトランド・クォータリー 新創刊準備号 幻獣」(発行:アトリエサード)
◆内容紹介
さまざまな物語などに登場し、われわれの想像力を掻き立ててきた「幻獣」とは何か……。
井上雅彦、立原透耶、石神茉莉、間瀬純子による書下し短編を収録した他、ラヴクラフトの「ダゴン」を新訳+カラーヴィジュアルの絵巻物として掲載!
充実のブックガイドやカラー「幻獣的オブジェたち」、「アメリカの『幻獣』たち」も掲載し、幻獣の魅惑にあふれた1冊です!
幻視者のためのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌《ナイトランド》の誕生と休眠、そして復活までの軌跡も収録。
- 白澤の死 立原透耶
- 驚異の部屋 石神茉莉
- 血の城 間瀬純子
- 聖アントワーヌの変奏 井上雅彦
- 藤原ヨウコウ幻想絵巻 ダゴン H・P・ラヴクラフト
- ラヴクラフト「ダゴン」の翻訳をめぐって 植草昌実
- 幻獣ブックガイド 植草昌実
- 幻獣的オブジェたち 沙月樹京
- アメリカの「幻獣」たち~恐竜、インディアン、海賊 徳岡正肇
- ≪ナイトランド≫の誕生と休眠、そして復活までの軌跡
一読して、誌面の作りがだいぶ変わっていることに気付く。旧「ナイトランド」はクトゥルー神話にやや偏っていた面はあるものの、これまで本邦にほとんど紹介されていない海外作家の短編が新旧問わず掲載されるのが、誌面構成の中心となっていた。が今回、海外作品はHPLの「ダゴン」という有名作1本のみ(新訳+イラスト付ではあるが)。他の4作は皆日本人作家で、かつて「ナイトランド」に作品を寄せた作家になる。
「白澤の死」は、北宋時代に名判官と謳われた包拯の少年時代、神獣である白澤の死を探る中華幻想ミステリ仕立て。父の死後、彼が遺した≪驚異の部屋(ヴンダーカンマー)≫を継承することとなった男を描いた「驚異の部屋」は、固有名詞こそ出てこないものの、登場する存在は明らかにクトゥルー神話のものだろう。「血の城」は架空の古代中国(中央アジア辺り?)を舞台に、HPLの「ダンウィッチの怪」を持ち込んだような話だが、異形の王子よりもずっと恐ろしいのは……。 旧「ナイトランド」で名作発掘的な企画を手掛けていた井上雅彦「聖アントワーヌの変奏」は、『帽子の女』『岩礁にて』『カシャ』の3篇からなるオムニバス。自分がイメージしたものに酔ってずらずらっと書いてしまう、この作家の悪いクセがでちゃったな、と。
「ダゴン」は新訳らしいが、実は自分は初めて読む作品だったり。植草昌実が今回の新訳を手掛けるにあたり、本作を短編小説でなく散文詩と意識して翻訳したと書いていたが、 藤原ヨウコウのカラーイラストも相俟って、短い作品でありながらイメージが一層強烈に想起されるような。
全体的に旧「ナイトランド」の雰囲気はあまり残っていないように感じられる。日本人作家メイン、さらに井上氏の作品が掲載されているからというわけでもないが、どちらかといえば―此方も休眠状態になっている―書き下ろしアンソロジー・シリーズ「異形コレクション」の別冊を読んでいるような気がしないでもなかった。
とはいえ、これもあくまで”新創刊準備号”ということだからだろう。海外作家の本邦未紹介作、旧誌から続く連載なども含め、5月の新創刊時には、かつてのような読み応えあるボリュームと内容になっていることを期待したい
ブログランキングに参加しています。↑よろしければ ↑1クリック お願いいたします。
明けまして御目出度う御座います!
今年もよろしくお願いします☆
by 獏 (2015-01-13 20:25)