「ナイトランド・クォータリー Vol.01」 [Book - Horror/SF/Mystery]
昨年5月に無期休刊となったホラー&ダーク・ファンタジー専門誌「ナイトランド」だが、その後発行元を変え、「ナイトランド・クォータリー」として装い新たに復活することが発表され、11月には新創刊準備号が刊行されていた。
予告通り、先月に新創刊となった。
◎「ナイトランド・クォータリー Vol.01」(発行:アトリエサード)
◆内容紹介
幻視者のためのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌として人気を集めていた≪ナイトランド≫が、≪ナイトランド・クォータリー≫として、いよいよ新創刊!
新創刊号の特集テーマは、「吸血鬼」! キム・ニューマンなど翻訳8編、日本作家3編の厳選傑作短編を掲載した他、エッセイやブックガイドで吸血鬼の魅惑に迫ります!
掲載作家・作品の解説も掲載して、読書ガイドとしても価値ある1冊です。
- 【特集】吸血鬼変奏曲
塔の中の部屋 E・F・ベンスン
血の約束―ドラキュラ紀元1944 キム・ニューマン
復讐の赤い斧 エドワード・M・アーダラック
ホイットビー漂着船事件 レイフ・マクレガー
太陽なんかクソくらえ ルーシー・A・スナイダー
長い冬の来訪者 ウィリアム・ミークル
エイミーとジーナ セシル・カステルッチ
家族の肖像 スティーヴ・ラスニック・テム
闖入者 井上雅彦
≪一休どくろ譚≫かはほり検校 朝松健
In the gathering dusk 石神茉莉
- 【コラムなど】
Night Land gallery 清水真理~吸血鬼への思い 沙月樹京
魔の図像学(1) エドヴァルド・ムンク「吸血鬼」 樋口ヒロユキ
キム・ニューマンと≪ドラキュラ紀元≫ 牧原勝志
ヴァンパイア・カルト 柳下毅一郎
ヴァンパイアの情念、理性への反逆 岡和田晃
名訳と新訳―二つの「吸血鬼ドラキュラ」 植草昌実
吸血鬼小説ブックガイド 牧原勝志
未翻訳・吸血鬼小説セレクション 植草昌実
翻訳作品/創作解説
その他……
邦訳作品があまりに有名な「ダゴン」(新訳ではあったけれど)のみで、他は全て日本人作家の書き下ろしだった新創刊準備号。今後は≪ナイトランド≫既刊とは誌面作りを相当変えてくるのかと思ったりもしたが、Vol.1からは海外作品の紹介が主体だったかつての雰囲気をきっちりと継承したようで。
新創刊号の特集テーマは”吸血鬼”。Vol.7まで出たホラー専門誌なら既にやっていてもおかしくない定番テーマのはずだが、クトゥルー色が強かった旧≪ナイトランド≫では少々そぐわなかったか。新たな発行元のアトリエサードはアートやサブカルチャー、ゲーム、それにゴシック系に強い出版社のようなので、このテーマはむしろ新創刊号としてぴったりだったのかもしれない。
海外作品8篇、国内作品が3篇。どれもやや短めで、作品によってはもう少し長かったらと思うものも無きにしも非ず。
冒頭の「塔の中の部屋」は20世紀初頭の作品。英国の古典怪奇小説に括られるのだろうが、ベンスンの手練れの筆にかかれば生々しく恐ろしい吸血鬼譚になる。「血の約束―ドラキュラ紀元1944」は大河シリーズともいえる「ドラキュラ紀元」第四部の序章なのだとか。シリーズを読んでいれば面白さもより味わえたのかもしれない。
アメリカでは西部ものとホラー/ファンタジーを融合させた”ウィアード・ウェスト(Weird West)”なるジャンルが、小説や映像作品、ゲーム等で確立されているんだそうで、「復讐の赤い斧」もその一作品。白人の吸血鬼に家族を奪われたネィティブ・アメリカンの男たちの復讐譚だが、これなんて特にボリューム増で読みたい作品。
「ホイットビー漂着船事件」はB・ストーカー作「吸血鬼ドラキュラ」中の一エピソードをミステリ仕立ての外伝にしたもの。吸血鬼小説の正典ともいえるストーカーの作品は恥ずかしながら未読なのだけれども、探偵役がラストで真相に直面した時の恐怖はなかなかのもの。「太陽なんかクソくらえ」は≪ナイトランド≫Vol.7でサイバー・パンキッシュなゾンビ+吸血鬼譚「マグダラ偏桃体」が掲載されたルーシー・A・スナイダーのショートショート。今回は吸血鬼と、語り手である……?
近未来のディストピアを舞台にした吸血鬼譚「長い冬の来訪者」は、何とはなしにS・キングの描く吸血鬼像を思わせる。
40年の間年を取っていない吸血鬼のエイミーと不治の病に侵されたジーナ、2人の少女の優しく切ない友情を描いた「エイミーとジーナ」、そしてラストの「家族の肖像」は、静かに餓え、朽ちていく吸血鬼一家と、家族を守ろうとす苦闘する父親の可笑しくも物悲しい姿。著者S・R・テムの作品が新たに邦訳されるのは17年ぶり(!?)だとか。本国では現役バリバリ、新たな短編集も刊行されているらしいのに、何とも勿体無い。
続いて国内作家の作品3篇。
「闖入者」は著者らしい軽妙なひねりのあるショートショート。そういえば吸血鬼テーマはこの作家好みの題材だったか。朝松健の「≪一休どくろ譚≫かはほり検校」は、かつて『異形コレクション』でも展開されていた”ぬばたま一休”シリーズの新作。この連作の一休宗純は青年僧ではなく50代の老境に差し掛かる姿(となるよう)だが、この新作が読めるのは素直に嬉しい。それだけにボリュームが抑え目なのはやや残念だが。それと、≪ナイトランド≫で連載していたThe Faceless Cityは結局どうなっちゃったの?
石神茉莉「In the gathering dusk」は、ドール作家の姉と吸血鬼となることを選んだ妹、双子の姉妹の物語。表紙並びに口絵写真の人形作家、清水真理とのコラボ作品らしい……のだが、好きな人はきっと好きなのだろうな、とだけ。
その他、コラム記事も特集テーマや収録作品に関連した内容となる。「ヴァンパイア・カルト」はアメリカにおけるヴァンパイア事情というか、フィクションの中の存在だったヴァンパイアがサブカルチャーの1ジャンルとして、さらにはカルトとして人間に影響を及ぼし、事件となってしまうケースが多々あるのだとか。その意味では現代社会にも”吸血鬼”は密かに存在しているということなんだろう。
「吸血鬼小説ブックガイド」「未翻訳・吸血鬼小説セレクション」を見ると”吸血鬼”が長きにわたって人気のテーマであることがわかる。長編の翻訳も進んで欲しいが、かつてはこのテーマの良質なアンソロジーがいくつもあったのだから、未翻訳のアンソロジーの紹介も進んでくれたらいいなとも思う。
休刊前に比べページ数は20数ページほど減、税抜価格は据え置き、収録作品の水準は期待を裏切らなかったけれど、全体的にテーマに沿ったものが内容の大半を占めて雑誌的なバラエティさがなくなった分、雑誌というよりテーマ別ムックになったような気がしないでもない。Vol.2は8月刊行の予定だが、この質を保って続いていって欲しいと切に願う。
……黎明期の日本SF作家の”ホラー的”作品を紹介する、井上雅彦の『センス・オブ・ホラー、ブラッド・オブ・ワンダー』はリニューアル後も続けて欲しかったけれど、誌面の雰囲気に合わないということなのかな……ちと残念。
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昨夜はありがとうございました。
by 向日葵 (2015-06-28 05:15)
昨夜はお疲れ様でした、またお会いしましたら
宜しくお願い致します。
by kinkin (2015-06-28 07:37)
昨日はお疲れさまでした。
今後ともよろしくお願いします。
by NO14Ruggerman (2015-06-28 07:47)
昨日はいらしていただけて とても嬉しかったでやす。
国分寺の喫茶店の話なども過去記事で書かれておられたのを記憶していたので
会ってお話してみたいなぁと 以前から思っておりやした。
それにしても、お料理の量とタイミングはよろしくなかったでやすね。
主催者として反省しきりでやす。
次回6月30日公開の記事にて、みなさんへの御礼・反省点・次回開催しようと考えている別のお店についてなど 綴らせていただこうと思っていやす。
閲覧いただけたら幸いでやす・ぺこりっ
by ぼんぼちぼちぼち (2015-06-28 10:59)
昨夜はお初にお目にかかれて光栄でした^^)
ぜひまた☆☆☆☆
武蔵野線に乗れば近いかも~(@w@;))
by 獏 (2015-06-28 14:24)
昨日は本当にありがとうございました。
盛り上がりましたね。
楽しかったです。
テニスは全く詳しくないのですが、
錦織くんの凄さには驚いています。
彼は日本の宝ですね。
by 青山実花 (2015-06-28 15:23)
お客様が帰られ、やっとブログを開く事が出来ます。 遅くなりましたが、昨夜は本当にお疲れ様でした!
またお会い出来る日を楽しみにしていますので、
どうぞ宜しく!それにしても飲み過ぎました〜!
by Hide (2015-06-28 16:54)
昨日はお疲れ様でした
あまりお話ができませんで申し訳ないです
また宜しくお願いします
by さる1号 (2015-06-28 17:43)
こんばんは、昨晩はオフ会お疲れ様でした。
私もテニスをする身でありながら今回あまりお話できなかったのが残念でした。またの機会にお会いできることを楽しみにしております。
取り急ぎ本日オフレポをアップしましたので、気が向いた時にでもお読み頂ければ幸いです。
それでは今後とも宜しく御願いいたします。
by koten (2015-06-28 21:39)
>コメントをいただいた皆様
昨日のオフ会はお疲れ様でした。
初参加ながら、面白いお話と旨いお酒で、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。どうもありがとうございます。
次の機会にお目にかかることがありましたら、またよろしくお願い致します。
後ほど改めてご挨拶に伺いたいと思っております。
そして主催のぼんぼちさん、本当にありがとうございましたd(^_^o)
by るね (2015-06-28 22:18)