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「ナイトランド・クォータリー Vol.03」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 書きかけたブログ記事を下書き保存にしておく事が多い。特に本関連のことを書こうとしていて、時間があまりないとかどーにもうまくまとまらない場合とかに、とりあえずタイトルと基本情報だけ入れておいて保存しておくのだが……気が付いてみると下書き保存の記事がかなり増えていた。
 もちろん、昨年更新をほとんどサボりっぱなしだったことも一因だが。

 もとより、新刊とか話題の本には一向に手を出さない偏食ならぬ偏読者のブログなので、古い本の記事を書いたところで一向に構わぬのだろうが、いかんせん時間が経つと細かい内容を忘れていってしまう。短編集やアンソロジーとなると、作品タイトルを見た時(えぇっと……これどんな話だっけか?)となってしまうことも。

 読了したのに下書き記事すら起こしていない本も相当あるのだが、更新のリハビリがてら(?)、ぼちぼちと公開していこうかと。……といってまた滞りがちになる可能性もなきにしもあらず。

 ということで。


 前回に引き続き、ホラー&ダーク・ファンタジー専門誌「ナイトランド・クォータリー」の、昨年11月下旬に刊行された第3号。今月か来月には出るであろう?第4号を読了する前に、また今号で紹介されていた本を購入、読了していたこともあるので、忘れないうちに記事にまとめておく。

「ナイトランド・クォータリー Vol.03」(アトリエサード刊)

◆内容紹介
幻視者のためのホラー&ダーク・ファンタジー専門誌《ナイトランド・クォータリー》Vol.03は、幽霊の恐怖を描いた物語の特集! 霊はなぜ怖いのか、幽霊の恐怖を描いた物語は、いつの時代のどの作品にまで遡れるか。圓朝、ディケンズ、南北、シェイクスピア―幽霊をあつかった作品を、時代を追ってたどるだけでも、本が数冊書けることでしょう。その数の膨大さや歴史の長さは、吸血鬼の比ではないでしょうから。
本号では、英米とカナダの最新の幽霊小説と、ゴースト・ストーリー作家の古典作品、日本作家の書き下ろしと、様々な幽霊の物語を集めてみました。

  • 【特集】愛しき幽霊(ゴースト)たち
    手の幽霊 J・S・レ・ファニュ
    誰にも傷つけさせはしない D・マレル
    死の舞踏 A・ブラックウッド
    心は罪人の鏡 A・スラッター
    帰還 I・ナヴァロー
    忘れないで N・キルパトリック

    ≪一休どくろ譚≫たそかれの宿 朝松健
    消えない怨火―東京奇談新聞控 橋本純

  • 【コラムなど】
    Night Land gallery 山下昇平  沙月樹京
    魔の図像学(2) A・コッラディーニ 樋口ヒロユキ
    映画「ウーマン・イン・ブラック2 死の天使」
     四十年後の「亡霊の館」  植草昌実
    映画「残穢―住んではいけない部屋」
     なぜ、ここまで怖いのか  立原透耶
     虚実のあわいに怪異を描く  東雅夫
    H・P・ラヴクラフトと煉獄の徴候  岡和田晃
    悪霊とアルコール中毒  風間賢二
    想像力に響く物語―ブラム・ストーカー『七つ星の宝石』 植草昌実
    ブックガイド わが夢の「幽霊小説アンソロジー」 牧原勝志
    未翻訳・クトゥルー神話セレクション  植草昌実
    作品解説
    その他……

 第3号のテーマは「愛しき幽霊(ゴースト)たち」。
 古来より、怖い話に幽霊は付き物であるけれども、こと現代ホラーと幽霊との親和性がどうなのか、とふと考えてしまう。幽霊が登場するのは、本邦で昨今ブームだった実話系怪談であったり、あるいは英米の19世紀あたりの古典怪奇小説というイメージで、いわゆるモダン・ホラーというジャンルとは今一つそぐわないのでは、と。
 だがよく考えてみれば、90年代末に起こったJホラー・ブーム以後、そのアイコン的存在となった山村貞子(「リング」等)や佐伯伽椰子(「呪怨」シリーズ)もつまりは幽霊(かなり実体感のある幽霊だが)であって、また内外のホラー映画でも心霊系のものが造られ続けている。先月末に公開された映画「残穢―住んではいけない部屋」もそのテーマのもの。ポスト・モダン・ホラーである現在のホラー作品においては、幽霊は今なお古くて新しい存在なんだろう……って、かなり端折った言い方ではあるが。

 レ・ファニュ「手の幽霊」は、屋敷に現れる”片手だけの”幽霊。その正体はラストで何となく提示されるが―何とも不条理感の漂う小品。「誰にも傷つけさせはしない」は、愛娘をシリアル・キラーに奪われ、復讐にとり憑かれた作家の姿。著者D・マレル(映画「ランボー」の原作者でもある)の作品に通底して描かれるのは”強迫観念”であると個人的に思っているのだが、この短編もまた、娘を奪った連続殺人鬼に復讐しなければならない―という執念だけで行動し、何もかも失っていく主人公と、その果てに待っていた皮肉な結末を描いて、いかにもマレルらしい一篇。
 心臓に持病を抱えた若き事務員が、ダンスホールである女性を見初めるが、なかなか彼女と巡り合うことができない―という「死の舞踏」は、19世紀の英国怪奇小説の大家、A・ブラックウッド作。 他のダンスパートナーに、その女性を誰何する件で展開や結末は想像がつくが……怪奇というより、ファンタジックで儚い雰囲気。
 遺産相続のため、遊学先から旧い地所へ戻ってきた主人公。相続した屋敷には父親の代から仕える家政婦と、その娘であるメイドのメアリがいたが、メアリはかつて主人公が恋したフローリーとの面影があった……という「心は罪人の鏡」は、「ナイトランド」5号に掲載された「棺職人の娘」の著者A・スラッターによるもの。前作同様ゴシック調の雰囲気ある作品ではあるが、主人公の本性はいかにも現代的。一種の復讐ものでもある。
 現代的というならばI・ナヴァロー「帰還」は、現代アメリカの中流家庭が抱える闇を抉り出したものと言えるか。素行不良の末に自殺した長女が幽霊となって家に戻ってきた時、家族の中に存在していた悍ましい秘密が明らかにされる。キルパトリック「忘れないで」は、愛する者を喪った女性の悲しみと再起を二人称で描いた一篇。亡き人を偲び、悲嘆に暮れ、そして再び前を向いて立ち上がるのをそっと見守る……ジェントル・ゴースト・ストーリーも「幽霊」テーマの大切な一カテゴリーだろう。

 連載となっている朝松健≪一休どくろ譚≫たそかれの宿」。一休が依頼されたのは洛中を恐怖に陥れた挙句捕えられたサイコ・キラー(これが某権力者の血縁なので厄介)に自白させる策を講じることだが……。一人称で次々と語り手が変っていく構成が面白いが、ミステリ仕立てと思わせておいて、やはりホラーな結末が用意されている。
 幕末から明治にかけて、異能の絵師河鍋暁斎と妖怪たちの交流を描いた短編集として、本誌と並行して刊行されている≪ナイトランド叢書≫で刊行されている、橋本純著「百鬼夢幻〜河鍋暁斎 妖怪日誌」「消えない怨火―東京奇談新聞控」はそのスピンオフ的作品で、暁斎と顔見知りの下っ端記者が百物語の会に参加したことから、とある幽霊の一件を追うことになる。供養の仕方が何とも暁斎らしいというべきか。    

 巻頭では映画「残穢―住んではいけない部屋」の紹介と、立原透耶、東雅夫の両氏による解説記事が掲載されている。
 新潮文庫刊の「残穢」は既に積読ケースに入っているが、それに連なる―というよりは「残穢」と併せて1セットと言える―実話怪談集「鬼談百景(角川文庫)」もその記事に出てきていた。本誌を読んでいたのがちょうど出張に向かう新幹線の中だったので、帰りしな駅の書店で「鬼談百景」を買い求めていた……ということがあった。
 こちらも既に読了しているので、そろそろ記事にしようかと思うが、実をいうと「残穢」はまだ本を開いていないので、そちらも読んでからにするか……はてさて。

 あ、公開中の映画を観に行くことはまずないかと(汗
 怖い映画ってホント、観られないので。 

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