ジェームズ・アンソール ―写実と幻想の系譜― [Art & Movie]
本日は代休でOFF。
クルマの6ヶ月点検その他のため昼前にディーラーに預けに行った後、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館へ。
お目当ての展覧会は↓
ジェームズ・アンソール(1860~1949)は、ベルギー近代美術を代表する画家のひとりです。仮面や骸骨など、グロテスクなモティーフを用いながら人間の心の奥底に潜む感情を独創的に表現し、シュルレアリスムや表現主義など、後の絵画運動に影響をあたえました。その一方で、アンソールは伝統的なフランドル絵画や、外光主義をはじめとする19世紀の主要な絵画運動から影響を受けていました。本展覧会は世界で最も多くアンソールの作品を所蔵するアントワープ王立美術館のコレクションより、素描を含む約50点のアンソール作品をフランドルや同時代の画家の作品と共に展示し、アンソールの芸術を生み出した写実と幻想の系譜をたどります。
【公式サイトより】
アンソールといえば、公式ページのTopやチラシ等に用いられている『陰謀』(1890)のような≪仮面≫、あるいは様々な骸骨が生き生きと?描かれているというイメージが強い。が、今回はアンソールが、若い当時の画壇の主流であったアカデミスム、フランドル絵画の潮流、その他19世紀の様々な絵画運動といったものの影響下から、如何にしてそのような"グロテスク"をモチーフとするに至ったのか……という観点での展覧会の模様。
展覧会内で説明の掲示があった。
グロテスク絵画に至るまでに何に影響を受けたとされるか、という説明が会場内にされていたのでメモ。
- レンブラント …→神秘的で劇的な光
- ルーベンス、ドラクロワ …→表情豊かな輪郭線
- ジャポニズム、シノワズリ …→非現実的、奇怪な生物のモティーフ
(シノワズリ=中国趣味の意だが、画家は中国や日本とった東洋趣味全てをひっくるめてこう呼んだ、とか) - 14,5世紀の≪死の舞踏≫ …→骸骨のモティーフ
- コメディア・デラルテ、カーニヴァル、オステンドの土産物、
ワトーやブーシェによる「雅宴画」 …→仮装・仮面のモティーフ
アンソールの後期の有名な作品以外にも初期の頃の写実的な作品や習作、デッサンなどといっしょに、彼に影響をもたらした系譜それぞれの作品がいっしょに並べられ、絵画史として観ていてもなるほどとわかりやすい。
が、そちらに力を入れ過ぎた感も無きにしも非ずで、結果的にアンソール自身の作品の印象がやや薄れたような気もするような。≪骸骨≫モチーフは2,3点のみ、≪仮面≫モチーフのものも『陰謀』程度。せっかくの機会なのだから『仮面と死神』『キリストのブリュッセル入場』といった作品も観たかったよなぁ……って貸出元のアントワープ王立美術館が所蔵してなきゃ仕方ないのだが。
期待が大きかった分ややイマ一つ、な展覧会という感想。なので図録は今回も購入見送り。
展覧会のラストに、美術館所蔵のゴッホ『ひまわり』、セザンヌ『りんごとナプキン』などを初めて観ることができたのはよかったけれども。
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「特撮博物館」を観て来た [Art & Movie]
ポコッと開いた1日の休みを利用し、江東区の東京都現代美術館で開催中の
を観に行って来た。
一応、親戚の男の子2人(中学生と小学生)を連れて行くという名目でw
夏休み期間なのでかなり混んでいるという情報もあったが、開催期間が長い(7/10~10/8)上、お盆前の平日だったこともあってか、待ち時間もなくすんなり入場できた。土日は混雑するのかも。
入ってすぐ、'60~'70年代の東宝特撮映画で使用されたミニチュアや資料が並ぶ。公開時にOn Timeでみてこそいないが、後に昭和ゴジラシリーズが夏休みやお正月期間にテレビ放映されたのを視たり、「特撮大百科」なる子供向け本を文字通り擦り切れるまで眺めていた自分にとっては、その時点で懐かしさ爆発w
その後、ウルトラマンなど円谷プロ作品、さらに電人ザボーガーやライオン丸を製作したビープロ作品、続いて平成ガメラシリーズ(これを監督した樋口真嗣は、この「特撮博物館」の副館長でもある)のスーツやミニチュア模型などが展示される。
そして今回のハイライト、短編映画『巨神兵東京に現わる』の上映コーナーへ。
上映時間はわずか9分、内容も現代の東京に突然巨神兵が出現し、瞬く間に東京を壊滅させる。これがあの"火の七日間"の始まりだった―というもの。何でも舞城王太郎の「言葉」がキーワードとなっているんだとか。女性の一人語り的ナレーションに従って進んでいく。
一つの終末論として深い内容とも捉えることもできるが、映画のプロットやテーマよりもむしろ、CGを一切使用せずアナログな特撮技術を駆使して巨神兵という存在、東京が破壊尽くされて行くカタストロフを再現させることで、駆逐されつつある技術の継承を提言することが主眼―らしい。
上映セクションの次に15分ほどのメイキング映像が流れるブースになるのだが、そこで初めて映画がCGなしということを知った次第。巨神兵のプロトンビームを受けたビルが溶融するシーンなど、その種明かしを見て驚嘆するばかり……これだけ地道で細かい作業が延々と続くとなると、現在の製作現場ではCG使用に流れていくのは致し方ないのか。とはいえこういった技術は消えずに残って欲しいと思う。
B2Fのホールには今回の映画等で使用されたミニチュアの広いセットが展示されていた。
ここだけは撮影がOK。右は平成ゴジラ映画で登場した東京タワーなんだとか。
かれこれ2時間半ほど居たけれど、連れて行った子供2人より自分が一番コーフンしていたかもしれないw
10/8までやっているんだからもう1度観に行ってみようかなぁ……今日は買わなかった図録も、今頃になってやっぱり欲しくなってきたし
半蔵門線でJR錦糸町駅まで戻り、駅前のビルでやや遅いランチ。
10階の窓際の席だったので、東京スカイツリーが真正面にどーん!!と。しかし、直前まで街並みや建造物のミニチュアをずーっと見てきたので、スカイツリーを含めた眼前の景色も作り物なんじゃないかと錯覚しそうになったりw
住宅や背の低いビルの中、1つだけ飛び抜けて高いスカイツリーの造形や存在感が異質というか、妙に現実感に欠けるというか……。
会場内にあったガシャポンのカプセルトイは巨神兵のヴィネット。造形はおなじみの海洋堂で全3種類(+蓄光版のレアカラー2種)で、1回500円也。
3人で1度ずつ回してみんな同じものが当たってしまったんだが、この展覧会を採り上げたブログをいくつか見ていると、おなじようにこれが当たっていたような……。
これ持ちながら「焼き払え!」なんて言ってるダメ人間な自分w
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国宝『油滴天目茶碗』 [Art & Movie]
所用で青山に出た後、六本木ミッドタウンのサントリー美術館へ足を伸ばす。
こちらを観る為。
昨夏に大阪の東洋陶磁美術館は観に行った際には、所蔵の国宝二点のうち「飛青磁花生」は拝めたが、もう一つの「油滴天目茶碗」は展示期間外のため観られず。それらが都内の美術館に来ているというのだから、これは是が非でも行かねば!
ということで。
平日の夕方ということで人出は多くなく、ゆったり鑑賞できた。
殆どの作品は大阪で観ていたのもあって、唐三彩や明代の景徳鎮ものを観るのもそこそこに、飛青磁花生をはじめとした宋代青磁と、そしてお目当ての「油滴天目茶碗」ばかりをしばらく観ていた。
いやぁ……宋代の青磁もいいけれど、この油滴天目も見事。
溜息しか出てこない。
可能なら一度は実際に手にとってみたいけれど、緊張で手の震えが止まらないだろうな
当日券を公式HP上の割引券を使って¥1,200。それでも、この油滴天目を拝めただけでそれだけの価値は十二分にあった。
いやはや、眼福眼福。
但し……照明が白熱色の光でやや暗く、「飛青磁花生」をはじめ各陶磁器の色彩も、大阪で観た時の方が鮮やかだったような気がする。これは東洋陶磁美術館が常設展示で、自然光を採り入れたり鑑賞台に工夫を凝らす等、見せ方に創意やこだわりを持たせているのに比べ、こちらは通常の美術館の展覧会だから、それも仕方ないのかも。
となると次は曜変天目茶碗、それも最高傑作の名高い稲葉天目も是非とも観てみたくなった。
機会を見つけて行かねば、静嘉堂文庫美術館。
図録は購入せず、ポストカードを5枚購入。
ハガキとしては使用せず、眺める専用にw
しかし……慣れない六本木、それもミッドタウンのハイソでセレブwな感じに、要らぬ緊張をしてしまうのは……根が田舎者なんですかねぇ
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「明・清 陶磁の名品」展 [Art & Movie]
所用で新橋まで出た帰りに有楽町まで足を延ばし、出光美術館で開催中の
「明・清陶磁の名品 ―官窯の洗練、民窯の創造」展
を覗いてくる。
陶磁器の鑑賞、実はけっこう好きだったりする。
陶磁の良し悪しなどよくわからないし、況してや真贋なんてものには全く目が利かないけれども、骨董蒐集を趣味にするつもりも当面ないわけだし、「いいもの」とわかってるものを見る分には困らないw
陶器よりは磁器、それも中国磁器が好き。
中でもシンプルな宗~明代の青磁、白磁が一番いい。
色絵や染付もキレイだとは思うし、清代の景徳鎮で造られた粉彩ともなると、その超絶技巧にため息しか出てこない。これらが4世紀近く前に造り上げられたことは単純にスゴいと思うのだが、ではそれを好きかどうかと問われると、これはまた別の話になる。
なので、展示品で最も感動し、5分くらい飽きずに見ていたのはメインの清代、景徳鎮のものではなく、元末期~明初期の龍泉窯製の「青磁瓶」だった。
とはいえ……
「こういう色を出したい」「白磁にも紙に描くのと同じような絵を付けたい」etc……そういう思いを現実化するために有名無名、数多の職人が必死に知恵を絞り技巧を凝らしたからこそ、営々と弛まぬ技術の進歩があったわけで。
一つところに満足して、「自分が好きだから」と伝統墨守的態度ではダメなのですな。
その意味では自分は職人には向いてないかwやはり。
展覧会は9/4(日)まで。
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シュルレアリスム展【国立新美術館】 [Art & Movie]
本日は代休によりOFF。
六本木、国立新美術館で開催されている
へ行ってきた。
日中は日射しありとの予報だったのに、15時前に六本木駅から地上に出たら小雨がパラついていた。それでも先週とは違う、確実に春が近付いている空気ではありましたが。
年に少なくとも1回は、何かしら展覧会に足を運ぶけれど、国立新美術館は今日が初めて。
ふぅん、こんな感じなんだ……。
今回の展覧会は「シュルレアリスム」全体を対象とした催しらしく、絵画に止まらずオブジェや写真、映像作品、さらには当時の著作やパンフレットといった資料類まで数多く展示されている。
会場の各所には、シュルレアリスムの創始者であるアンドレ・ブルトンの言葉が展示されているが、何度読んでも、何を言いたいのかどーもよくわからん
個人的には日本でも一際人気の高い「印象派」よりも、こっち系統の方が好きなはずなんだが、やっぱり未だに「シュルレアリスム」が何なのか、殆んど理解していないようでw
で、
「自分はマグリットやキリコ、エルンストやミロの絵画が好きなんであって
シュルレアリスムそのものを好んでいるわけではない」
ということを初めて思い知ったような気がするw
その、お目当てのマグリットの絵は6点。
パンフやポスターにも用いられた『秘密の分身』は、けっこう大きなサイズで迫力があった。
エンジンマウントの交換で預けていた車をディーラーに受け取りに行く都合があったので、観終わった後はそのまま大江戸線経由で新宿→中央線で帰路。
図録、それにポストカードを3枚ばかり購入。マグリットの展示作品のポストカードは、なぜか販売ナシ。
こちらは、シュルレアリスムの基礎知識を理解するのにうってつけの好著。
巌谷先生の講義録形式で書かれているので、言葉も解説も平易でとてもわかりやすい。この手の芸術論本にありがちな“言葉を捏ねくり回すような、もって回ったような論旨”で読んでてもさっぱり意味不明、ってことにはならないかと。
が、自分は数年前に読んだんで内容はけっこう忘れてしまっていた。
展覧会に行く前にも一回読んで予習しときゃよかったな……。
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